問
子会社(当社の持株割合80%)から土地(子会社の帳簿価額1000万円)を1500万円で購入した。連結財務諸表を作成するに当たり、親子会社間における土地の売買取引に係る連結修正仕訳をして。
親子関係にある会社の連結会計の問題です。なんかこんな計算をしていると大きな会社で働いている気分になってちょっと嬉しいような気がするのは自分だけでしょうか(むなしい)。
一方で、正解を導き出さなきゃならないとなるとなかなか難しくて陰鬱な気分になります。
まず、雰囲気的に
- 親子の決算書は一体となる(資産等の数字は合計される)
- 親子間の取引はないものとして考える
- 持株割合に応じてなんらかの処理をした方がよさそうな気もする
という気がします。実際そうなのです。2と3のために行う仕訳を修正仕訳といいます。この修正仕訳がなかなか厄介です。
手始めに、子会社を取得したときに必要な修正仕訳を考えてみます。
たとえば、親子の貸借対照表がそれぞれ以下のようであったとします。
親
資産:500(子会社株式50)
負債:200
資本金:100
資本準備金:100
利益剰余金:100
子
資産:50
負債:20
資本金:10
資本準備金:10
利益剰余金:10
合算すると以下のようになります。
資産:550(子会社株式50)
負債:220
資本金:110
資本準備金:110
利益剰余金:110
一見問題なさそうですが、よくよく考えてみるとこれはなんだか変です。子会社株式は子会社の純資産と同一のものであるはず。資産の部と純資産の部に同じものがあることになります。これは空虚な数字です。
極端な状況を考えてみるとより分かりやすいです。たとえば以下のバランスシートを持つA社とB社があります。
A(現金:100円 資本金:100円)
B(現金:100円 資本金:100円)
A社がB社の株式100%をCくんから100円で取得すると以下のようになります。
A(子会社株式:100円 資本金:100円)
B(現金:100円 資本金:100円)
これを連結すると
子会社株式:100円 資本金:200円
現金:100円
となります。A社はB社という貯金箱を現金と交換しただけなのに、純資産の額が増えています。100円でキャベツを買うと純資産が増えるなんてことがあるでしょうか? ありません。であれば、株式を買うと純資産が増えるなんてこともあってはいけません。さらにいえば、もしA社B社ともに唯一の株主がCくんだとしたら、Cくんは最終的に100円の出資しかせずに200円の資本金を持つ会社を作り出すことに成功したということになります。これは明らかに変です。
そういうわけかは分かりませんが、子会社株式と子会社の純資産の部は相殺させる必要があります。
よって、以下の修正仕訳を行います。なお、子会社の純資産を超過する分はのれんとして資産に計上します。
(借方)資本金 10 (貸方)子会社株式 50
(借方)資本準備金 10
(借方)利益剰余金 10
(借方)のれん 20
最終的に以下のような形になります。
資産:520(のれん20)
負債:220
資本金:100
資本準備金:100
利益剰余金:100
以上は、親会社が子会社の株式を100%持っている場合です。もし持分割合が100%じゃない場合、持分割合を除く部分を非支配株主持分として計上します。(資本金などのまま計上しない点については、純資産の部は親会社の分を明確にしたいということなのかなと思います。)
上の例で、持分割合が80%の場合、子会社株式50が表すのは子会社の純資産の80%になるので、持分相当の修正仕訳は
(借方)資本金 8 (貸方)子会社株式 50
(借方)資本準備金 8
(借方)利益剰余金 8
(借方)のれん 26
持ち分以外の部分についての修正仕訳は
(借方)資本金 2 (貸方)非支配株主持分 6
(借方)資本準備金 2
(借方)利益剰余金 2
となるので、まとめると
(借方)資本金 10 (貸方)子会社株式 50
(借方)資本準備金 10 (貸方)非支配株主持分 6
(借方)利益剰余金 10
(借方)のれん 26
となります。
子会社の取得だけでけっこう長くなってしまいました。
なにをやるかだけ書けば、
- 子会社株式&子会社の純資産は帳簿に載せない。
- 子会社株式と純資産(持分相当)の差額はのれんとして計上
- 子会社純資産の非持分相当の部分は非支配株主持分として計上
の三つだけです。