たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

星と蟲と私

今週のお題「夏物出し」

 

 季節は巡る。ローマ帝国が滅びても、キリスト教が衰退しても、変わらず季節は繰り返す。人間にとっては永遠とも思える間、地球は太陽の周りを回り続ける。

 春は短い。秋はもっと短い。冬は5ヶ月、春は2ヶ月、夏は4ヶ月、秋は1ヶ月というのが私の中の暦である。3月頃から徐々に、気温はジグザグを描きながら上がっていく。昨日はセーターがいらなかったが、今日はコートが必要というような日々の繰り返し。花粉の量が減り、洗濯物を外に干せるようになっていくらかすると、最低気温を軽装で耐えられるようになる。安定した、短くない夏が始まる。

 クローゼットの高いところに積まれた収納ケースを下ろし、夏物の服と冬物の服を入れ替える。入れ替えたうちの半分以上は、着ることもなく、またしまうことになる。

 虫は人間よりひと足早く浮かれ出す。地面に作られる小さな塚は日に日に数を増していく。林の近くを通ると羽虫が柱を作っている。職場で蚊がいなくなるスプレーが噴霧される。そろそろブラックキャップを買い換えねばならない。

 鳴き喚く蝉。遠くで鳴る打ち上げ花火。電車に出没する肌を真っ赤にした人々。テレビを付ければ、甲子園球児の活躍、炎天下を走らされる若者、エアコンを付けない老人、流れる川……。そんなもので世間が満たされていく。

 スーパーに入ると、蝉の声は遠のく。ひんやりとした空気を体内にも取り込みたくて、ハーゲンダッツを買いたくなる。冬は毎日のように食べていた鍋はもはや視界に入らない。梨、冬瓜、なす、きゅうり、みょうが、そうめん……。そんなもので私は満たされていく。

 

 

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