たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

映画感想:『キル・ビル』と『シンデレラ』

 『パルプ・フィクション』が面白かったので、かの有名な『キル・ビル』を観た。

 ストーリーはシンプルだ。結婚式(の予行演習)の最中に殺し屋に襲われた元殺し屋の女が、犯人たちに復讐するという話。

 面白ポイントは二つ。

  • カタコトの日本語を話す金髪美女とチャンバラ&カンフーの融合
  • 時空移動
  • BGM

 

 主人公を演じるのは『パルプ・フィクション』でボスの妻役だったユマ・サーマン。黒髪ボブだった前作に対して、今回はちょい長めの金髪。個人的には黒髪ボブの方が断然良かったが、今回はカタコトの日本語を話す。これも悪くないかも。

 ユマ・サーマンが復讐を果たすべき敵は5人。

  • オーレン石井
  • ヴァニータ・グリーン
  • バド
  • エル・ドライバー
  • ビル

 こいつらを上から順に一人ずつ倒していく。

 のだが、最初に映されるのはヴァニータ・グリーン戦。その後に、結婚式の予行演習でヘッドショットを食らったユマが4年ぶりに復活する場面へとジャンプする。『パルプ・フィクション』でもやっていた時空移動が今作でも発動する。

 その後、オーレン石井の過去がプロダクションIGによるアニメで描かれる。彼女もまた両親をヤクザに殺された復讐で日本のヤクザのトップに立った。この映画のテーマは復讐だ。

 「やられたらやり返す!」で主人公が動く復讐ものは分かりやすく感情移入がしやすい。それに必ず過去の因縁が絡んでくるから、物語に厚みが生まれる。『キル・ビル』の面白さの一つは徐々に明らかにされていく過去にある。時空移動をするのもその一環だ。

 その後、ユマ・サーマンが沖縄で千葉真一に刀をもらうくだりがあり、オーレン石井とのバトルへと突入していく。千葉真一はビルの師匠だったようで、ここにもやはり過去の因縁がある。

 なぜヴァニータ・グリーン戦を先に描いたかといえば、面白みが薄いからだ。敵に復讐するための武器を得て、それで初めて戦う時、物語は一つのピークを迎える。『キル・ビルVol.1』はこれを映画のクライマックスに置いている。だからわざわざオーレン石井の過去を素晴らしいアニメーションにしてまで挿入したというわけ。

 そう、『キル・ビル』は二部作なのである。

 『キル・ビルVol.2』はバドとのバトルから始まる。が、ユマ・サーマンはあっけなく敗北する。ここで彼女の第二の技が発動する――。

 またしても過去が描かれる。そこに登場するのはビル。『Vol.1』では一切姿を現さなかった彼がついにお披露目される。恋人同士であったユマとビルの思い出の一幕。

 そしてユマはビルの紹介でパイ・メイのもとに弟子入りをする。不幸な美しい暗殺者には師匠がいるものなのである。師匠に教わった武術を使い、生き埋めにされたユマ・サーマンは地中から飛び出る。ここもまたある種の復活と言ってよいかもしれない。

 復讐を継続するためバドのもとへと向かうと、彼はすでに死んでいた。代わりにいたのはエル・ドライバーだ。エル・ドライバーは隻眼の金髪美女だが、失われた片眼はパイ・メイが奪ったという(なんてクソジジイなんだ!)。お返しにパイ・メイを毒殺してやったと宣うエル・ドライバー。ここでまた復讐スイッチが発動する。師匠を殺された怒りは、ユマ・サーマンにエル・ドライバーのもう片方の眼を抉り取らせた。踏み潰される眼球。勝負ありだ。

 その後、ビルと対峙する。ユマ・サーマンがなぜビルの元を去ったのかが描かれる。愛し合っていた二人だが戦わねばならない。ビルはそういう男だから。ラストバトルはあっけなく五点掌爆心拳で決する。結局、刀は別にいらなかったのかもしれない。

 

 『シンデレラ』は1950年の映画。

 私はやはり金髪より黒髪の方が好きらしい。シンデレラより白雪姫派である。

 それはともかく、『白雪姫』にはない『シンデレラ』の特徴としては変身がある。少女向けアニメではお馴染みの要素だ。シンデレラは変身によって王子の心を掴むが、彼女が真に価値あるもの(結婚と自由)を掴むのは、魔法が解けてからだ。彼女は自分の力で問題を解決し、本当の意味での変身を果たすのだ。これも魔法少女ものの鉄板の展開だったりする。元祖魔法少女は実は『シンデレラ』なのかもしれない。(『シンデレラ』における本当の変身とは玉の輿に乗ることだが、結婚が手早く権力を獲得するための手段であることは注目に値する。)

 ディズニーは『シンデレラ』の物語をより魅力的なものにするため、ネズミたちとの友情を描いた。シンデレラを城へ連れて行くのもネズミたち。閉じ込められたシンデレラを解放するのもネズミたち。

 なんだか知らないけどあっさりと復活してしまった『白雪姫』よりもサスペンスがあって、物語としては『シンデレラ』の方が面白いと思う人が多いのではなかろうか。

 ところで、『白雪姫』でも姫は動物たちとコミュニケーションを取っていたが、ここにはヒロインの無垢性を描きたいということ以外に、やはりアニメでしか描けないものを描きたいという動機があったのであろう。その精神が『トイ・ストーリー』にも受け継がれているような気がする。