たぬきのためふんば

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アメリカ映画ベスト100制覇への道:その56 レイダース/失われたアーク《聖櫃》

 アメリカ人の考古学者がナチスとお宝の争奪戦を繰り広げます。

 

 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』は1981年の映画。監督はスティーブン・スピルバーグ、脚本はローレンス・カスダン。主演はハリソン・フォード。音楽はジョン・ウィリアムズ。原案・製作にジョージ・ルーカスが入っている。

 

 おなじみインディ・ジョーンズシリーズの第一弾。

 話の筋らしい筋はない。考古学者インディアナ・ジョーンズがナチスとお宝を奪い合うというストーリーラインは、一連のアクションシーンを意味あるものに見せるためのものでしかない……というと過言だろうか。(ユダヤ人であるスピルバーグナチスを敵対勢力に持ってきた意味とか、ナチスアメリカ人が奪い合うものとはいったい何をイメージしているかとか、深読みしようと思えばできるが、それがこの映画のおもしろポイントかというとたぶん違う。)

 アクションシーンは大きく分けて以下に大別されると思われる。

  1. ダンジョンin南米
  2. 屋内戦inネパール
  3. 市街地戦inカイロ
  4. ダンジョンinカイロ
  5. カーアクションinカイロ
  6. クレタ島

 インディアナ・ジョーンズはそれぞれのシーンで勝利を収めながら、最後にはお宝とヒロインを敵に持っていかれるという流れ。ここにドラマチックな情緒の波を見出すことは難しい。

 アクション映画の本質はアクションを見せることにあり、ストーリーはいくつかのアクションを繋ぐものでしかない。もしそうなのだとすれば、アクション映画のストーリーについて語るのは、ハンバーグのパン粉について語るようなものなのかもしれない。以前『グレイマン』を観たときに、その感想を書くのに大変難儀したが、ストーリーについて語ろうとしたのが原因だったのかもしれない。

 

 『マルタの鷹』と同じくお宝争奪戦の映画だが、フィルム・ノワールの暗さは皆無。現代的なアメリカの都会を離れて、欧米からすれば未開に見える国外を舞台にしていることで、非日常的な爽快感が生まれている。

 にも関わらず、意外にも(?)グロテスクなシーンが多い。インディアナ・ジョーンズが求める宝は旧約聖書に記された由緒正しきお宝である。古代の神話などはけっこうグロ要素が多めなイメージがあるので、血生臭さこそが神秘性を演出するのかもしれない。

 それはそれとして、せっかくの海外ロケなので、空間は広く使いたい。というわけで、必然的に様々な乗り物が出てきたりするし、そうなればカーアクションはほぼマストと言える。

 そして、世界を股にかけた戦いにふさわしい敵は国家だ。国家を相手に少人数で戦う。

 『グレイマン』『RRR』と、私が観た最近のアクション大作もだいたいこの要素を備えている(『インディ・ジョーンズ』シリーズが初見であることからも分かるかもしれないが、私はアクション映画はあまり観ないので引き出しが少ない……。ちなみに『007』シリーズも観たことがない。)。ルーツはここにあるのかもしれない。(ルーツと言っても、スピルバーグは『007』的なものを作りたかったみたいだし、『ルパン三世 カリオストロの城』はこの映画よりも前に作られていながら上に書いたような要素を全て備えていることを考えると、元祖というわけではなさそうだ。それまでにあったアクション映画の集大成を作りあげて頂点に到達してしまったのがこの作品という感じかな?)