たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

上半期読んで良かった本&観て良かった映画

今週のお題「上半期ベスト◯◯」

 

 今週のお題に乗じて備忘録と愚痴を書き散らしていく。

上半期ベスト読んだ本

 上半期に読んだ本は以下。

  1. アルジャーノンに花束を
  2. 蜜蜂と遠雷
  3. SAVE THE CATの法則
  4. RANGE
  5. Dark Horse
  6. 三体0 球状閃電
  7. 最後通牒ゲームの謎
  8. 罪と罰
  9. 蜜蜂と遠雷
  10. 維摩経 空と慈悲の物語(100分de名著)
  11. 歎異抄(阿満利麿)
  12. 佐々井秀嶺、インドに笑う

 ちょっと少ないが、『蜜蜂と遠雷』は実質二冊だし『罪と罰』は三冊であることは一応記しておきたい。読書量が減った理由としては、職場でスマホをいじる時に読むものを漫画に切り替えたのが理由の一つだと思う。スマホでもわりと漫画を楽しめるよな……という気付きと、職場で読むものはさくさく読み進めるものの方がいいという欲望がマッチングした結果である。『呪術廻戦』はめっちゃ面白い。特にこれからアニメで描かれる話は最高だからぜひ見てほしい。

三体0

 それはともかく、ダントツで面白かったのは『三体0』だ。劉慈欣が書くものは全て面白い。あとがきも含めて面白い。天才。『三体』との繋がりは薄いので、『三体』の分量に圧倒されてしまう人には『三体0』を劉慈欣入門としてオススメする。個人的には『三体』の第一巻より『三体0』の方が面白かった。

 『三体0』がどういう話かといえば、端的に言えば映画『黄金』みたいな話だ。主人公は黄金の代わりに「球電」という謎の自然現象を追い求めている。彼の家族が球電によって死んだからだ。冒頭で人が死ぬと面白いのは、ハリウッド映画だけじゃなくて小説にも共通する法則らしい。主人公はミステリアスな美女の援助を受けながら、ついに球電の正体を突き止める。ここが素晴らしい。劉慈欣の書く物語には読者に「本当にそうかもしれない」と思わせるパワーがある。物語は続く。黄金と同じく、素晴らしい宝を手に入れた人々は狂っていくのだ。

 他の小説についても書いておく。たぶん以前書いたが、『アルジャーノンに花束を』は人間の人生を描いているのだと思った。障害者が天才になり、また障害者に戻る、という流れは幼児が青年になり老人になるプロセスに近いものがある。『罪と罰』について。ラスコーリニコフは世界を変える天才に憧れる凡人というキャラクターで、自分の矮小さに気付きながらも野望を抱かずにはいられなかった悲しさが魅力。これは現在でも『呪術廻戦』の夏油傑を始めとした色々なキャラクターに引き継がれているなあと思いました。はい。『蜜蜂と遠雷』は面白いことも力作であることも否定しないのだが、『三体0』あたりと比べてしまうと「この程度の作品が大ヒットしたのかあ……」とちょっと暗い気持ちにもなった。去年読んだ『黒牢城』『六人の嘘つきな大学生』『同志少女よ、敵を撃て』の三冊がどれも「面白いんだけど何かが足りない……」という感想で、「『蜜蜂と遠雷』よ、お前もか」という流れ。なんか怒られそうだが、そう思ってしまったから仕方がない。

仏教の本

 「神も仏もいない」という事実を認識すると寺巡りは面白くなる。が、寺巡りをするようになると、やはり仏教について学ぶ必要性を感じてくる。

 というわけで手始めに『歎異抄』と『維摩経』を読んだのだが……これが面白い! 『歎異抄』は浄土宗系の教えに関する本で、原典は、親鸞の教えが誤解されて広まっていることを嘆いた弟子の唯円が書いたもの。

 内容としては、他力本願だとか悪人正機だとか、倫理の授業で習ったようなことが書いてある。まず、改めて考えてみると、親鸞というお坊さんは逆張りでバズったインフルエンサーなのだなと気付かされる。平凡な説教おじさんは「努力をすれば夢は叶う!」「自分の責任をまっとうしろ!」みたいな自力本願(=自己責任)の思想に基づいて話をする。平凡な倫理おじさんは「良いことをすれば天国に行けるよ!」と説く。しかし、親鸞はその真逆を行く。「自分に頼るな! 他者に頼れ!」「善人より悪人の方が天国に近い!」と言うのだ。どっちの話を聞きたくなるかといえば、がぜん後者だろう。「馬鹿とブスこそ東大に行け!」と叫んだドラゴン桜木もたぶん親鸞をリスペクトしているに違いない。(一方で、こういうテクニックは誤解を生みがちだということも親鸞は教えてくれている。

 親鸞の主張は言い換えると、「自分が世界を変えられるなんて思うな!」「自分が善悪を判断できるなんて思うな!」という話である。要するに、「我を捨てろ」ということだ。しかし、「我を捨てろ」と言われて捨てられる人間などいない。「俺は我を捨てられる!」と思うなら、その気持ちもまた我である。そこで専修念仏というツールを開発したのが法然と言うか、法然の元ネタなのだ。

 高校生の時は「ただ念仏を唱えれば救われるだなんて……お気楽な宗教を考えたもんだぜ!」と思った私であるが、浄土宗や浄土真宗は全然お気楽なんかではなく、凡人が仏教の真髄に迫るために巧妙に作られた思想なのだということに気付かされた次第である。あと、「仏教の教えって昨今のエンターテイメントで主張されることの真逆だよなあ……」と思っていたのだが、「自分が凡夫であることを自覚せよ」という立場はエンタメとの親和性が非常に高いことにも気づいた。

