たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

『ルックバック』

 映画『ルックバック』を観た。

 青春映画で最も血が滾るのは、狂ったように練習する場面。ただの練習ではいけない。それは世間に背を向けることでなければならない。少なくとも、漫画や映画の中では。だから『セッション』において、主人公は手から血が出ても練習を続けるし、フレッチャーは主人公を殴るしドラムを投げる。『ルックバック』でも、スケッチブックが積み重なっていくにつれ、主人公たちは世間から隔絶されていく。肝心なのは狂気だ。

 もちろん世の中には一般的な価値観を維持しながらクレバーに努力してなんら世間に恥ずることのない人生を歩んでいる人も多数いるに違いない。だけど、一般ピーポーはそんなものは見たくない。天才には何か俗世的なものを犠牲にして生きていてほしい。そうあることで救われる気がする。努力すれば夢は叶うんだと信じたい。自分の夢が叶わなかったのは努力しなかったから、つまり自分にとっての幸せは別にあったからだと思いたい。狂気を帯びた天才は、凡人に赦しを与える。

 狂気を支えるのは怒りだ。自分より才能のある人間に対する嫉妬。自分を認めない世間への憎悪。裏を返せば、満たされることのない名誉への欲望。誰より人間を嫌っているのに、誰よりも人間を求めている。

 だから、こういう狂気に囚われた人間の物語は、必然的にラブストーリーに近い構造を形成していく。『ルックバック』なら京本、『さよなら絵梨』なら絵梨のようなキャラクターが配置されることになる。これらの人物は境界線付近にいた主人公を狂気の世界へ誘う役割も担っている。

 といっても、本当に大切なのは、無名のモブキャラの賞賛ではない。サブキャラクターからの承認ですらない。結局、走ってきた道を突き進むこと、それ自体が目的なのだ。そうでなければなぜ漫画や音楽みたいな博打を打つ必要があるのか? そのことに主人公自身が気付いた時、映画にクライマックスが訪れる。

 

 ……という、まるで初めて『ルックバック』を見たかのような感想を書きたくて仕方なくなった。原作どおりなのに原作以上に胸が熱くなったのは、良い映画だったからか、それとも自分自身の変化によるものか。たぶん両方かな。

 『さよなら絵梨』もよろしくお願いします。

「私の選ぶ面白いランキング10選:ユニークで好奇心をくすぐる!」

今週のお題「私の〇〇ランキング」

 

 ランキングのランキングをChatGPT先生に作ってもらいました。

 

「おすすめのランキングランキングベスト10」を以下に考えました。各ランキングの信頼性、評価範囲、更新頻度、信頼性の証明、インパクト、利便性、信頼度を総合的に評価して選びました。

### おすすめのランキングランキングベスト10

1. **US News & World Report Best Colleges Rankings**
   - **信頼性**: 長年の実績と透明な評価基準
   - **評価範囲**: 多くの大学をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 教育機関や学生に大きな影響

2. **Forbes Global 2000**
   - **信頼性**: データに基づく評価
   - **評価範囲**: 世界中の企業をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: ビジネス界で高い信頼性

3. **The Economist Intelligence Unit's Global Liveability Ranking**
   - **信頼性**: 詳細な調査とデータ分析
   - **評価範囲**: 世界の主要都市を対象
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 都市の住みやすさに関する重要な指標

4. **QS World University Rankings**
   - **信頼性**: 教育機関からの高い評価
   - **評価範囲**: 世界中の大学をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 学生や研究者にとって重要

5. **Fortune 500**
   - **信頼性**: 長年の歴史と実績
   - **評価範囲**: アメリカの大企業を対象
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: ビジネス界での知名度と信頼性

6. **Tripadvisor Travellers' Choice Awards**
   - **信頼性**: ユーザーのレビューに基づく
   - **評価範囲**: 世界中の観光地やホテルをカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 旅行者にとっての重要な参考情報

7. **TIME 100 Most Influential People**
   - **信頼性**: 著名な編集委員会による選出
   - **評価範囲**: 世界中の影響力のある人物を対象
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 社会的影響力の高さ

8. **Bloomberg Innovation Index**
   - **信頼性**: 詳細なデータと分析
   - **評価範囲**: 世界中の国を対象
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: イノベーションに関する重要な指標

9. **Goodreads Choice Awards**
   - **信頼性**: 読者の投票による選出
   - **評価範囲**: 多くの書籍をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 読者の間での人気

10. **Interbrand Best Global Brands**
    - **信頼性**: 詳細なブランド評価
    - **評価範囲**: 世界中のブランドを対象
    - **更新頻度**: 毎年更新
    - **インパクト**: ブランド戦略における重要な参考指標

これらのランキングは、それぞれの分野で高い信頼性と影響力を持っており、多くの人々や企業にとって参考になります。

 なるほど、たしかにニュースでも目にしたことのあるランキングが入っていますね。考えてみれば、外国で作られたランキングに日本人が定期的に一喜一憂しているのだから、これらのランキングはランキングとしての地位がかなり高いことが分かります。

 こんなランキングを私たちも作ってみたいものです。ただ、考えてみると、信頼性のある評価方法を策定するのも難しいですし、みんなが納得するような範囲をカバーするのは極めて難しいですね。たとえば、フォーチュン500なんて、一企業当たり一時間しかかけないとしても少なくとも500時間かかるわけです。不眠不休で働いたとしても20日以上かかる。現実的に考えれば、その数倍は当たり前にかかります。当然、選外の企業も調べているはずで、それを考えるとさらに数倍以上の労力が。膨大な時間かマンパワーが必要です。みんなが納得するランキングを作成するのは、個人が片手間にやってできるような甘っちょろい事業ではないことに気付かされました。

 

 それでもChatGPTなら……ChatGPTならきっとなんとかしてくれる……!!

 というわけで、日本版も作ってもらいました。

もちろんです。以下に、日本の主要なランキングを基に「おすすめのランキングランキングベスト10」を作成しました。

### おすすめのランキングランキングベスト10(日本版)

1. **東洋経済CSR企業ランキング」**
   - **信頼性**: 長年の実績と詳細な評価基準
   - **評価範囲**: 多くの日本企業をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 企業の社会的責任に関する重要な指標

2. **日経ビジネス「企業の総合力ランキング」**
   - **信頼性**: 信頼性の高いデータと分析
   - **評価範囲**: 多くの日本企業をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: ビジネス界での高い信頼性

3. **大学通信「大学ランキング」**
   - **信頼性**: 教育機関からの高い評価
   - **評価範囲**: 日本全国の大学をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 学生や教育関係者にとって重要

4. **週刊ダイヤモンド「日本の会社ランキング」**
   - **信頼性**: 詳細なデータと分析
   - **評価範囲**: 日本の企業を広範にカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 経済界での高い評価

5. **オリコン顧客満足度ランキング」**
   - **信頼性**: 消費者の実際の評価に基づく
   - **評価範囲**: 多くの業種とサービスをカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 消費者にとっての信頼性

6. **J.D. Power「自動車顧客満足度調査」**
   - **信頼性**: 詳細な調査と分析
   - **評価範囲**: 日本国内の自動車メーカーをカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 自動車業界における重要な指標

7. **リクルート「就職企業ランキング」**
   - **信頼性**: 学生からの評価に基づく
   - **評価範囲**: 日本全国の企業をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 就職活動中の学生にとっての重要な参考資料

8. **ZUUオンライン「日本の富裕層ランキング」**
   - **信頼性**: 信頼性の高いデータと分析
   - **評価範囲**: 日本の富裕層を対象
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 経済界やビジネス関係者にとっての重要な指標

9. **アットホーム「住みたい街ランキング」**
   - **信頼性**: 住民の実際の声に基づく
   - **評価範囲**: 日本全国の都市をカバー
   - **更新頻度**: 毎年更新
   - **インパクト**: 引っ越しや移住を考える人にとっての重要な参考資料

10. **食べログ「レストランランキング」**
    - **信頼性**: ユーザーのレビューに基づく
    - **評価範囲**: 全国の飲食店をカバー
    - **更新頻度**: 継続的に更新
    - **インパクト**: 外食を楽しむ人々にとっての信頼性

これらのランキングは、日本国内で高い信頼性と影響力を持っており、多くの人々や企業にとって重要な参考資料となっています。

 これらもたしかに馴染み深いランキングが多い気がしないでもないですね。だいたい高い買い物に関わるランキングが多いようです。こういうランキングで上位に入ってみたいものですね。

 

 よくあるランキングランキングも作ってもらいました。

「こういうランキングよくあるよな」という観点から、日本で一般的に見られるランキングのベスト10を考えてみました。以下は、日本のメディアやリサーチ機関などがよく発表する人気のランキングです。

### よくあるランキングベスト10(日本版)

1. **美味しいラーメン店ランキング**
   - 多くのメディアやウェブサイトで定期的に発表される
   - 地域別、種類別(豚骨、醤油、味噌など)も多い

2. **住みたい街ランキング**
   - 各年ごとに発表される都市の人気ランキング
   - 「アットホーム」や「SUUMO」などが発表

3. **国内旅行人気スポットランキング**
   - 旅行会社や観光雑誌が発表
   - 季節ごとやテーマ別(温泉地、紅葉スポットなど)

4. **高校偏差値ランキング**
   - 教育関連のメディアや塾が発表
   - 大学進学率や学力偏差値を基にしたランキング

5. **企業の就職人気ランキング**
   - 学生向けの就職情報サイトやリクルート会社が発表
   - 業種別や性別ごとの人気ランキング

6. **アニメ人気ランキング**
   - アニメ雑誌やウェブサイト、テレビ番組で発表
   - 年間、シーズンごとやジャンル別のランキング

7. **ビール・アルコール飲料ランキング**
   - 飲料メーカーやグルメサイトが発表
   - 味、コストパフォーマンス、新商品などのランキング

8. **新車人気ランキング**
   - 自動車雑誌やウェブサイトが発表
   - カテゴリ別(軽自動車、SUVハイブリッドカーなど)

9. **恋人にしたい芸能人ランキング**
   - 芸能雑誌やバラエティ番組で発表
   - 年代別や男女別の人気ランキング

10. **コンビニスイーツランキング**
    - 食品雑誌やグルメサイトが発表
    - 季節限定商品や新商品が多く取り上げられる

これらのランキングは、多くの人々の関心を引きやすく、メディアでもよく取り上げられるため、非常に馴染み深いものばかりです。

 うん、たしかによく見る気がする。私もこういうランキングを作ればよいのでしょうか。

 

 面白いランキングランキングも作ってもらいました。

「このランキング面白いな」という観点から、ユニークで興味を引く日本のランキングを考えてみました。以下は、一般的なランキングとは一味違う、面白くて話題性のあるランキングです。

