たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

アメリカ映画ベスト100制覇への道:その99 トイ・ストーリー

 保安官のおもちゃが宇宙飛行士のおもちゃにリーダーの座を奪われる!

 

 『トイ・ストーリー』は1995年の映画。監督はジョン・ラセター。脚本はジョス・ウィードン、アンドリュー・スタントンジョエル・コーエンアレック・ソコロウ。世界初のフルCGアニメーション作品。アカデミー特別業績賞を受賞。

 

 西部劇の保安官を模した人形であるウッディは、持ち主のアンディに寵愛され、家のおもちゃたちのリーダー的立場に立っている。

 ある日、アンディに新しいおもちゃがプレゼントされる。宇宙飛行士のヒーローであるバズ・ライトイヤーだ。アンディはたちまちバズの虜になり、ウッディの地位は下がっていく。西部劇が衰退し、SF映画が隆盛する、映画の歴史になぞらえることもできる。

 というわけで、既得権益を侵害されつつあるウッディとバズの政治闘争が『トイ・ストーリー』の軸になっていく。この場合に物語の方向性は次の三つに絞られる。

 『トイ・ストーリー』のテーマは西部劇ではなくおもちゃであって、かつ、子供向けアニメということもあり三つ目のパターンを採用している。

 ウッディとバズは、斉藤大佐とニコルソン大佐のように対立しながらも、共通の困難に取り組むうちに仲を深めていく。

 

 『トイ・ストーリー』で最も優れているのはラストシーンだろう。シドの家から逃れたウッディとバズが、引っ越しの車を追う。次のような流れで展開していく。

  1. 二人は追いつくが、ウッディはかろうじて紐に掴まっているだけ。振り落とされてしまうかもしれない。
  2. シドの犬がウッディを襲う。助けたバズが取り残されてしまう。
  3. ラジコンカーを使い、バズを支援する。
  4. 誤解されているウッディは車から落とされてしまう。
  5. 交差点で轢かれそうになるバズ。犬は脱落する。
  6. 誤解が解けて、仲間たちがウッディとバズを助けようとする。
  7. ラジコンの電池が切れる。
  8. ロケットを使おうと思い付く。
  9. マッチの火が消える。
  10. バズのヘルメットを使って火をつける。
  11. バズが飛ぶ。

 10分にも満たない中にこれだけの展開が詰め込まれている。

 しかも、ただ起伏が細かくあるだけじゃなくて、起伏の激しさもすごい。7と9の絶望感たるや。特に9がすごい。普通なら、すでに登場人物を絶望の淵に立たせているし、マッチとロケットという伏線を回収できるわけだから、「マッチで火を付けてハッピーエンド」としたって十分なのだ。しかし、ジョン・ラセターはその先を行く。ここにすごみがある。

 さらにダメ押しの一手として、ラストを「バズが飛んだ」で締める。ウッディはバズを称え、バズは誇りを取り戻す。二人の友情を象徴するアクションをクライマックスに持ってくる。

 完璧すぎる。