ネット証券の進歩によりスマホ1つあれば株式投資ができるようになり、国もNISAやiDeCoなどの制度を通して株式投資の促進を図っている昨今、株式投資が資産形成に必須であることはもはや一部では常識になりつつあります。
しかしながら、いまだに「株式投資=ギャンブル」という見方は根強くあります。
たしかに、株式投資には、元本割れのリスクがありますから、ギャンブル的な側面があることは否めません。特にバブル崩壊によって破滅した人間の話は探そうと思えばいくらでも見つかるはずです。
では、株式投資をすることは競馬や宝くじをやることと同じなのでしょうか?
株式投資と競馬の決定的な違い
競馬・宝くじ・株式投資をすることでそれぞれどのくらいの見返りが期待できるか(期待リターン)を調べてみたいと思います。
競馬の期待リターン
競馬の期待リターンを調べるためにJRAの決算報告を見ることにします。
今回はこの中から令和2年度決算を使うことにします。
この中の損益計算書の要旨を見てみると、以下のように書いてあります。
勝馬投票券収入:3,001,527
勝馬投票券諸支払金:2,271,012
これは要するに、JRAが馬券を300円売ったら、そのうちの227円は払戻しをするということだと思われます。
逆に言えば、馬券を買う立場側からすると、300円の馬券を買ったら、平均して227円戻ってくるということになります。言い換えると平均して73円の損をするということです。
つまり、競馬の期待リターンは、およそ-24%ということになります。
競馬をしたことがない者からすると意外と戻ってくるなという印象ですが、競馬をすればするほどお金が減っていくことは間違いありません。もちろん、勝つ馬を確実に見抜ける眼力があれば別ですが、一般人にそのような能力がないことは明らかでしょう。
競馬をするなら、「競馬に参加する」という体験に払ってもいい金額の4倍までが賭けていい限界の金額であり、それ以上を賭けると損をすると考えていいかもしれません。
宝くじの期待リターン
では、宝くじはどうでしょうか? これも日本宝くじ協会のHPから見えてきます。
これを見ると、宝くじの収益のうち、46.5%が当選金にあてられています。
なので宝くじの期待リターンはおよそ-54%です。
宝くじは競馬以上のギャンブルだということが分かります。
「宝くじを買っているんじゃない、夢を買っているんだ」という人がいるかもしれませんが、夢の大きさは1枚でも10枚でもそう変わりませんので、「宝くじを買うなら1枚まで」というのが宝くじの妥当な戦略になるのではないでしょうか。
まあ、宝くじの収益のうち40%は自治体を通して社会貢献に充てられるようですので、寄付したいという思いが強いのであれば、寄付したい金額の2.5倍までは許容されうるかもしれません。
株式投資の期待リターン
ここからが肝心の、株式投資の期待リターンです。
株式投資の期待リターンは株価指数を見れば分かります。以下は、グーグルファイナンスからの抜粋です。
2000年から今日までのTOPIXの推移がグラフになっています。これを見れば、過去20年あまりの間、ほぼどの時点で買っても現在にはプラスになっていることが分かります。それどころか2010年あたりの底で買っていれば、2倍以上になっていることがわかります。株の場合、これに加えて配当金があります。
「いやでも、そんなに値上がりしてないやん!」
と思ったあなたのために、さらに、アメリカの株価を見てみましょう。
こちらは1981年から今日までの指数の推移がグラフになっています。
TOPIXとは全然違いますね。過去40年間のどの時点で買ったとしても、現時点で利益が、それもわりと大きな利益が出ています。当然、こちらにも配当があります。ちなみに、日本人でも日本に住んでいても、S&P500に投資するのは極めて容易です(ただし、円で生きている人にとっては為替リスクがあります)。
要するに、株式投資の期待リターンは基本的にプラスだというところが肝心なことです。
株式投資と競馬などの決定的な違い
以上をまとめると、株式投資と競馬などの賭け事の間には決定的な違いがあることが分かります。それは、期待リターンがプラスなのかマイナスなのかということです。
