たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

人生の三大出費は住居・教育・老後ですか?

今週のお題「人生で一番高い買い物」

 

 「人生 三大 買い物」で検索すると、トップ20のサイトに軒並み出てくるのが

  • 住居費
  • 教育費
  • 老後費

の三つである。どうやら人生三大出費といえばこれ!というくらいの定番らしい。たぶん何かの教科書にこれが書いてあるのであろう。

 この三つ+αをお題として取止めもないことを書いていく。

住居費の本質はリスクである

 住居費に関してはたしかにうなずける。生涯の出費に占める住宅関連費の割合がそんなに高くないという人は間違いなくリッチマンリッチウーマンである。私の今の家は家賃5万円くらいだが、年間で60万円。50年住めば3000万円もかかる。う~ん、引っ越そうかな。

 「持ち家か賃貸か」という議論がよくある。持ち家のメリットとしてよく挙げられるのがトータルでは安いとか資産になるとか改造が自由とかいったことだ。賃貸のメリットは引っ越しやすいとか修繕費を払わなくていいとかなんとか。

 だが、これらの要素は全て一つのことに集約することができる。リスクだ。「持ち家か賃貸か」という問いは「リスクを取るか取らないか」という問いとイコールだ。

 住宅、つまり不動産は資産だ。資産を持つことにはリスクがある。どんな資産にも付き物の値下がりリスクがあるし、不動産の場合は、近隣にヤバい奴がいるリスク、他の土地に住む必要が生じる(あるいは住みたくなる)リスク、天災リスクといろいろなリスクがある。不動産はそう簡単に売れないのもポイントだろう。

 賃貸にはそういったリスクはない。近隣にヤバい奴がいたら引っ越せばいい。天災で家がぶっ壊れたら引っ越せばいい。土地の価格が下がることはむしろ好都合だ。引っ越すのは多少手間だが、不動産の所有者が不動産を売却する手間に比べれば些細なものに違いない。

 しかし、リスクあるところにリターンが生まれる。賃貸するために不動産を取得する者は必ずコストを上回る家賃収入を求める。借りる側は上に挙げたようなリスクを背負いたくないから、その家賃に同意する。よって、賃貸物件に住むことは必然的に持ち家に住むよりも高くつく。

 問題はリスクをいかに評価するかである。これはもう個人の感覚によるので、一歩脇道に逸れて、リスクを下げる方法はないか?を考えてみたい。

 一般人が不動産所有リスクを下げるには「よ~く吟味する」しかない。この地域に将来性はあるか? 大災害に見舞われる確率を高める要因はないか? 素人には限界があるから、信頼できる不動産屋を見つけることも大事だ。そうなってくると、その不動産屋が本当に信用できるのか?ということもよ~く吟味する必要が出てくる。結局、最後は直感に頼るしかない。

 だが、ファンダメンタルズ分析よりもインデックス投資の方がリスクが低くリターンが高いなんてのはもはや株式投資では常識だ。インデックス投資とは、言い換えれば、分散投資である。ファンダメンタルズの鬼、ウォーレン・バフェットだって分散投資をしている点は変わりない。分散投資は投資の王道。不動産でも同じことが言えるはずだ。

 吟味して一つの土地に投資するよりも、いくつかの土地を分散して保有した方がリスクは低くなる。あるいは、一つの土地にマンションを建ててたくさんの人に貸し出すという手法もある。これには借りる側にもメリットがある。小さな部屋さえあれば十分ですという人がわざわざ余分に広い土地を買ったりする必要がなくなるからだ。

 投資のためではなく住むために不動産を買おうとしている人にとっては何の話だ?と感じられるかもしれないが、本質は投資用だろうが居住用だろうが変わらない。リスクを取って持ち家を買えば、平均的には賃貸よりも安上がりで済むはずだ。ただ、庶民は居住用不動産として一つの不動産しか買えない。だから、居住用不動産を購入するということは不動産保有リスクを負い、かつリスクを分散することもできないということなのだ。

 「持ち家か賃貸か」という話題は、そのリスクをどう評価するかどうか次第なのである。結局はよく言われるメリット・デメリットをどう考えるか、と同じ話なのだが、少し見え方が変われば幸いである。

教育はスタートアップだ

 教育は不動産とは全く違うゲームになってくる。

 子供を持つことにもリスクがある。子供によってかかる金は違う。真っ当に育ってくれる場合もあれば、ヤバい奴に育つ可能性もある。だが、子供を賃貸借することはできない。売ることもできない。金のかかる無謀な夢を子供が抱き始めたからといって、金のかからなそうな別の子供に乗り換えることはできないのだ。

 子供が欲しければ、子供を持つというリスクを背負うしかない。子育てにまつわるリスクを回避する方法を強いて挙げるなら、すでに立派に育った子供を我が子とするのがベストに違いない。自分でスタートアップを立ち上げるより、M&Aの方が安全で確実というわけだ。親と結婚するのもいいし、里親になるのもいいし、M&Aの手法は様々だ。あなたがどこかの王国で頂点に立ちたいなら、娘を皇太子に嫁がせるのが手っ取り早い。

 とはいえ、世の中の大多数はM&Aを選ばない。むしろリスクを背負うことが子育ての醍醐味だと考える人の方が多いに違いない。スタートアップには夢と愛が満ち溢れているM&Aにもそれらはありうるが)。