 とか言いつつ、『歎異抄』には「小賢しいことを考えるな」的なことがたしか書かれていたので、唯円がこの文章を読んだらたぶん嘆くだろう。

 『維摩経』の方は原文が記載されていなくて内容の要約なのだが、一言で言えば、維摩さんという世俗の仏教信者が菩薩(≒トップオブ僧侶)をことごとく論破しまくるという物語らしい。仏教の教えの一つに「執着するな」というものがあると思うのだが、それを仏教の教えにさえ適用してしまうという話だ。日本共産党なら絶対に許さないようなことが、仏教ではかなりの初期から行われていて、しかも重要な経典とされているそうだから面白い。あと在家の信者と坊さんが対等というか、むしろ在家の方が偉い的に描かれているのも非常に興味深い。

 『佐々井秀嶺、インドに笑う』には、そんな仏教の教えを本場で実践している佐々井さんの半生が描かれている。佐々井さんはインド仏教のトップに君臨するお坊さんで、インドにおける仏教の復興に尽力しながら、インド人の生活向上に貢献してきたそうな。この本にはインドの仏教徒は1億人を超えると書かれているが、ウィキペディアを見ると、これは佐々井秀嶺が主張しているだけで根拠がないと書いてある。どっちを信じればいいかよくわからないが、とりあえず仏教徒が現実社会で活動するとはいかなるものなのかの参考として面白い本であることは間違いない。

上半期ベスト観た映画

 今年に入ってからアメリカ映画ベスト100を端から見ていっているところである。考えたことについては一作ずつ記事にしているが、面白い面白くないについてはあまり語っていない。名作なので面白いことは前提であって、私がどう思ったかにはあまり価値がないと思うからだ。だが、折角の機会なので、ここでは私の好みにあった作品はどれだったかを書いてみたいと思う。(書いてみた結果、自分の感情をベースにすると、やっぱり薄っぺらいことしか書けないことが分かった。)

深夜の告白

 まず挙げたいのが『深夜の告白』。

 これは本当に面白い。保険金殺人を題材にしたミステリー映画なのだが、これ以上は望めない完璧なキャラクターの配置。まだ記事にしていないが、『アパートの鍵貸します』も同じく完璧と感じた。ビリー・ワイルダーはすごい。

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裏窓

 次に『裏窓』。

 ヒッチコックはだいぶ前に『サイコ』を観たのだが、その時はあまり面白いとは思わなかった。だからヒッチコックを侮って生きてきたのだが、その価値観が『裏窓』を観てひっくり返った。ヒッチコックはすごい。何も考えずに観ても面白いが、「裏窓が何を象徴しているか?」を考えるとなお面白い。『めまい』もオススメ。今日『北北西に進路を取れ』を観たけど、これはそれほどだった。

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シンドラーのリスト

 マイベスト戦争映画は『プライベート・ライアン』なのだが、やっぱりスティーブン・スピルバーグはすごかった。こんなに生々しい映像を撮れる人は私の知る限り他にいない。もしかしたら本物よりも本物らしいかもしれない。

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Netflixの登録を解除せよ。U-NEXTに登録しよう。

 上に挙げたもの以外でも、アメリカ映画ベスト100に入っている映画はだいたい面白い。合わないと感じる作品でも、考察しがいのあることが多い。(私の場合、良さが少しも分からなかったのは『マルタの鷹』と『ロード・オブ・ザ・リング』だけだ。)おかげで、最近の私の映画ライフはかなり充実している。我ながら最高の目標設定をしたと思うし、同様の取組を全人類にオススメしたい。

 で、名作映画を見ることにしてから分かったのはNetflixはクソだということだ。いや、Netflixのオリジナルコンテンツやユーザーエクスペリエンスが他社よりも優れていることを否定するつもりは一切ない。しかし! Netflixでは古典的名作がほとんど観られないのだ。私が調べた時点では、アメリカ映画ベスト100にある作品でNetflixで観られるものは片手で数えられるほどしかなかった! 怒りで手がわなわな震える。ワーナー・ブラザースになっちまいそうだ。『深夜の告白』も『裏窓』も『シンドラーのリスト』もNetflixでは観られない! ガッデム! 『マンク』を作っておいて『市民ケーン』が観られない意味が分からない!!(これは私の個人的な感想ですが『マンク』を観るくらいなら『市民ケーン』を観たほうがはるかに良いです。)

 この点、優れているのはAmazon Prime Videoだ。年会費がダントツで安く、それでいて古い作品もわりと観られる

 が、それ以上にもっと、圧倒的に優れているのがU-NEXTである。「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ~ねくすと、だぁ~!? 国産サービスじゃねえか! 有線の手先か貴様!!」と思ったそこのあなた。国産サービスを舐めてはいけない。U-NEXTではAmazon Prime Videoでも観られない作品がたくさん観られる。ちなみに、私がこれまで記事にしてきた中では、『アラビアのロレンス』までの27作品がAmazonで観たもので、『サリヴァンの旅』からの7作品はU-NEXTで観ている*1。今後U-NEXTで観る予定の作品はまだ22作品ある。今のところトータルで38作品観ているので、AmazonとU-NEXTを組み合わせれば約60作品は観られる。やったね!(100作品のうち視聴済みだった20弱の作品については調べていないので、たぶんもっと観られるはず。)

 というわけで、名作映画を観ようと思うなら、まずAmazon Prime Videoで観られるものを観よう。そして、Amazonで観られるものがなくなったら、U-NEXTに登録する。Netflixの登録はすぐに解除しよう。これが最も経済的に映画ライフを満喫する方法である。(とか言いつつ、私はNetflixに登録し続けているのだが……。)

*1:『黄金狂時代』と『タイタニック』はテレビ放送で観たのでそれぞれ除いている。