そもそも考えていただきたいのですが、競馬賭け会社や宝くじ賭け会社はおそらく存在しませんが、投資ファンドというのはたくさん存在します。株式投資が負ける確率の高いギャンブルだったら、このような状況が発生するはずがありません。
なぜ、このような差が発生するのでしょうか? 競馬や宝くじには胴元がいて、その人達が得するようにできているからです(もちろん公営ギャンブルの得は社会に還元されるものなので悪いことではありません)。胴元のもとに集まったお金以上の金額がお金を出した人の元に戻ってくることはありえないのです。
「そんなこと太字にして言われなくても分かってるよ~!」と言う方もいるかもしれません。競馬や宝くじに胴元がいることは明らかだからです。でも、世の中には見えない胴元がいます。
たとえば、生命保険会社などがそうです。貯蓄型の生命保険をかければお金が増えると思っているかもしれませんが、生命保険会社がどうやってお金を増やしているかといえば、あなたがギャンブルだと思っているまさにその株式投資でお金を増やしているわけです。「株式投資怖いな~。他に何かお金を増やす良い方法ないかな~」と思っている人がいると、爽やかな生命保険会社がやってきます。「僕にお金を貸してください。お金を増やしてみせますよ。元本も保証します!」と言うわけです。彼に「プロフェッショナルとは?」と問うと、こう答えてくれるかもしれません。
「僕はみなさんに安心をお売りしているんです。投資をすれば高確率で儲かるなんて統計的事実はみなさんの心に安心をもたらしてはくれません。僕が『安心ですよ』と言った方が、みなさん安心してくれるんです。安心には大きな価値があるみたいで、みなさん喜んで大金を払ってくれます。でも、僕はプロなので、安心のためにみなさんがどれだけお金を払っているかは見せません。それもみなさんにより一層安心してもらうためなのです。この細部へのこだわりこそが僕の考えるプロフェッショナルです」
銀行預金は絶対に安全か?
「株式投資はお金が減るかもしれない」という恐れの根本には、「銀行に預けておけばお金が減ることはない」という考えがあります。
しかし、それは正しいでしょうか?
上のサイトから日本のインフレ率を見ますと、過去10年のうち6年はインフレ率がプラスです。インフレすると物価が上がるので、その分だけお金の価値が下がります。たとえば、かつての220円には週刊少年ジャンプ一冊分の価値がありましたが、今の220円にはそれだけの価値はありません。今、週刊少年ジャンプを買おうと思ったら290円も必要なようです。
よって、インフレ率から預金金利を差し引いた分だけ資産は目減りしているのです。現在、日本の金利は極めて低いので、インフレに金利が負ける確率は極めて高いと思われます。
要するに、銀行預金に全額投資するというのは、日本でインフレは起きないという方向に賭けているわけで、元本割れリスクがあるから株式投資はギャンブルだという理屈が正しいのであれば銀行預金もギャンブルになるでしょうね。
なぜ全財産を投資する前提で考えるのか?
とはいえ、株式投資もやり方次第ではギャンブル性が強くなることは認めます。もしあなたが「インデックス投資が最も堅実である」程度の情報も調べずに個別株投資に挑めば、それは競馬と変わらないギャンブルになるかもしれません。株を買った会社が破滅すれば、その株券は紙切れになる可能性があります。
とはいえ、一つ考えてほしいのですが、たかが株券が紙切れになる程度のことをなぜそんなに怖がるのでしょうか? そんなのは「宝くじで1円も当たらなかった」程度のレベルの話です。「勝つと思っていた馬が負けてしまった」程度の話です。だれも宝くじを買うことを恐れないのは、宝くじなんて買ってもせいぜい数千円程度のものだからです。
しかし、こと株式投資となると、なぜか全財産を投資する前提で考える人がいます。これは本当に不思議なことです。
株式投資も競馬と同じで、いくら賭けるかは自分で決めることができます。なので、あなたがこのくらいなら0になっても痛くないと思う程度の額だけ投じれば、バブルが崩壊しようが痛くも痒くもありません。というか、株式投資で確実にリターンをプラスにするには長期投資は必須ですので、0になってはいけない(=使う予定がある)お金を投資に回すのは根本的に間違っています。
バブル崩壊で苦しんだのも、身の丈に合っていない投資をした人でしょう。特にレバレッジをかけている(=借金をして投資をする)と破滅のリスクは高まります。でも、身の丈に合わない投資をするかしないかは自分で決められることです。