 教育費の大半を占めるであろう学費に注目してみる。公立の学校であれば小学校から高校まで年間10~30万円程度らしい。安っ! 家賃に比べて安っ! しかも期間限定。

 ところが私立の中高一貫校になると年間60~70万円の学費がかかる。さらに私立の学校に通わせるためにはたいてい塾に行かせる必要が出てくる。

 だが、私立の学校にはそれだけの価値がある。なにせ東大合格者数上位の高校はほとんどが私立だ。教育力があるかどうかは分からないが、優秀な同級生に恵まれているのは確実だ。とはいえ、あなたの子供がお笑い芸人になりたい!と思ってしまったら、この投資はあまり意味を成さないかもしれない。

 学費の安さと教育の質を両立させる方法もある。中高は筑駒、大学は東大にぶちこむのだ。エリート街道を最安で歩める。最高だ。交友関係の多様性を確保したいなら、中学までは平均的な公立に通わせて、高校は日比谷高校や翠嵐高校というのがバランスが取れているかもしれない。子供が優秀で、あなたが正しく導ければ塾に通わせずにそういうルートを辿らせることも不可能ではない。大学は地元の国公立で十分だというのならば、さらに現実味が増してくる。

 ともかく、教育にはお金をかけようと思えばいくらでもかけられるし、節約しようと思えばかなり節約することも可能だ。参考に文部科学省の学習費調査結果を貼っておく。

https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf

 幼稚園から高校まで全て公立なら15年間の総額が541万円。全て私立なら1830万円。実に三倍以上の開きがある。にも関わらず、費用対効果が必ずしも釣り合うとも限らない。何が正解か分からない。

 教育は投資ではなくスタートアップだ。そもそも家族がスタートアップだ。よく「主婦の仕事を時給に換算すると~」という論があるが、あれは根本が間違っている。主婦は従業員ではない。共同経営者なのだ。

 マイケル・ポーターによれば、企業経営における優れた経営戦略は以下の五つの条件を備えている必要がある。

 最も重要なのは特徴ある価値提案だ。最高を目指す競争は消耗するだけ。独自性を目指す競争こそが勝利の鍵だ

 これ以上はやめておくが、とにかく教育費には親の価値観が色濃く反映されるし、それが全てだと言っても過言ではない。

老後は老後の問題じゃない、今をどう生きるかだ

 老後費って……

 いやこれってただの生活費ですや~ん。

 ただの生活費ですや~ん。

 生活費ですや~ん。

 要するに、若い頃から倹約生活を心がけている人は、老後費も少なくて済む。若い頃から倹約生活を心がけていれば貯金も多くなるはずだが、老後に備える必要のある貯金は少なくなる。そして若い頃から健康な生活を心がけている人も、老後費は少なくて済むはずだ。

 若い頃の小さな差が、年老いた頃には大きな差になる。老後費を抑えたければ今どう生きるかを考えるべきだ。

保険料

 さて、住居費・教育費・老後費というラインナップを見て、「あれ?」と思った人も多いはずだ。人生で二番目に高い買い物といえば、生命保険じゃないのか?と。

 検索キーワードが悪いのかもしれないが、保険料を掲載していたサイトは少なかった。下は数少ないサイトのうちの一つだ。

kurashinista.jp

 なぜ保険料に言及するサイトが少ないのだろうか? その秘密はこの人生三大出費を紹介する動機にある。

 検索上位のサイトがなぜ人生三大出費を紹介しているかというと、訪問者に将来の備えをさせるためである。

 「教育費はたけぇぞ~!」と言って、読者がビビってくれれば、「だから学資保険に加入しましょう!」とつなげることができる。「老後費はたけぇぞ~!」と言って、読者がビビってくれれば、「だから養老保険に加入しましょう!」とつなげることができる。「住居費はたけぇぞ~!」と言って、読者がビビってくれれば、「だから専門家に相談しましょう!」とつなげることができる。

 そう、全てはビジネスなのである。

 「生命保険はたけぇから入んねぇ方がいいぞ~!」と言って、読者がビビってくれても、儲かることは稀だ。だからウェブ上にはそういう情報はあまり掲載されない。

 自動車も同じことである。「自動車はたけぇから買わねえで電車に乗れ!」と言って儲かるのは鉄道会社くらいである。

 逆に言えば、「生命保険はたけぇから入んねぇ方がいいぞ~!」と主張することで儲かる人はウェブ上では見つけにくい情報をくれる。たとえば出版社とか。私は下の本を読んで勉強した。

 著者はライフネット生命保険の創設者だが、ライフネット生命保険がまだ上場していない頃(2009年。ライフネット生命保険が営業を開始して翌年)の本だ。それだけに従来の生命保険に対する苦言が赤裸々に詳しく書いてある。

 

 人生には様々なリスクがある。避けようがないリスクもあれば、代償にリターンを得られるリスクもある。しかし、知識があれば簡単に無にできるリスクもある。たとえば、無駄な生命保険に入ってしまうリスクとか。情報源は分散しているほど多様な知識にアクセスできる(そんな気がする)。

 人生から余計なリスクを取り除く方法の一つは自分自身を教育することだ。それは老後になってからやることではない。今すぐやるべきことだ。それが老後を左右するに違いない。

 

 ちなみに、このブログはビジネスではない。上のリンクを踏んでも私には一銭も入らない。広告を踏んで儲かるのは、はてなブログだけだ。私に報酬があるとすれば、アクセスが増えるとなぜか嬉しいくらいのものである。

 

 教育のところでポーターに触れたが、ポーターについては下のページで書いている。

weatheredwithyou.hatenablog.com