### 面白いランキングベスト10(日本版)

1. **変わり種自動販売機ランキング**
   - 全国のユニークな自動販売機を紹介
   - 生鮮食品やご当地グルメが買える自動販売

2. **日本全国の珍しい祭りランキング**
   - 見たこともないようなユニークな祭りを紹介
   - 例:だんじり祭、御柱祭、泥祭りなど

3. **奇抜なラーメンランキング**
   - 通常とは一線を画すユニークなラーメン
   - 例:カラフルなラーメン、変わったトッピングのラーメン

4. **おもしろ道の駅ランキング**
   - 道の駅の中でも特にユニークな施設や商品を紹介
   - ご当地キャラや珍しい自動販売機がある道の駅

5. **日本の不思議な形の島ランキング**
   - 特異な形状の島々を紹介
   - 例:ハート形の島、魚の形をした島

6. **癒しの動物カフェランキング**
   - ただの猫カフェや犬カフェではなく、珍しい動物がいるカフェ
   - 例:フクロウカフェ、ハリネズミカフェ、カピバラカフェ

7. **衝撃のB級グルメランキング**
   - 一見驚くような見た目や名前のB級グルメ
   - 例:黒いカレー、透明なラーメン

8. **全国のパワースポットランキング**
   - 特にユニークなエピソードや歴史を持つパワースポット
   - 例:手形が残る岩、伝説が残る木

9. **変わり種テーマパークランキング**
   - 一風変わったテーマを持つテーマパーク
   - 例:忍者テーマパーク、昭和レトロテーマパーク

10. **ユニークな婚活イベントランキング**
    - 特殊なテーマや場所で行われる婚活イベント
    - 例:山登り婚活、料理教室婚活、アニメコスプレ婚活

これらのランキングは、ユニークで一風変わったテーマを扱っており、人々の興味を引きやすく、話題性が高いものです。これらのランキングを通じて、新しい発見や驚きを提供することができます。

 たしかに気になりますねえ。個人的に気になるのは「奇抜なラーメンランキング」と「衝撃のB級グルメランキング」でしょうか。おひとりさまに優しいランキングが良いです。

 

 どうすれば面白いランキングが作れるのか気になったので、面白いランキングに共通する要素をまとめてもらいました。

これらの「面白いランキング」に共通する要素は以下のようなものがあります:

1. **ユニークさ**: 他にはない独自の特徴や視点を持っていること。一般的なランキングではなく、斬新で興味深い内容が中心です。
   
2. **話題性**: 人々の関心を引きやすく、SNSやメディアで話題になりやすいテーマが選ばれています。
   
3. **エンターテインメント性**: 読んで楽しく、驚きや笑いを提供する要素があります。単なる情報提供ではなく、エンターテインメント性が重視されています。

4. **バラエティ豊か**: カテゴリーが多岐にわたるため、幅広い層の人々の興味に応えることができます。

5. **地域性や文化**: 日本各地の特徴や文化、風習を反映しており、地域ごとのユニークな点を紹介することが多いです。

6. **好奇心をくすぐる**: 一見普通ではない、あるいは知られていない事柄に焦点を当てており、人々の好奇心を刺激します。

7. **ユーモア**: ちょっとした面白さや驚きを提供するランキングが多く、ユーモアや驚きの要素が含まれています。

これらの共通要素が、ランキングを「面白い」と感じさせるポイントになっています。ランキングが持つ情報以上に、その背後にある物語や驚きの要素が人々の興味を引き付けるのです。

 たくさんありますね。それぞれの重みづけが知りたいので、これらのランキングも作ってもらいました。

それらの共通要素をランキング付けすることで、「面白いランキング」にとってどの要素が最も重要かを示すことができます。以下に、その共通要素をランキング形式で示します:

### 面白いランキングに共通する要素ランキング

1. **ユニークさ**
   - 他にない独自の視点や特徴を持つことが最も重要。読者に新鮮さと驚きを提供するための鍵。

2. **エンターテインメント性**
   - 楽しく読めること、驚きや笑いを提供することが重要。単なる情報提供ではなく、読者を楽しませる要素。

3. **話題性**
   - 人々の関心を引き、SNSやメディアで拡散されやすいこと。広く共有されることで、ランキングの影響力が高まる。

4. **好奇心をくすぐる**
   - 一見普通ではない、あるいは知られていない事柄に焦点を当てること。読者の探求心や興味を刺激する。

5. **ユーモア**
   - ちょっとした面白さや驚きを提供すること。読者に楽しさを感じさせ、ランキング自体が話題となる。

6. **バラエティ豊か**
   - カテゴリーが多岐にわたること。幅広い層の人々の興味に応えることで、多様な読者を引き付ける。

7. **地域性や文化**
   - 日本各地の特徴や文化、風習を反映していること。地域ごとのユニークな点を紹介し、読者に新たな視点を提供する。

このランキングは、面白いランキングを作成する際に重視すべき要素の優先順位を示しています。ユニークさやエンターテインメント性が最も重要であり、これらがランキングを魅力的にするための基盤となっています。話題性や好奇心をくすぐる要素も重要なポイントであり、これらがランキングを広く共有されるものにするための要素です。

 なるほど。一番大切なのが「ユニークさ」なのですね。たしかに「エンターテインメント性」は最も重要にも思えますが、埋没してしまったらせっかくのエンターテインメント性も発揮できません。

 「話題性」よりも「エンターテインメント性」が上に来るのは納得できます。見出しだけが刺激的で中身がカスみたいなコンテンツは怒りしか生みません。

 次に来るのが「好奇心をくすぐる」……? 「ユニークさ」と何が違うのでしょうか?

「ユニークさ」と「好奇心をくすぐる」は似ているようで異なる概念です。以下にその違いを説明します:

### ユニークさ

- **定義**: 他にはない独自の特徴や視点を持っていること。
- **目的**: 新鮮さと驚きを提供すること。
- **例**: 
  - 変わり種自動販売機ランキング:通常見かけないような自動販売機を紹介。
  - 奇抜なラーメンランキング:見た目やトッピングがユニークなラーメンを紹介。
- **重要性**: 読者に「こんなものがあるんだ!」という新たな発見を提供し、他のランキングと差別化するための重要な要素。

### 好奇心をくすぐる

- **定義**: 読者の探求心や興味を刺激すること。
- **目的**: 読者にもっと知りたい、見てみたいと思わせること。
- **例**:
  - 日本の不思議な形の島ランキング:特異な形状の島々を紹介し、その背景や詳細に興味を持たせる。
  - パワースポットランキング:特定の場所にまつわる伝説や歴史を紹介し、訪れてみたいという気持ちを引き出す。
- **重要性**: 読者の関心を引き続け、ランキングを深く掘り下げて見てもらうための要素。

### 違いのまとめ

- **ユニークさ**は、そのアイデアやテーマ自体が他とは異なることに重点を置いています。読者に新しい発見を提供するために重要です。
- **好奇心をくすぐる**は、そのテーマや内容が読者の興味を刺激し、もっと知りたい、体験したいと思わせることに重点を置いています。読者の関心を引き続けるために重要です。

### 具体例の比較

- **ユニークさ**: 
  - 「日本全国の珍しい祭りランキング」では、他には見られない独自の祭りを紹介し、そのユニークな特徴が読者を引きつけます。

- **好奇心をくすぐる**:
  - 「おもしろ道の駅ランキング」では、ユニークな特徴に加えて、その場所に訪れたくなるような興味深い詳細を紹介し、読者の行動を促します。

このように、「ユニークさ」は独自性に、「好奇心をくすぐる」は読者の探求心に重点を置いています。

 分かったような分からないような……。「日本全国の珍しい祭りランキング」はユニークの例として出されていますが、好奇心をくすぐってはいないだろうか? 釈然としないので、ユニークでありながら好奇心をくすぐらない例を教えてもらいました。

確かに、「ユニークであれば好奇心をくすぐる」というのは一般的な傾向ですが、必ずしもそうとは限りません。以下に、ユニークではあるが好奇心をくすぐらない例を挙げてみます。

### ユニークだが好奇心をくすぐらない例

1. **非常に専門的な用語や概念のランキング**
   - **例**: 特殊な科学用語や学術用語のランキング
   - **説明**: ユニークなテーマではあるものの、一般の読者には難解すぎて興味を引かない。読者が理解しにくい内容であるため、好奇心を刺激しにくい。

2. **特定の業界の内部事情ランキング**
   - **例**: ある業界の内部の「一番面倒な手続き」ランキング
   - **説明**: 業界内ではユニークな情報かもしれませんが、外部の人には馴染みがなく、興味を持ちにくい。特定の業界の内部事情に限られるため、広く読者の好奇心を引きにくい。

3. **過去の特定の時間帯のランキング**
   - **例**: 「1980年代の特定の時間帯に流行ったテレビCMランキング」
   - **説明**: ユニークな切り口ではありますが、現在の読者にはあまり関心がない場合がある。過去の特定の時間帯に限定されることで、現代の読者の好奇心を引きにくい。

4. **非常にニッチな趣味や興味のランキング**
   - **例**: 「特定の昆虫の羽根の模様ランキング」
   - **説明**: ユニークではあるが、非常に限定的な興味分野であり、一般の読者には関心が持たれにくい。ニッチすぎて、多くの人の好奇心を刺激しない。

5. **実用性に欠けるランキング**
   - **例**: 「最も無意味な発明ランキング」
   - **説明**: ユニークで面白いテーマですが、実用性がないため、読者の好奇心を引くことが難しい。興味を引く一方で、すぐに関心が薄れてしまうことがある。

### まとめ

- **ユニークさ**は、そのテーマや視点が他にない独自のものであること。
- **好奇心をくすぐる**は、そのテーマが読者の興味を引き、もっと知りたい、体験したいと思わせること。

ユニークであるにもかかわらず好奇心をくすぐらない例は、主に以下の理由で発生します:
- **理解しにくい**: 読者が理解できない内容。
- **関心の範囲外**: 読者の興味や関心の範囲外のテーマ。
- **実用性が低い**: 実際に役立つ情報や体験に結びつかない内容。

これらの要素を考慮することで、ユニークさと好奇心をくすぐる力のバランスを取った魅力的なランキングを作成することができます。

 ああ、これは納得ですね。たしかにユニークなのに好奇心をくすぐらないことはあるようです。

 