「0になってもいいお金などねえ!」という考えの方なら、おそらく投資する必要はないでしょう。稼いだお金の大半は貯蓄に回ってウハウハだろうから。たしかに、少額の投資をするくらいならば、ペットボトル飲料は買わない、コンビニで買い物をしないなどの節約をした方がはるかに効率よくお金を貯めることができるのは間違いないと思います。
株式投資は始めるのが早ければ早いほどリスクが低くなる
恐怖の根源は知らないことです。闇が怖いのは何がいるか分からないからです。ゴキブリが怖いのはどこに潜んでいるか何を考えているか分からないからです。外国人が怖いのは何を言っているのか分からないからです。
株式投資を恐れるのは株式投資がどんなものかを知らないからです。株式投資がどんなものかを知らないのは株式投資をしていないからです。まずは少額で投資を始めてどんなものか体験してみると良いと思います。それでダメだと思ったらやめればいいし、こりゃ良いやと思ったらもっと投資すればいい。
株式投資は始めるのが早ければ早いほど良いです。低い利回りでも長い期間をかければ大きな利益を得ることができます。貯蓄が少ない頃に始めれば、投資に回せるお金も少なくなるので失敗した時の痛手は小さくて済みます。失敗から得られる学びは金額の大小とはそんなに関係ありません。勉強にかける時間もたくさん取れます。
定年退職して余剰資産ができたから投資をしようなんて思い立ったら最悪です。低い利回りでは大してお金が増えないし、貯蓄がたくさんあるからつい実力に見合わぬ大金を賭けてしまうリスクも高まります。失敗から学んでもその学びを生かすには残り時間はあと僅かかもしれません。
よく「新入社員に伝えたいこと」みたいな話題が4月になるとツイッターのトレンドに上がったりしますが、私に言わせれば「投資はいいぞ」以上に伝えたいことなどありません。
証券口座を持つことにリスクはない
とはいえ、「絶対に得をする」とは保証できませんので、とりあえずその気になったらいつでも投資を始められるように準備しておくのはいかがでしょうか?という提案だけしたいと思います。
証券口座を開くだけならお金はほぼかかりません(電気代・通信費・コピー代くらいでしょうか?)。それにネット銀行は便利です。SBI銀行ならATMからお金を引き落とすのにお金はかかりませんし(月2回まで)、スマホから簡単に残高などの照会ができます。銀行口座から証券口座に振り返るのも簡単です。楽天銀行なら楽天ポイントが貯まりやすくなるっぽいです。(ちなみに、野村などの非ネットの証券会社は利用しない方がよいというのは定説になりつつあります。)
というか、リスクがないどころか、なんならお金がもらえる場合もあります。公式HPで普通にキャンペーンをやっていることもあります。そうでない時でも、下のハピタスというサイトを経由して口座開設をすると ポイントが付く(あるいは通常よりポイントが多くなる)ことが多いです。
2021/8/7現在、SBI証券の新規口座開設+入金で7000ポイントもらえるようです。SBIは国内最大級のネット証券会社ですので、間違いない選択肢の一つだと思います。私もSBIを利用しています。
もしハピタスに未登録の方が上のリンクから登録して2021/9/30までに5000ポイント以上を獲得すると、さらに2100ポイントもらえるようです。私はそれとは別に150ポイントもらえるらしいですよ。(゚д゚)ウマー
ちなみにこれはトリビアなのですが、SBIという名前は元々はソフトバンク・インベストメントの略で、かつてはソフトバンクの系列会社だったんです。ソフトバンクの上場を手伝った北尾さんがそれをきっかけにインターネットと金融の融合の可能性に気付いて設立したのだとか。
まとめ
まあ要するに、株式投資のリスクはコントロール可能だし、株式投資に関わらずリスクとリターンの関係を意識することがとても大事だという話でした。
「金が欲しいならその毎日買ってるペットボトルを水道水に切り替えて、宝くじ買ってる暇あったら株に投資せんかい!」と職場で言いたい鬱憤をここで晴らしているわけです。
ちなみに、投資家必見の書である『ウォール街のランダム・ウォーカー』の内容をまとめた記事が↓ですので読んでみてやってください。