たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

こちとらいつでもFIREする構えよ

今週のお題「卒業したいもの」

 

 ふと気づくと、FIRE(Financial Independence&Retire Early)達成のための目標額が貯まっていた。

 ネットの記事を読んでいると、なぜかFIREするのには一億円が必要であるかのように書かれていることが多いが、あれは火よりも真っ赤な嘘である。FIREの基礎には4%ルールというものがあって、毎年の生活費を資産の4%以内に抑えれば資産が30年後になっても尽きていない確率が極めて高いというアメリカにおける研究結果を参考にしている。これを言い換えれば、「自分の生活費の25倍の資産があれば仕事辞めちゃってもいいんじゃね?」ということになるというわけだ。

 そして、『FIRE 最強のリタイア術ーー最速でお金から自由になれる究極メソッド』という本では、さらに現金クッションなるもので安全を取るように提唱している(私の記憶では)。

 ともかくそういうわけで私は私なりに考えて目標額を設定していたわけであるが、予定ではもう2,3年後に達成するはずだった。それが幸か不幸か、ここ最近のブラック企業生活*1のおかげかはたまた株高のおかげか、想定外のスピードで目標達成を果たしてしまったという次第である。

 

 というわけで、私がさっさと卒業したいのは会社である。

 もう十分な金はある(しかも退職金という名のボーナス、いや、給与の後払いもある。ますます私の将来は安泰である)のだからさっさとやめてしまえばいいのだが、そうはいってもなんだかんだで愛着はある。もちろん毎年毎年仲の良い人々が辞めていくのを見送る寂しさも味わっているが、彼ら彼女らは転職をするのが常であって「プー太郎になります」などというものはいない。私が先陣を切ることはやぶさかではないのだが、上司や同僚、家族は心配するに違いない。心配するだけならいいが、やかましく口出ししてくるに違いない。それは非常に煩わしい。なんかこう、周囲の人間を黙らせる素敵ビジョンが欲しい。

 そう、私には退職後のビジョン(=ジワタネホ)がない。だから、毎晩毎晩(土日除く。)「なんで睡眠時間(=命)を削って働いているんだ?」と思いながら生きているわけだが、一歩踏み出す気にもなれない。ずっと一日中家に引きこもって映画(∋『ショーシャンクの空に』)を見続ける生活よりは、今の生活(=囚人生活)のほうがいくぶんかマシである可能性がゼロではない。いや、限りなくゼロに近いかもしれない。。。

 というわけで、もし仕事がなかったらやりたいことリストを作成しているわけだが、今のところ

・新聞をじっくり読む

・平日の舞台公演とかを観に行く

・オフシーズンに旅行する

しかない。これがいい感じに貯まったら、あるいは会社のブラック度が耐えられないレベルに達したら、それか責任あるポジションにされそうな年齢になったら、はたまた良い転職先でも見つかったら、または元手ゼロで始められる良い感じのビジネスアイデアを思いついたら、晴れて卒業とあいなるのかもしれない。これだけの地雷がありながら私が雇用され続けてくれているのは会社にとって奇跡だ。感謝せえよ? 仏に。(私はどちらかといえば仏教が好きなのである。)

 

 ……ということを考えていったときに、はたと気付いた。これからの私が会社で働くことで得るものは遊ぶ金以外のなにものでもない。これからは給与を全部浪費してもいいんだ! 値段を理由に何かを諦める必要がない。なんたって、どんだけ安く見積もっても年間百万を超える遊ぶ金が入ってくるのだから。

「フッフッフッ……これからはステーキだって蟹だってなんだって買えるぞ……」

 そう呟きながら、一週間の食材の買い出しに行った。

 気付けば、私は一番お買い得な野菜を探していた。

「大根一本180円かあ……ちと高いなぁ……」(私は大根の底値は100円だと知っているのだ。)

などと考えている。「贅沢していいんだぞ」とどれだけ働きかけても、抗えない。グラム200円を超える牛肉なんて、とうてい買う気になれない。心が拒んでいる。「べつに牛肉が豚肉や鶏肉より美味しいわけじゃねーしなあ……」とどうしても考えてしまう。「蟹は食うのが大変すぎる」と考えてしまう。

 そうか……私は贅沢よりもお金の節約が好きなのか……。

 かろうじて、納豆の一番高いやつを買った。いつもの3パック56円ぐらいのやつに対して、2パック170円ぐらい。たか……たかすぎる……。でも114円しか贅沢してない。納豆は美味しい。作るのも後片付けも簡単。納豆は神。いや、仏。毘盧遮那仏螺髪。(「どちらかといえば仏教が好き」と書いた手前、神という言葉には敏感にならざるを得ないのである。)

*1:2月は日数も少なく休日も多くしかもコロナで数日休んでいたのに時間外労働が50時間を超えていた。異常だ。