 というわけで、ChatGPT先生にランキングについて考えてもらったわけですが、最後にブログのタイトル案をランキング形式で発表してもらうことにしました。

ブログのタイトルは、読者の興味を引きつけるために重要です。以下に、「面白いランキング」をテーマにしたブログのタイトル案をランキング形式で発表します。

### ブログタイトル案ランキング

1. **「面白いランキング特集:ユニークさと好奇心のバランスを探る!」**
   - 読者の興味を引きつけるとともに、ブログの内容が一目で分かるタイトル。

2. **「これぞ日本の面白いランキングベスト10!」**
   - 短くキャッチーで、具体的なランキングを期待させるタイトル。

3. **「ユニークで好奇心をくすぐるランキング10選」**
   - ユニークさと好奇心を強調し、読者に新しい発見を提供するタイトル。

4. **「知ってる?日本の意外なランキング10選」**
   - 読者の知らない情報を紹介することを示し、好奇心を引きつけるタイトル。

5. **「あなたの知らない日本の面白ランキング」**
   - 「知らない」という要素を強調し、読者の好奇心をくすぐるタイトル。

6. **「ユニークさ全開!日本の面白ランキングTOP10」**
   - ユニークさを前面に出し、興味を引くタイトル。

7. **「見て楽しい!日本の奇抜なランキング特集」**
   - 読んで楽しめる内容を示し、エンターテインメント性を強調するタイトル。

8. **「知ると驚く!日本のユニークなランキング」**
   - 「驚く」という要素を加えて、読者の興味を引きつけるタイトル。

9. **「日本の面白いランキングを集めました!」**
   - 集合的な内容を示し、幅広い情報を提供することを期待させるタイトル。

10. **「好奇心が止まらない!ユニークランキング大特集」**
    - 好奇心を強調し、読者の興味をかき立てるタイトル。

これらのタイトル案は、ブログの内容に合わせて選ぶことができ、読者の興味を引きつけるために役立ちます。どのタイトルもユニークさや好奇心を刺激する要素を取り入れており、魅力的なブログ記事に仕上げるための一助となるでしょう。

 なんかいまいちな気がします。っていうか、これってChatGPTが生み出したものだし、実在しない可能性もあるので、本当にそういうランキングがあるかのようなタイトルはちょっと嘘っぽい。

 そういえば伝え忘れていたので、これがはてなブログ今週のお題に対する応募記事であることを伝えてみました。

はてなブログ」のお題「私の〇〇ランキング」を考慮すると、タイトルをより具体的かつ個人的な視点からアプローチすることが効果的です。このアプローチに基づいて、ブログタイトル案を修正してみました。

### ブログタイトル案ランキング(「私の〇〇ランキング」)

1. **「私の選ぶ面白いランキング10選:ユニークで好奇心をくすぐる!」**
   - 個人的な視点を強調し、具体的なランキングを期待させるタイトル。

2. **「私が驚いた!日本のユニークランキングベスト10」**
   - 自分の体験や感想を強調し、読者に親しみやすいタイトル。

3. **「私の好きな日本の面白ランキングTOP10」**
   - 好みや興味を反映したランキングを示し、読者の共感を呼ぶタイトル。

4. **「私のおすすめ!知ってほしい日本のユニークランキング」**
   - 読者におすすめしたい内容を強調し、親しみやすいタイトル。

5. **「私が見つけた面白い日本のランキング10選」**
   - 自分の発見や調査を強調し、読者に新しい視点を提供するタイトル。

6. **「私の驚きランキング:日本の知られざる面白スポット」**
   - 驚きを強調し、読者の興味を引きつけるタイトル。

7. **「私のイチオシ!ユニークで楽しい日本のランキング」**
   - 個人的なお気に入りを紹介し、エンターテインメント性を強調するタイトル。

8. **「私のベスト10:好奇心をくすぐる日本のユニークランキング」**
   - 自分の視点から選んだランキングを示し、親しみやすさをアピールするタイトル。

9. **「私の発見!日本の面白いランキング特集」**
   - 発見や調査の要素を強調し、読者に新しい情報を提供するタイトル。

10. **「私のおすすめランキング:日本のユニークな面白スポット」**
    - おすすめする内容を強調し、読者に親しみやすいタイトル。

これらのタイトル案は、「私の〇〇ランキング」というお題に沿った形で、個人的な視点を強調しながら、ユニークさと好奇心をくすぐる要素を取り入れています。読者に親しみやすく、共感を呼ぶタイトルが中心となっています。

 ちょっと求めていたものに近づいた気がします。やはり情報共有が大事なようです。

 

 

 

 ……すでに一万字オーバーしていますが、自分はほぼ何もしていないうえに、なんの思い入れもないのでこのまま終わっていいのか不安になります。

 というわけで、最後に蛇足ながら私の思い出に残るランキングランキングを発表してみます。

  1. 高校別東大合格者数ランキング
  2. 模試の成績上位者一覧
  3. 卓球の世界ランキング
  4. プロ野球の順位表
  5. 本塁打数ランキング
  6. 好きなフィギュアスケート選手ランキング(自作)

 ユニークさもなければ、エンターテインメント性もない。好奇心をくすぐりもしない。しかも、10個も思い浮かばなくて諦めている。なんてひどいランキング。やはり人間よりChatGPTの方が優れているっていうのか?

 ……でもそんなの関係ねえ! 大事なのは熱だ! どれだけ熱く語れるかだ!

 というわけで、まず第一位「高校別東大合格者数ランキング」ですね。世の中にはこんなランキングどこに需要があるんだと思っている方もいるでしょうが、やはり母校がランカーだと気になるものです。母校が駆け上がっているのを見るのは嬉しい。大学受験版甲子園みたいなものです。

 今、最新版を見てみたのですが、聖光学院が2位! たしか15年くらい前まで8位ぐらいで桜蔭に追いつけそうで追いつけないという感じだったのに、今や灘を超えているという。かつては神奈川のNo.1といえば圧倒的に栄光学園。続いて、聖光学院、浅野……という感じだったのが、今や神奈川のトップは間違いなく聖光です。じゃあ栄光はどうなったかといえば、合格者数は47名。多少減っている気はしますが、衰退しているといえるかは微妙です。ただ、そのすぐ後ろに浅野、翠嵐がピッタリ付けているという。かつては浅野の合格者数は30人前後だったと思うので、浅野も上昇気流に乗っている印象です。翠嵐もすごいですね。かつては浅野と翠嵐の差もかなり大きかったはずなのに、今はわずか1名の差。神奈川御三家が「聖光・浅野・翠嵐」になる日も近いかもしれません。(そういえば「開成・灘・筑駒」がスリートップの時代は聖光の台頭で完全に終わったのですねぇ……。諸行無常を感じる。)

 他に気になるのは西大和学園高校。5位というのは驚きです。いつからこんなに!? どうやら2021年に大きな飛躍を遂げていたようです。そのさらに前の2年も連続で10人近く伸ばしていて、2015年あたりまでは30名に届かなかったようなのでやはり大躍進ですね。一体何があったのか? Wikipediaを見ると、2015年に「東大・京大・国公医コース」が設置されたようなので、それがたちまち結果を出したということなのでしょうか? それから気になるのは共学という点です。全国のエリート小学生に対する大きなアピールポイントです。なんせたいがいの進学校は男子校や女子校ですからね。でも小学生だと、まだ「へ! 女(男)になんて興味ねえや!」と強がってしまうお年頃かもしれません。

 続いて渋幕。『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の舞台として有名ですが、今年は6位で64名。ここ10年で飛躍を遂げた印象ですが、ピークは2017年の78名。どうやら伸びは止まったようです。

 60名で8位の日比谷高校もこの10年でかなり合格者数を増やした高校ですが、翠嵐の成長と合わせて考えると、公立が復活しつつあるのが近年の傾向でしょうか。親としては嬉しいですね。思春期の生徒にとっても共学から東大を目指せるのは魅力的。ただ、渋幕と同様に成長は止まっているようです。

 麻布は55名で9位。かつて100名以上の合格者を出した年もあることを考えると、これは没落しつつあると言ってもいいかもしれませんね~。対して、桜蔭は63名で7位と安定しています。しかも理三が12名。灘と開成に並ぶ全国トップで、質が高い。やはり女子校のトップというユニークなポジションが強いのでしょうか? 豊島岡と乃木坂46池田瑛紗ちゃんの母校の女子学院が26名の24位なので、桜蔭の地位はまだまだ安泰でしょうね。

 ……と、東大合格者数ランキングで思いのほか楽しくなってしまいました。他のランキングについて語ると本格的に蛇足になりそうなので、ここらへんでやめておきます。

 ただ、このように推移を踏まえると、ランキングはそれ自体がエンターテインメントになるのだということは述べておきたい。『呪術廻戦』を読みながら「五条悟と宿儺はどちらが強いのか?」「今の虎杖は誰々と互角に戦えるのか?」と議論するのと本質は同じ。結局、人は「誰が最強なのか?」が気になって仕方ない生き物なのです。

春泥棒

 今回はヨルシカの『春泥棒』について語るよ。


www.youtube.com

 まずは作詞者であるn-buna氏の言葉を引用しよう。そうしよう。

春の日に昭和記念公園の原に一本立つ欅を眺めながら、あの欅が桜だったらいいのにと考えていた。あれを桜に見立てて曲を書こう。どうせならその桜も何かに見立てた方がいい。月並みだが命にしよう。花が寿命なら風は時間だろう。
それはつまり春風のことで、桜を散らしていくから春泥棒である

n-buna

 

 私の仮説では、ほぼ全ての歌はラブソング・失恋ソング・応援ソングのいずれかに分類できる。では、『春泥棒』はどれに当たるだろうか……と考えると、非常に迷う。どれにも当てはまる気がする。

 何度でも書くが、ラブソング・失恋ソング・応援ソングの決定的な違いは視点にある。今を見ていればラブソング、過去を見ていれば失恋ソング、未来を見ていれば応援ソングとなる。今と過去を歌った歌が恋愛について、未来を歌った歌が夢について歌いがちなのは傾向にすぎず、絶対のルールではない。

 では、『春泥棒』はどれだろうか? この歌は要約すれば、桜を愛でて、桜が散るのを惜しむ歌である。だから、まずは桜が咲いている今を歌うラブソングである。これは間違いない。特に下記のくだりはラブソングに典型的な、表現不可能な愛を歌っている。

愛を歌えば言葉足らず

踏む韻さえ億劫

花開く今を言葉ごときが

語れるものか

 このフレーズが面白いのは、言葉を「ごとき」と罵っていることである。考えてみると、愛を言葉で表現できないということは、実際の愛の方が言葉によって表現される愛よりも大きいことを意味している。

 私は「表現不可能」を「比較」と分けて考えていたのだが、実は「表現不可能」は「比較」の中の一類型に過ぎなかったことに気付かされる。

 それはともかく、「言葉ごとき」と表現することで、言葉の地位が下がり、相対的に愛の地位が上がるという現象が発生する。

愛>言葉

愛>>>言葉

になるイメージ。

 ここで重要なのは、『春泥棒』の歌詞を読めば、作詞者が言葉を大切にしている人間なのは明らかだということだ。だから、「言葉ごとき」と表現しても言葉の地位が下がらない。ただ愛の地位が上がるのだ。

 面白い技法である。とはいえ、「言葉なんかじゃ伝わらない」ぐらいな言い回しならよく見る気がしないでもないから、「ごとき」を使うワードセンスこそがミソかもしれない。

 というわけでラブソングなのは間違いない。だが、桜が散る未来を見ているから応援ソングでもあると考えることもできる。「人生の短さ」について歌うのは応援ソングが多いし、『春泥棒』の大部分は「人生の短さ」で構成されている。

 ここでふと、「希少性」と「人生の短さ」が接近した概念であることに気付く。ラブソングにおいては愛の希少性が歌われる。それによって愛の重要さを語る。応援ソングでは人生の希少性を語る。それによって人生の重要さを語る。そして「だから夢を追おう」と繋がるわけだ。

 『春泥棒』では、ただ花の儚さを語る。「だからどうするべきか」を語らない。それゆえに、『春泥棒』はラブソングであると同時に、応援ソングたりうる。聴き手は、散る桜に愛する人を重ねてもいいし、自分自身を重ねてもいい。この多義性こそスピリット・オブ・俳句の本領である。

 一方で、桜が散る未来を見ているというのは、「桜が散ったら何しよーかなー」と考えているのではなく、「桜が散ってしまった悲しいなあ綺麗だったのになあ」と名残惜しむのを想像しているのである。つまり、想像している未来の中で、過去を見ている。ここに失恋ソングの風味が立ち上る。

 通常の失恋ソングであれば、様々な後悔や懺悔をするものだが、『春泥棒』ではそんなものは一切歌われない。この歌の全体を通して言えることは、作為がない。歌い手は、桜を見る以外のことは何もしない。ただ眺めるだけで、時間の流れに抗おうとしない。多くのアーティストは「努力すれば夢が叶う」式のフロンティアスピリットに縛られがちだが、ここにあるのはそれとは対極にある他力本願な仏教の精神である。ただただ世の無常を悟るのみだ。

 だからラストもあっさりしている。

はらり 今春仕舞い

 すべての花が散った瞬間、春が終わったと、すっぱり曲が終わる。ただそれだけのことなのだが、これが妙にカッコいい。あれだけ花が散るのを名残惜しんでいたのに、「今春仕舞い」という言葉には悲しみを引きずっている感じが一切ない。すでに未来を見ている人の姿が私には見える。

 ただそれは私が勝手に妄想しているだけで、ここでもやっぱり「春が終わったからどうする」は語られない。語られなくても、いや、語られないからこそ、聴き手が勝手に想像する。『春泥棒』はヨルシカと聴衆の共作なのである。

『ジュラシック・パーク』

 『ジュラシック・パーク』を観た。

 

 『ジュラシック・パーク』は1993年の映画。監督はスティーブン・スピルバーグ、脚本はマイケル・クライトンデヴィッド・コープ。主演はサム・ニールローラ・ダーンアカデミー賞は音響編集賞、録音賞、視覚効果賞を受賞。当時の世界興行収入を塗り替えた。

 ちなみに、同年のアカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞・作曲賞・美術賞・撮影賞・編集賞を受賞したのは『シンドラーのリスト』だ。これら二作品で受賞可能なのに取り逃したのは俳優部門とメイクアップ賞と衣装デザイン賞だけである。

 

 『ジュラシック・パーク』はモンスター映画だ。だが、『キングコング』や『ジョーズ』に比べると特徴的な部分がある。

  • 天国から地獄への転換
  • モンスターの多様性

 

 モンスター映画(というかすべての映画)の基本は領域の侵犯にある。人間がモンスターの世界に足を踏み入れるか、モンスターが人間の世界にやってくるか(後者であっても前提に前者がある場合が多い)。となると、おどろおどろしい世界に侵入するか、日常が地獄に変わるか、普通のモンスター映画はこの二つに分類される。たとえば、『キングコング』は前者だし、『ジョーズ』は後者だ。

 ところが、『ジュラシック・パーク』は、このセオリーから外れる作りになっている。「ジュラシック・パーク」は滅んだはずの恐竜が闊歩する一種のサファリパーク。恐竜好きにとってはパラダイスだ。ところが、何らかの理由で人間のコントロールが効かなくなり、夢の世界は地獄へと様変わりする。モンスターが人間の世界に侵入してくるのは、日常が地獄に変わるパターンだが、それよりもさらに落差が大きい。当然、恐ろしさもそれだけ大きくなる。

 なぜこのようなことが可能なのか。必要な条件は二つある。まず、モンスターの世界は、人が夢見てきた世界であること。もう一つは、モンスターの世界が人間の制御下にあること。そして、後者の条件が破綻した瞬間に、天国は地獄へと変わる。

 『ジュラシック・パーク』では、人間たちが恐竜の世界に侵入してしまったためにトラブルが起きる。だが、『ジュラシック・パーク』での領域侵犯とは、人間が恐竜の世界に足を踏み入れることではない。恐竜の世界は人間が生み出したものだからだ。人間が生み出した世界を人間の世界と分離して考えられるかというと、それは難しい。だから、『ジュラシック・パーク』で本当に侵される領域というのは、恐竜の世界ではなく、神の領域なのだ。「生命を生み出し、支配する」という神の領域を侵すことへの恐怖が『ジュラシック・パーク』の根底にはある。

 他作品と比較してみると、最も近いのが『ソードアート・オンライン』だと思う。あれはまさに天国から地獄への転換があるし、上述の二つの条件も満たしている。ただし、『ソードアート・オンライン』には、世界との間に領域侵犯がない。この点が『ジュラシック・パーク』との大きな差異を生み出している。『チャーリーとチョコレート工場』もよく似ている。あれは要するに、ウィリー・ウォンカが実はモンスターだったという映画だ。だが、主人公は領域侵犯をしない(賓客のままであり続ける)という点がやはり『ジュラシック・パーク』との根本的な差となっている。やはりモンスター映画は、領域侵犯こそが肝なのだ。

 

 もう一つの『ジュラシック・パーク』の特徴として、モンスターの多様性がある。

 『キングコング』『ジョーズ』『エイリアン』『ゴジラ』『ザ・フライ』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『グエムル』などなどを見渡してみると、だいたいの作品は、主役となるモンスターがどんと大きな存在感を占めている。『キングコング』にはキングコング以外のモンスターも出てくるが、あくまで主役を引き立たせるための前座にすぎない。

 ところが、『ジュラシック・パーク』にはそのような主役が存在しない。ティラノサウルスも危険だが、それと同じぐらいラプトルも怖い。恐怖の対象は、特定のモンスターではなく、恐竜というジャンル、というかジュラシック・パークという場。それゆえに飽きにくいし、クライマックスのあの展開が可能になる。

 もちろんこれは一長一短で、一点物で勝負する方がアピールポイントを際立たせやすいとかメッセージ性を持たせやすいとか色々あるだろう。『ジュラシック・パーク』方式で戦えるのは、既存のキャラクターを用いる場合に限られる気もする。

 

 もうひとつ、『ジュラシック・パーク』で特筆しておきたいのが、「びびって動けないガキ」の処理の上手さだ。

 限界的な状況において登場人物がやるべきことをできない、というのは映画などではよくあるシチュエーションだ。リアリティの追求だとか、人間性を描きたいだとか、なんらかの理由があって、こういう描写は差し込まれるはず。

 一方で、観客は登場人物にやるべきことをやってほしいものだし、それ以上に大事なのが物語のスピード感だ。「びびって動けない」は、ほぼ確実に映画のスピード感を殺す。スピード感を犠牲にした演出はストレスを生む。ストレスを生むこと自体が目的でないなら、その演出は機能しない。だから、私はこういう描写が大嫌いだ。

 この問題の解決策の一つは、「びびらせない」だ。これを好むのが宮崎駿。『もののけ姫』でタタリ神が現れた時、村の娘たちはどうしたか? 一目散に逃げ出したし、仲間が転んだらタタリ神に向かって刃を向けるのだ。宮崎駿が生み出すキャラクターの魅力の一つに勇敢さがある。

 これとは別の解を、スティーブン・スピルバーグは『ジュラシック・パーク』で提示している。「びびって動けない」をやるけど映画のスピードは維持する、だ。

 『ジュラシック・パーク』には二つの「びびって動けない」ポイントがある。

 一つは、ティラノサウルスに襲われた主人公と少年たち。命からがら逃げおおせた彼らは、木の上にしがみついている。いつまでもそうしているわけにはいかないが、少年は怖くて降りられない。ここで少年に合わせてもじもじしていると映画は破滅する。この点を分かっていないクリエイターが世の中には多すぎるが、スピルバーグは分かっている。彼は、少年の頭上から車を落とした。びびっていようが動かざるを得ない状況を作り出したのだ。おかげで、少年が動けずにグズグズしている時間は10秒にも満たない。

 もう一つは、ジュラシック・パークの本部を囲う柵にやはり少年がしがみついている場面だ。柵には本来電流が流れているはずなのだが、このときはたまたま電力供給が止まっていたため触れることができている。ところが、少年が掴まっていることなど知らない大人たちが、再び通電を開始させていく。それを察した主人公が少年に早く飛び降りるよう指示するのだが、やはりびびって飛び降りられない。さあ、今度は困った。なんせ柵に電流が流れるのがいつかは分からない。少年は動かざるを得ないことを認識できない。そこでスピルバーグはどうしたか? 答えは、「少年にも電流を流す」である。危機的状況にびびって動けないなら痛い目を見るのが当たり前。それを徹底するのがスピルバーグ。少年のために待ってあげたりはしないのだ。

 この二つの手法に通底するのは、びびって動けない間も事態を進行させ続けることだ。ここさえ守っていれば、「びびって動けない」はむしろサスペンスを高めるスパイスになる。というか、スピルバーグはそのためにびびらせているのだろう。登場人物がびびっちゃったから事態の進行をちょっと遅くしてあげるみたいなことは絶対にしてはならない(と私は思う)。

 

 ちなみに、この世のほぼすべての歌は三種類に分類できる理論によれば、『ジュラシック・パーク』は失恋ソングに分類できる。ここで歌われるのは、恐竜への愛。愛が暴走して傷つけ合い、破局してしまう。だけど恐竜との出逢いと別れによって、主人公は新たなスタート(=子作り)を切ることができる。そういう歌だ。

 

video-share.unext.jp

初めてのスリザーリンク

今週のお題「最近、初めて〇〇しました」

 

 朝日新聞デジタルの購読無料期間が終わったので(解約しそびれて一ヶ月余計に購読してしまった。)、新たに毎日新聞に登録してみた。

 エコノミーの日経新聞、エモーションの朝日新聞ときて、毎日新聞は両者の中間にある印象だ。ウォール・ストリート・ジャーナルの日本語訳版を読めるのもなんだかお得感がある。

 

 それはともかく、毎日新聞のサイトに「毎日パズル」なるページがある。私はパズルが好きなので、こういうのがあるとつい手を出してしまう。そこで私はスリザーリンクなるパズルに出会った。

 どんなパズルなのか……説明したい気持ちはやまやまだが、画像を勝手に載せていいか分からないから、リンクを貼って済ませよう。

mainichi.jp

 このページの冒頭にはこうある。

 スリザーリンクは株式会社ニコリが開発したパズルです。問題は、白地の背景の一部に0、1、2、3のいずれかの数字と、点が書き込まれています。点と点の間にタテヨコの線を引き、一つの輪っかを作るのがゴールです。

 四つの点で作られた正方形の中にある数字は、その正方形の辺に引く線の数を表しています。数字のない正方形には、何本の線を引くかわかりません。また、線を交差させたり、枝分かれさせたりしてはいけません。

 点と点を結んで線を引き、一つの輪っかを作るゲーム。

 なるほど。とりあえず線を引いていってみる。分かるところから一つずつ、線を引いていく。いずれ詰まる。

 そこで、「もしここに線を引いたらどうなるだろうか。成り立つだろうか。成り立たない。では、ここには線は引けないということになる。……」という風に仮定を置いて答えを導き出すという作業へ移行していく。

 これをやると、次第にパターンが見えてきて、頻出のものについては定理として記憶されていくことになる。私は上のページは見ずに取り組み始めたので、上のページに書いてある定理は自分で発見した。

 とはいえ、定理で解決できる範囲は広くないから、かなりの面積を自力で考えていくことになる。これを繰り返していくうちに、ゲームの本質が見えてくる。

 「線を引いて一つの輪っかを作る」と見ると、意識は「線を引くこと」に持っていかれがちである。これは素人の考えだ。(とスリザーリンク歴一週間の男が申しております。)

 本当に重要なのは、点である。点と点を結ぶとき、一つの点からは一本の線が飛び出る。さらに、それらの線が繋がって輪になるということは、結ばれる点からは必ず、二本の線が飛び出るということになる。一つの点には必ずたった一つの入口とたった一つの出口があると考えると分かりやすい。

 ここまで来ると、解けない問題はまずない。あとはいかに速く正確に処理できるかの領域になってくる。

 そこで満足してはいけない。「速く処理する」とはどういうことかを考えねばならない。このシンプルで分かりやすい標語は、実は二つの目標をごちゃまぜにして語っている恐ろしい言葉なのである。

 パズルを速く解くためには、次の二つのことを行わねばならない。

  • 処理速度を向上させる。
  • 処理のプロセスを減らす。

 「処理速度を向上させる」。これは分かりやすい。要するに、思考と手の速度を速めるのだ。基本的に、ひたすら演習を繰り返すことによって達成される。類似のパターンを何回も繰り返すことで、脳みそは自ずと考えなくてよいことを考えなくなっていく。(マウスを滑らかに動くものに買い替えるなど、演習以外の方法もありうる。)

 「処理のプロセスを減らす」とは、たとえば、スリザーリンクであれば、次のような解き方をしていたとしよう。

  1. 線を引けない箇所にバツを付ける。
  2. 上の処理によって、確実に線が引かれることが判明した箇所に線を引く。
  3. 上の処理によって線を引けないことが判明した箇所にバツを付ける。
  4. 2と3を可能な限り繰り返す。
  5. 二択になっている部分を起点に、色違いの線で仮の処理を施していく。
  6. 成立しなくなった場合、仮の線を消し、確定した部分に線を引いていく。
  7. 上記の処理を答えにたどり着くまで繰り返す。

 回答スピードを速めたければ、1と3は行わない方がよい。どれだけ超高速でやれたとしても、バツを付けるのには時間がかかる。同じ理由で5も行うべきではない。(厳密に言えば、行わないというよりは、手でやっていたことを脳内で行うという方が正確か。ここでは分かりやすさのために、脳内処理は処理プロセスに含めない。)

 1と3と5を削れば、処理のプロセスはおよそ半分に減るわけで、単純に考えれば二倍の速さで問題が解けるようになる。

 もちろん、思考の速度が速くならない限り、プロセスを省略することはできない。1・3・5は正確性を担保するための処理だったわけで、それを省略するのにはリスクもある。要するに、処理のプロセスを減らすことも、やはり演習を繰り返してこそ達成される。結局、「速く処理する」の一言で済ませても大差はないかもしれないが、プロセスを減らすという発想に至らずに非効率的な体制のまま修行を続けてしまう人はいるのではなかろうか。

 

 我ながら、一週間(平日はやっていないから実質的には二日)の経験でよくもまあここまで偉そうに語れるものだ。だが、私は同じようなことを以前にも経験したことがある。

 マインスイーパーや数独など、他のゲームに取り組むときも同じ過程を踏んできた。マインスイーパーを速くクリアしたいのであれば、フラグは絶対に立ててはならない。(そういう意味では、マインスイーパーと恋愛ゲームは真逆といえる。でも地雷を回避するという意味では、マインスイーパーと恋愛ゲームは同じともいえる。物事には多様な側面がある。)

 なんならゲームに限らず、仕事、いや、人生のあらゆる方面において同じことをやっている。

 やったことのないパズルに挑戦することは、新しい人生を生きることに等しい。

今さら『晴る』について語る

 前回、歌詞について考えたことを書いた。

 

weatheredwithyou.hatenablog.com

 

 今回はこれに基づいて具体的な歌について考えてみたいと思う。選んだのはヨルシカの『晴る』だ。


www.youtube.com

 

ヨルシカ 晴る 歌詞 - 歌ネット

 

 理由は好きだから。これに尽きる。

 『晴る』はアニメ『葬送のフリーレン』の第2クールの主題歌だ。ちなみに『葬送のフリーレン』の放送が終わってからもう一ヶ月以上経つ。なのに、今になって猛烈にこの曲が好きになってしまった。ヨルシカのライブ行きたい。

 

 この世の歌は

  • ラブソング
  • 失恋ソング
  • 応援ソング

のいずれかに分類することができる。

 では、『晴る』はどれなのか。まずここが難問である。

 いきなり「貴方」が登場する。ということは、ラブソングか失恋ソングか。

貴方は風のように

目を閉じては夕暮れ

何を思っているんだろうか

 うーん、なんだかよく分からないが、「貴方」の思考を気にしていることから、これは「追究」の技法を使っていると考えることもできる。

 次を見てみよう。

目蓋を開いていた

貴方の目はビイドロ

少しだけ晴るの匂いがした

 やはりよく分からない。どうやら「貴方」の目がビイドロのようにきれいであるという話にも見える。

 さらに進めてみよう。

晴れに晴れ、花よ咲け

咲いて晴るのせい

降り止めば雨でさえ

貴方を飾る晴る

 さあ、いよいよもって分からない。なんだかずっと天気の話をしている。これはどう解釈すればいいのか。

胸を打つ音よ凪げ

僕ら晴る風

あの雲も越えてゆけ

遠くまだ遠くまで

 さて、ここまで来ると「これはラブソングや失恋ソングではないのでは」という疑念が湧いてくる。

 先ほども書いたが、ずっと天気の話をしている。貴方はどこかへ消失してしまっている。これがラブソングだとするとかなり異質である。

 となると、この歌は応援ソングだということになる。特に「あの雲も越えてゆけ 遠くまだ遠くまで」は応援ソングの「行動」を促すための頻出ワード「越える」「遠く」が登場する。よし、その線で行ってみよう。

 応援ソングで歌われる内容は以下のとおりである。

  • 行動
  • ビジョン
  • 原体験
  • 衝動
  • 実現可能性
  • チャンス
  • 仲間
  • 未知の領域
  • 無知蒙昧
  • 苦難
  • 臥薪嘗胆
  • 自分軸
  • 孤独
  • 比較
  • 人生の短さ

 上に挙げた歌詞はこれらのいずれかに分類できないか考えてみよう。

胸を打つ音よ凪げ

僕ら晴る風

 これは「衝動」と考えることができそうだ。歌の主人公は、胸が高鳴っており、風のように軽やかな気持ちになっている。

 面白いのは「胸を打つ音よ凪げ」と述べていることだ。普通の歌では、ここで「凪げ」のようなことは言わない。なぜならば、応援ソングでは衝動は肯定されるべきものだからだ。それなのに、この歌では衝動を抑えようとしている。おかげで主人公の衝動が弱まった印象があるかといえばそんなことはない。むしろ「この胸よ高鳴れ!」的なことを言うよりも遥かに強い印象を受ける。「凪げ」という言葉が、抑えねばと思ってしまうほど強く心臓が胸を打っていることや、抑えようとしてもなお静まらない興奮を物語っているからだ。

 言葉とは面白いものだ。命令は、現状が命令内容に反している印象を与えてしまう。「勉強しなさい」と言われれば、「お前は勉強をしていない」と言われているように感じる。「便器を汚さないでください」と言われると「お前は便器を汚している」と言われたように感じるものだ。

降り止めば雨でさえ

貴方を飾る晴る

 次に、この部分について考えてみると、これは「苦難」だ。しかも、良薬は口に苦しに発展しているパターン。

 雨がやんで晴れれば、空には虹が架かる。雨が降らないと虹は架からない。これと同じで、苦難が貴方の糧になるのだ、と言っている。内容は平凡だが、表現がお洒落すぎる。歌詞は、何を歌うかよりも、どう歌うかが重要なのだ。

晴れに晴れ、花よ咲け

咲いて晴るのせい

 さあ、ここまで来れば「雨=苦難」「晴れ=夢の実現」の図式が見えてくる。この歌、やたら風景描写が多いと思ったら、全てはメタファーだったのである。(当たり前のことだが。)

 というわけで、ここは「願望」を歌っている。

目蓋を開いていた

貴方の目はビイドロ

少しだけ晴るの匂いがした

 この部分は、「少しだけ晴るの匂いがした」から考えるに、衝動の発端、すなわち「原体験」を歌っているものと考えることができる。

貴方は風のように

目を閉じては夕暮れ

何を思っているんだろうか

 ここはやっぱりよく分からん。

 人を風にたとえるときは、その人はもう出会えない人(≒死者)であるのが一般的だ。この点については、上の原体験パートとリンクするので、その線で考えてよいと思う。

 それはいいとして、「目を閉じては夕暮れ」ってどういうことだ? ここが難しい。解釈の一つとして思いつくのは、「貴方」は空であるということだ。「降り止めば雨でさえ貴方を飾る晴る」なのだから、虹で飾られるものが「貴方」。つまり空。もう一つ思いついたのは、「貴方」が黄昏れていることを描いているという解釈。意味としてはこちらの方が通るか。

 いずれにせよ、分類としては「無知蒙昧」か「未知の領域」のいずれかであることはほぼ間違いないと思う。一番の歌詞はポジティブなので、おそらく「未知の領域」について語っているものと思われる。貴方が思っていること=晴れなのだ。

 

 一番の歌詞はポジティブと書いたが、二番の歌詞はその逆。こちらでは苦難について語られる。

貴方は晴れ模様に

目を閉じては青色

何が悲しいのだろうか

 さて、この部分で先ほどの解釈の一つが切り捨てられ、一つが補強されそうだ。「貴方=空」説はないと言っていい。意味が通らない。(雨=青色と考えることができるなら生き残りの余地はあるが無理筋だろう。)逆に、「夕暮れ=黄昏れ」説はなお生きている。「目を閉じては青色」は、「貴方」がブルーな気分になっていることを表しているものと思われる。どちらも「目を閉じては〇〇」の〇〇が「貴方」の様子を表しているから、説は補強されたように感じる。

目蓋を開いている

貴方の目にビイドロ

今少し雨の匂いがした

 先ほどは原体験となったパートが、今度は苦難の前触れを歌っている。

泣きに泣け、空よ泣け

泣いて雨のせい

降り頻る雨でさえ

雲の上では晴る

 ここは「実現可能性」。かつてここまで力強く泣くことを促した歌があっただろうか。面白い。それに、「辛いときは泣いていいんだよ」というお決まりのメッセージを、「泣くのは雨のせいであってあなたが弱いからじゃない」というところまで言っている(ように私には感じられる)。「だって涙が出ちゃう 女の子だもん」*1の真逆である。

 「降り頻る~」の表現はお洒落だし、延々と天気の話をしているこの歌だからこそ一層光る。

土を打つ音よ鳴れ

僕ら春荒れ

あの海も越えてゆく

遠くまだ遠くまで

 ここで空から地面への視点移動が行われる。この瞬間、歌詞で描かれている世界が一気に(あるいは明確に)空間的広がりを獲得する。奇しくも、前回書いた『星間飛行』と同じことが行われている。

 と同時に、ここで初めて季節の概念が導入される。ここまで歌われていたのはあくまで天気の話であって、春の話は全然してこなかったことに注意されたい。

 

通り雨 草を靡かせ

羊雲 あれも春のせい

風のよう 胸に春乗せ

晴るを待つ

 先ほどさらっと登場した春荒れはネガティブイメージがメインの言葉だが、そこには春の到来というポジティブイメージもある。ここではそこに目を向けている。

 羊雲は雨の予兆であると同時に、春の到来を告げてもいる。雨も所詮は通り雨に過ぎない。春と晴るへの期待感が高まる。

 要するに、衝動が苦難を上回る状態を歌っているわけだ。

晴れに晴れ、空よ裂け

裂いて春のせい

降り止めば雨でさえ

貴方を飾る晴る

 ここは一番とほぼ同じ。

 「春のせい」と漢字が変化するのは、「空よ裂け」がそのまんま晴るを意味しているから。ここで言う空とは曇り空のことである。「裂いて晴るのせい」だと「晴れるせいで晴れる」という意味不明な文になってしまう。

 「貴方を飾る晴る」が変化しないのは虹と春は関係ないから。

胸を打つ音奏で

僕ら春風

音に聞く晴るの風

さぁこの歌よ凪げ!

 春が来て、ようやく晴るも来た。というところまでは間違いない。問題はなぜ「この歌よ凪げ」と言うのか。

 「胸を打つ音よ凪げ」と同様に、あえて「凪げ」ということで歌がやまないことを強調したのだろうか。可能性としてゼロではないが、ここまでの展開を踏まえるとあまりしっくりこない(ここはストレートに行ってほしい。)し、一度使った大技をまた使うのは芸が無い気が若干する。

 私が考える解釈としては「待望していた未来は今になったからもう願う必要はない」というものが一つ挙げられる。この歌は晴るを願う歌だ。ただ、この解釈だとここからアカペラが続く意味が分からない。「歌」を楽器の演奏に限定する、または「凪げ」を静まる(音がなくなるわけではない)程度の弱い意味として捉えれば成り立つ余地はある。前者だとすると、この歌の演奏は雨を表現しているのだと考えることもできてちょっと良い感じではあるが、歌は声を意味するのが普通だから釈然としない。

 ここで「音に聞く晴るの風」をもっと生かした解釈をしたい。

 「音に聞く」は名高いといった意味だ。「晴るの風」を有名だと述べるということは、主人公は晴るを経験したことがないのであろう。これが現実ではなく心象風景だと考えれば、しかも「晴る」=「夢の実現」だとするならば、ほとんどの人はそうなのかもしれない。「音に聞く晴るの風」の意味はこれで完結している。

 だが、もし「晴るの風の音を聞く」という意味もここに込められているとしたらどうだろう。僕らは春風だ。この歌=春風は凪いで、晴るの風の音に耳を澄ませてみよう。という風に「さぁこの歌よ凪げ!」を理解することが可能になる。この説を裏付けるように、YouTubeの公式動画の公式字幕では、"Hear the sound of a sunny wind. Now let this song calm down!"と表記されている。(最初からそれを見ておけば良かった……。)ここまでは春風の歌。ここからは晴風の歌だというわけだ。

晴れに晴れ、花よ咲け

咲いて春のせい

あの雲も越えてゆけ

遠くまだ遠くまで

 春は花が咲くのを晴るのせいだと思っていて、晴るは春のせいだと思っている。相思相愛。

 

 というわけで、すべての歌は恋愛ソングか失恋ソングか応援ソングに分類できる理論に基づけば、一見難解な曲もわりと簡単に理解できるようになる。ではなぜ『晴る』が難解に見えるのかといえば、あらゆる感情を情景に託しているからである。情景を巧みに描く名曲はあるが、これほど情景描写に徹しているのはかなり珍しい。たぶん。スピリットオブ俳句。その点を除けば、一般的な応援ソングと構成要素は変わらない。『晴る』の歌詞の魅力は、徹底的な自然の情景描写にあると言って間違いない。そこをベースにして、様々な言葉遊びが生まれている。

 前回も書いたように、応援ソングとは夢について歌ったものではなく、未来について歌ったものだ。だから、『晴る』にラブ要素がないと考える必要は全くない。上の解釈に従っても、フリーレンとヒンメルの関係を歌ったものだと考える余地は十分にある。

 

 『葬送のフリーレン』は失恋ソングアニメである。つまり、過去を思うことに面白ポイントを見出しているアニメだ。『スタンド・バイ・ミー』だとか『アメリカン・グラフィティ』だとか『ALWAYS三丁目の夕日』だとか『おもひでぽろぽろ』などのノスタルジー喚起型映画の系譜に連なる(『ALWAYS三丁目の夕日』は見たことがないのでもしかしたらぜんぜん違うかもしれない)。

 「過去を思い出す」という行為それ自体がエンターテイメントになりうる。人間は思い出話が大好きだし、歴史を学ぶことも大好きだ(機械的な暗記を強いられなければの話だが)。

 『葬送のフリーレン』が画期的なのは、思い出される過去がリアルなものである必要はないと看破したことにある。フリーレンが思い出す過去は、剣と魔法の世界のファンタジーで我々にとっては縁もゆかりもないお話である。だが、そんなことはどうでもいいのだ。考えてみれば、我々の多くはアメリカの1959年のオレゴン州を生きたことなど一瞬たりともない。それでも『スタンド・バイ・ミー』からはノスタルジーを感じてしまう。であれば、ファンタジー世界を舞台にした『スタンド・バイ・ミー』だって成立しうるに違いない。それを証明しているのが『葬送のフリーレン』なのだ。(回想が多用される点では『おもひでぽろぽろ』に近い。)

 特に第一クールにおいて、フリーレンたちの旅は、ヒンメルたちとの思い出を回想させるためにあるといってもよいほどだった。各話のクライマックスの前には、ほぼ必ず回想が挟まれている。ヒンメルたちの残像を辿る旅なのだからまさに失恋ソングさながらである。

 ところが、第二クール。一級魔法使い選抜試験に入ると、回想が一気に少なくなる。フリーレンは存在感を示しつつも、物語の焦点は明らかにフェルンをはじめとする若き魔法使いたちに当てられている。これまで過去を思い出すことに楽しみを見出していたアニメが、未来を描き始めたのだ。

 さあ、第二クールの主題歌『晴る』は、過去と未来のどちらを見ていたか。そう、未来である。第一クールの主題歌『勇者』は失恋ソング(過去志向の歌)にカテゴライズできる。『勇者』と『晴る』の趣の違いは、見事にアニメ本編の内容の変化を反映していたわけだ。若きアーティストたちの感性の鋭さが恐ろしい……。

 

 ちなみに、この記事で一番の歌詞を後ろから遡って解説したのもやはり『葬送のフリーレン』リスペクトによるものである。そういうことにしたい。

この世のほぼすべての歌は三種類に分類できる

 以前から思っていた。歌詞って似たもんばっかじゃねーか?と。私は歌詞で音楽を聴くことをしない派なので、あまり深く考えてこなかったが、不意に気になった。

 そこで調べてみることにした。ヒットソングは何を歌っているのかを。利用したのはApple Musicにあるプレイリスト「平成ヒッツ」。計135曲10時間24分の歌詞をスプレッドシートに打ち込んだ。

 そして分かったのはヒットソングには三種類しかないということだ。ほぼすべての歌は以下の3つのテーマに関するものだ。

  • 好き(ラブソング)
  • 好きだった(失恋ソング)
  • 夢(応援ソング)

 さらに、これらのテーマを伝えるための表現方法もほぼ共通している。説明していこう。

ラブソング

 ラブソングは基本的に愛がどれほど大きいかを語っている。愛の大きさをいかにして語るか、その挑戦の歴史が世で歌われるラブソングの数々だ。

 この歴史の中で頻出の技法は、数多くあるが、まず大きく二つに分類できる。

  • 「あなた」について語る
  • 「私」について語る

「あなた」について語る

 愛について語るなら、愛の対象である「あなた」について語るのは当然のことだ。語るべきはただ一つ。「あなた」がいかに価値ある存在かということ。

 そのたった一つのことを表現するために、次のようなレトリックが存在する。

  • 効能
  • 聖遺物
  • 特殊能力
  • 残像
  • 無条件
  • 比較
  • 希少性
  • 追究
  • 表現不可能
効能

 なにかの価値を伝える一番わかりやすい方法は、それがどれだけのメリットをもたらすかを語ることだろう。CMなどでも商品の機能を伝えるのは常套手段だ。

 というわけで、「あなた」がいかなる効能を持っているかを語るのがラブソングの第一歩だ。

嫌なことがあった日も君に会うと全部フッ飛んじゃうよ

『Automatic』宇多田ヒカル

初めて一途になれたよ

純恋歌湘南乃風

聖遺物

 聖人はあまりにもすごいので、聖人にまつわる物さえもすごいパワーを宿してしまう。「あなた」とて例外ではない。

アクセスしてみると 映るcomputer screenの中

チカチカしてる文字 (I don't know why)

手をあててみると I feel so warm

『Automatic』宇多田ヒカル

 ただし、この手法はあまり使われない。

特殊能力

 「あなた」はすごいので、他の人にはできない特殊能力を持っていることもある。

七回目のベルで 受話器を取った君

名前を言わなくても 声ですぐ分かってくれる

『Automatic』宇多田ヒカル

 この手法もあまり使われない。

残像

 「あなた」のパワーはすごいので、その影響はなかなか消えることがない。目を閉じても、そこにいなくても、「あなた」が見えてしまう。

瞳を閉じれば いつも君がいる

『BE MY BABY』吉川晃司

伝えきれぬ愛しさは

花になって 街に降って

どこにいても君を”ここ”に感じてる

『Love so sweet』SPIN

無条件

 たいていのものの価値は、一定の条件のもとに発動する。極端な話、あらゆるものは「私が存在する限りにおいて」価値を持ちうるのだ。

 だが、そうではないものが存在するとしたらどうだろうか。それは現実に存在するあらゆるものを超える価値があるといってよい。

君がすべてさ

『BE MY BABY』吉川晃司

となりで笑って いてくれるのならば

これ以上他に何も要らないよ

『fragile』持田香織

比較

 効能を語ることと同じくらい基本的な手法として、比較が存在する。

 一般的な形は次のようなものだろう。

目を閉じれば 億千の星 一番光るお前がいる

純恋歌湘南乃風

 これを応用して、比較対象を下げることもある。その際に、比較対象としてなぜかよく登場するのがだ。街の類語として人々や人混みなどもある。

せわしい街のカンジがいやだよ 君はいないから

LOVE PHANTOM稲葉浩志

 だが、街以上に頻出なのが、「あなたに出会うまでの時間」や「あなたに会えない時間」。

ちょうど風のない海のように退屈な日々だった

思えば花も色褪せていたよ 君に会うまでは

LOVE PHANTOM稲葉浩志

出逢えたことから全ては始まった

(中略)

会えない夜は決まって 寂しさおそう

『fragile』持田香織

追究

 価値あるものは追究したくなる。そのすべてを知りたいし、潜在している価値を引き出したいとも思う。ちょうど今の私のように。逆に、価値のないものを追究する人間はいないだろう。だから、追究したい欲望が生じることは「あなた」の価値を表すことになる。

たとえば どうにかして 君の中 ああ 入っていって

その瞳から僕をのぞいたら いろんなことちょっとはわかるかも

今夜月の見える丘に稲葉浩志

希少性

 宝石がなぜ価値があるかといえば希少性があるからだ。希少性は物の価値を高める。というわけで、「あなた」の希少性を語ることも非常に多い。

僕らの出逢いがもし偶然ならば? 運命ならば?

君に巡り会えた それって『奇跡』

『キセキ』GReeeeN

あっというまに日が暮れて さよならの時が来る

MajiでKoiする5秒前竹内まりや

この度はこんな私を選んでくれてどうもありがとう。

『トリセツ』西野カナ

表現不可能

 さて、これまで8つの手法で「あなた」の価値を語ってきたが、翻って考えてみると、これは「あなた」の価値を伝えることは容易ではないことを意味する。それだけ愛は深遠なるものだということだ。

 というわけで、それをそのまま言ってしまうという手法もよく存在する。

言葉が不器用すぎて 邪魔ばかりする

好きなのに伝わらない こんな想い切なくて

『fragile』持田香織

ああ アイラブユーの言葉じゃ

足りないからとキスして

マリーゴールドあいみょん

「私」について語る

 これまで述べてきたのは愛の対象について語る手法だが、逆に愛の主体、つまり「私」に比重を置いて語る手法も存在する。

 一応述べておくと、「あなた」は「私」に影響を与えるので、「あなた」を語ることは「私」を語ることでもある。その逆もまた然り。なので、この分類は私の独断と偏見によるものである。

 とはいえ、ある程度明確な分類の基準もある気がしている。というのも、ここで目指されるのは「あなたの価値」を訴えることではない。聞き手の共感を得ることにあるのだ。言い換えれば、恋愛あるある話といってもいいかもしれない。

 具体的には以下の12種類がある。

  • きっかけ
  • 蓄積
  • 衝動
  • 暴走
  • 不正直
  • 不安
  • 背伸び
  • 提案
  • 失敗の肯定
  • 決意
  • 許し
  • 願望
きっかけ

 まず恋の始まりについて語る。めったに使われない。

大親友の彼女の連れ おいしいパスタ作ったお前

家庭的な女がタイプの俺 一目惚れ

純恋歌湘南乃風

蓄積

 二人で長い時間を過ごしてきたねと述べる。これはわりとある。

君のくれた日々が積み重なり 過ぎ去った日々2人歩いた『軌跡』

『キセキ』GReeeeN

衝動

 「私」の衝動について語ることは最もメジャーな手法の一つだ。生じる衝動には様々なものがあるが、以下は頻出。具体的に言及しない場合も多い。

  • 一緒に踊りたい
  • 近づきたい
  • 手を握りたい
  • 抱きしめたい
  • 口づけをしたい
  • 一つになりたい
  • 歌っちゃう

 衝動を引き起こすのは「あなた」なのだから、これは「あなたの効能」なのでは?という気もするが、衝動が必ずしもポジティブな意味を持つとも限らないし、また、夏の海や夜の街などが衝動を掻き立てているパターンも多い。

YO! SAY,夏が 胸を刺激する

ナマ足 魅惑の マーメイド

HOT LIMIT井上秋緒

暴走

 衝動が行き過ぎると人は暴走する。時には相手に自分の願望を押し付けてしまうこともあるし、時には相手のすべてを分かった気になってしまうこともある。とにかく人と人がディープに付き合うからには傷つけ合わずにはいられない。それが恋愛なのだ。しらんけど。

愛しているのさ 狂おしいほど

『BE MY BABY』吉川晃司

ふたりでひとつになれちゃうことを

きもちいいと思ううちに

少しのズレも許せない

せこい人間になってたよ

LOVE PHANTOM稲葉浩志

ボーダーのTシャツの 裾からのぞくおヘソ

しかめ顔のママの背中 すり抜けてやって来た

MajiでKoiする5秒前竹内まりや

不正直

 照れくさかったり、関係を変えたくなかったりで、本当の気持ちを言えないことが往々にしてある。それが恋愛。しらんけど。

あいまいな態度が

まだ不安にさせるから

こんなにほれてることは

もう少し秘密にしておくよ

『Automatic』宇多田ヒカル

不安

 「あなた」の価値があまりに高すぎると、失いたくなくて怖くなったりする。あるいは、自分がそれに見合うのかどうか不安を覚えることがある。付き合う前ならそもそも眼中に入っているのかなという不安もある。それが恋愛。しらんけど。

ROSIER 愛したキミには ROSIER 近づけない

ROSIER 抱きしめられない ROSIER 愛しすぎて

『ROSIER』LUNA SEA

君から見た僕はきっと ただの友達の友達

『高嶺の花子さん』清水依与吏

背伸び

 「あなた」に見合う人間になるために、少し背伸びしてしまうこともある。

渋谷はちょっと苦手 初めての待ち合わせ

MajiでKoiする5秒前竹内まりや

タイトなジーンズにねじ込む

わたしという戦うボディ

『VALENTI』康珍化

失敗の肯定

 かように恋愛には様々な落とし穴がある。それを嘆くこともできるが、ポジティブに捉えることもできる。失敗は成功のもとだ。

二人の遠回りさえ 一片の人生

『HOWEVER』TAKURO

決意

 そうした失敗の果てに、「あなた」を幸せにしてみせるという決意をする。これには改心が伴うことも多い。もちろん決意の種類はそれだけじゃなくて、「あなたを絶対にものにする」だとか色々ある。ともかく気概を見せることが重要だ。

抱きしめて 抱きしめて 離さない

マリーゴールドあいみょん

戦闘の準備は ぬかりない 退がらない その手を離さない

『決戦は金曜日』吉田美和

許し

 カップルの場合、決意の前提として、相手がリスタートを許してくれることが必要になる。だから、これまでの罪を赦してくれるように懇願することもたまにある。

 また、逆の立場から、無情な相手に対してNoを突きつけられず許してしまうパターンもある。好きな人が他の人といちゃついているのを嫉妬深く睨んでいるような歌(『女々しくて』とか)もある種の許しかもしれない。

俺をゆるしてよ

そしてもう一度

『BE MY BABY』吉川晃司

提案

 大好きな人とは一緒に素敵なことをしたいものだ。それを相手に提案するのは恋愛においては必ず現れる一幕。

手をつないだら 行ってみよう

燃えるような月の輝く丘に

今夜月の見える丘に稲葉浩志

願望

 相手のことを好きだと、様々なことを願う。「君が僕のことを好きだと思っていればいいのになあ」とか。ときに願いは非現実的なものであったりもする。たとえば、「二人が永遠に一緒にいられたらいいのに」とか、さらに発展させて「生まれ変わってもまた結婚しよう」とか。

笑顔咲ク 君とつながってたい

さくらんぼ』愛

なにかの手違いで

好きになってくれないかな

『HAPPY BIRTHDAY』清水依与吏

失恋ソング

 失恋ソングは、恋愛ソングの裏だ。だから、構成要素はラブソングと同じ。ただ、それをネガティブに捉えたり、裏返して使えばいいだけ。

 たとえば効能なら、「あなたがいるから笑顔になれる」の裏は「あなたがいなくなったから笑えなくなった」である。

 残像だと、「あなたがいないときも、いつもあなたのことを思っている」なら、「あなたはもういないのに、いつもあなたのことを思ってしまう」とネガティブに捉える。これを発展させると、「過ぎてゆく季節に置き去りにされてしまう」みたいなフレーズが生まれる。ちなみに、こうしたフレーズでは、なぜか時間ではなく季節という単語が好まれる傾向にある。より叙情的だからだろうか。

 無条件だと、「あなたさえいればいい」なら「僕にはもうなにもない」でいい。

 比較だと、「あなたに出会うまで世界は灰色だった」は「あなたと別れてから世界は灰色になった」になる。

 希少性だと、「あなたと出会えたのは奇跡」なら「こんな恋はもう二度とできない」になる。

 追究だと、「あなたのことを分かりたい」なら「結局分からなかったね」か「お互い分かりすぎちゃったね」になる。

 表現不可能だと、「この気持ち言葉にできない」なら「私の気持ち伝わらなかった」になる。

 「私」について語る手法に関しては、そのまま使えばいいかもしれない。ただ結末が破滅に向かうだけ。

応援ソング

 打って変わって、応援ソングでは恋愛を離れて夢について歌う。

 まず前提として、夢とは叶えられたら嬉しいものであり、かつ、叶えるのが非常に困難なものだ。

 したがって、応援ソングの歌詞は大きく「実現に関するもの」と「困難に関するもの」に二分できる。

実現に関するもの

 夢の実現に関するものは、次の7つの手法が存在する。

  1. 行動
  2. ビジョン
  3. 原体験
  4. 衝動
  5. 実現可能性
  6. チャンス
  7. 仲間
行動

 夢の実現に必要なのが行動だ。といっても歌の世界では具体的なことを述べる必要はない。「進め」「走り出そう」「扉を開けよう」「冒険しよう」などなどふわっとしたことを述べておけばOKだ。

追いかけて 遥かな夢を

『負けないで』坂井泉水

ビジョン

 だがそもそもなんのために行動すればいいのか。そこで大事なのがビジョンになる。とはいえやはり歌の世界では具体的なビジョンは必要ない。「輝きたい」「優しい人になりたい」とかそんなもんでいい。あるいは、夢を語るという行為もある意味ではビジョンを描いていることになるだろう。

そしていつか 誰かを愛し

その人を守れる強さを

自分の力に変えて行けるように

『どんなときも。』槇原敬之

原体験

 そのようなビジョンはどこから生まれたのか? おそらくなんらかの原体験がある。それを思い出すことが歌の世界では推奨されがちだ。

 ちなみに、原体験とビジョンは必ずしもセットで運用する必要はない。原体験に触れれば、それはもうビジョンについて歌っているも同然だからだ。

あの頃の僕らはきっと全力で少年だった

全力少年スキマスイッチ

衝動

 そうした原体験に端を発する衝動が、夢を叶えるための原動力になる。衝動それ自体を歌ってもいいし、胸の奥底にある自分の衝動に耳を傾けろみたいなメッセージを発してもいい。

呼んでいる 胸のどこか奥で

いつも心躍る 夢を見たい

『いつも何度でも』木村弓

実現可能性

 しかし、いくら衝動があっても、夢が実現する見込みがなければ二の足を踏んでしまうものだ。というわけで、応援ソングでは、可能性があることを訴える。

果てしなく 道は続いて見えるけれど

この両手は 光を抱ける

『いつも何度でも』木村弓

チャンス

 「実現する可能性はある? こんなに努力しているのに叶わないじゃないか!」という苦情が予想されるので、「今は運が向いていないだけ。いつかチャンスが転がり込んでくるよ」ということを歌う。

欲しいものは いつだって 不意に襲う偶然

EZ DO DANCE小室哲哉

仲間

 夢を叶えるため、仲間の存在が支えてくれる場合もある。なんなら歌い手自身がその仲間である場合もある。

行くあてが 同じ仲間と 全ての嘘 脱ぎさる

EZ DO DANCE小室哲哉

困難に関するもの

 夢の実現には大きな困難が伴う。ポジティブなことばかり言っていると非現実的な歌になってしまうので、厳しいことも述べる必要がある。

 困難については次の8つの手法で歌われがちだ。

  1. 未知の領域
  2. 無知蒙昧
  3. 苦難
  4. 臥薪嘗胆
  5. 自分軸
  6. 孤独
  7. 比較
  8. 人生の短さ
未知の領域

 夢が叶った先に何が待っているのか。それは未知の領域だ。それは恐怖を生み出すと同時に、胸を高鳴らせるものでもある。

その先に何があるのかは分からないけど

『There will be love there ー愛のある場所ー』川瀬智子

無知蒙昧

 夢は未知の領域ゆえに、どうすればそこにたどり着けるのかも分からない。だから、人々は迷う。見当違いの場所を見ていることもあるだろうし、自分の実力不足を感じることもある。

地上にある星を誰も覚えていない

人は空ばかり見てる

つばめよ高い空から教えてよ 地上の星

つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう

地上の星中島みゆき

苦難

 人々は無知蒙昧ゆえにその行く先には苦難が待ち受けている。あらかじめそれを予言しておき覚悟を促す。

 ただ予言するだけではなく、その苦難こそが夢に近づくために必要なのだと助言するパターンもかなり多い。

どんなときも どんなときも

迷い探し続ける日々が

答えになること 僕は知ってるから

『どんなときも。』槇原敬之

臥薪嘗胆

 苦難に挫けたら夢は叶わない。だから応援ソングでは苦難に耐えるよう訴える。

消えたいくらい辛い気持ち

抱えていても

鏡の前 笑ってみる

まだ平気みたいだよ

『どんなときも。』槇原敬之

自分軸

 苦難として想定されるものの一つに、妨害を試みる他者が存在する。そうした他者は珍しいものではなく、むしろ多いぐらいだ。となると、他者=世間=常識と考えることができる。夢を追うことは、社会の常識に背くことなのだ。(少なくとも歌の世界では。)

 だから、応援ソングでは社会のルールを無視すること、自分本位になること、これをひっくるめて自分を軸として生きるよう歌われる。

どんなときも どんなときも

僕が僕らしくあるために

「好きなものは好き!」と

言える気持ち 抱きしめてたい

『どんなときも。』槇原敬之

孤独

 社会のルールを無視したり、他人を傷つけたりしてでも夢に向かえば、孤独にならざるを得ない。夢を追うことは孤独になることなのだ。

風の中のすばる

砂の中の銀河

みんな何処へ行った 見送られることもなく

地上の星中島みゆき

比較

 では、もし自分軸を持たず、苦難に打ち負けたらどうなるのか? それを想像させて、そんなのは嫌ですよね?と説得する手法。それが比較だ。

 あるいは、今の自分がそういう人生を歩んでいるパターンもある。これもまた夢を追う楽しさと対比させてるわけだから比較と言える。

”昔は良かったね”と

いつも口にしながら

生きていくのは

本当に嫌だから

『どんなときも。』槇原敬之

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう

アポロ11号は月に行ったっていうのに

『アポロ』ハルイチ

人生の短さ

 意外にもわりと少ないパターンとして、人生の短さを引き合いに出す手法もある。

生まれて死ぬまであっちゅー間

『ガッツだぜ!!』トータス松本

衝動という統一原理

 ここまでは分かりやすく「ラブソング」「失恋ソング」「応援ソング」に分類して考えたが、これらには共通点がある。

 ラブソングと失恋ソングは、恋愛が終わっているか否かの差しかないから構成要素が同じだ。では、応援ソングとラブソングはどうなのか。テーマが愛か夢かという違いは大きいように見える。だが、衝動という構成要素は同じだった。そして、応援ソングにおいて重要なことは、夢は叶えると嬉しいものであり、かつ、叶えるのは難しいものであるということだった。これは恋愛にも同じことが言えないだろうか。もてない人間にとって恋愛は夢になりうる。

 結局のところ、恋愛ソングも失恋ソングも応援ソングも、衝動を掻き立てる何かについて語っている。恋愛ソングにおいてはそれが特定されていて、失恋ソングにおいてはそれが失われている。応援ソングにおいては、それがぼんやりしている。違いはそれだけだ。

 さらに単純化していえば、それぞれの歌は見ている時間が違うにすぎない。過去を見ているのが失恋ソング、今を見ているのがラブソング、未来を見ているのが応援ソングというわけ。

 ということは、一つの歌の中で異なるテーマを同時に歌うことも可能だ。たとえば、『きよしのズンドコ節』はテーマが変遷するし、『天体観測』は失恋ソングであると同時に応援ソングでもある。

理念型は鋳型ではなく座標である

 上に書いたように、ほぼすべての歌はラブソング・失恋ソング・応援ソングのいずれかに分類できる。そこで使われている技法も、数は多いが、限られたものしかない。

 一見意味が分からない歌も、これらの枠組みに当てはめて考えていくと、何が言いたいのかが見えてくるはずだ。たとえば『丸の内サディスティック』は応援ソング(夢について語っている歌)だと考えると、解説サイトを見なくてもおおよその言いたいことは分かってくる。ただムードのある言葉を羅列しているように見える、その裏には強固なロジックがある。

 さらに、なんだかすごい歌が、他の歌とどう違うのか、何がすごいのかも見えてくる。たとえば松本隆作詞の『星間飛行』。「水面が揺らぐ 風の輪が広がる 触れ合った指先の 青い電流」は、「あなた」と出会って生じた衝動について語っている。その特徴は美しい情景、それも自然物を用いた情景にある。この歌は全パート語りたいくらいだが割愛して、その後、「濃紺の星空に 私たち花火みたい」というくだりが出てくる。ここもやはり自然物なのだが、注目したいのはその高低差。水面から始まり星空に帰結する。縦の空間の広がりが凄まじい。しかも、「濃紺の星空」という表現は、他の作詞家がよく用いる「街」、比較対象としての群衆に相当するものだと思われる。こうした自然物が描き出す情景の美しさが『星間飛行』の特徴の一つであることは間違いない。ついでにいえば、「私たち花火みたい」は、希少性の表現でもある。

 もちろん、いずれにも当てはまらないような歌があるかもしれない。その場合には、無理に三類型のいずれかに押し込める必要はなくて、その歌はテーマに独自性があると評価すればよい。

ヒットソングに限ったことではない

 結果的に、ヒットソングの歌詞は予想どおり、いや予想以上に、同じテーマについて語っていて、語り口さえも似たようなものばかりだった。

 だが、だからこそ歌詞の多様性に驚かされる。上に書いたことはあくまで抽象的な枠組みにすぎず、それを具体的にどのような言葉で表現するかには無限の可能性がある。テンプレートみたいな歌詞で勝負する直球派のアーティストは少なくないが、それでも同じ歌詞の歌が二つ存在することはない。ひねりを利かせて独特の歌詞を生み出す技巧派が紡ぎ出す言葉は、歌詞の世界の奥深さを教えてくれる。

 実は、歌の世界以外も、たとえば小説や漫画や映画も同じなのではないかという仮説が自分の中に芽生えている。あらゆる芸術作品は、ラブソングか失恋ソングか応援ソングのいずれかに分類できるのではないか。今後も探求を続けていきたい。(そう、この記事もまた歌に対するラブソングなのだ。)