『ロード・オブ・ザ・リング』は2001年の映画。アカデミー賞では撮影賞、メイクアップ賞、作曲賞、視覚効果賞の4冠に輝いた。
『ロード・オブ・ザ・リング』はお宝争奪バトル映画だ。お宝争奪バトルには三つのパターンがある。初期状態でお宝が誰の手にあるかによって分類できる。
- 誰の手にもない。
- 敵の手にある。
- 味方の手にある。
たとえば、『黄金』、『もののけ姫』、『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』は1だ。『ルパン三世 カリオストロの城』は2。『マルタの鷹』、『新世紀エヴァンゲリオン』は3だろう。『天空の城ラピュタ』は3から1へ移行する。
共通するポイントは、お宝が闘争を呼ぶこと。それぞれで異なるのは、主人公の性格だ。2なら略奪者、3なら守護者、1はどちらにもなりうる(ただし、これは表面上の話。面白い物語には皮肉があるのだから、本質は逆かもしれない)。戦争ではないバトルを描きたいならお宝を用意するのが手っ取り早いし、お宝を用意してあったら作者はバトルを描きたいんだなと思っておいて間違いないかもしれない。
『ロード・オブ・ザ・リング』は3に当たる。ひょんなことから指輪を受け継いだ主人公フロド・バギンズはなんかとてつもない敵に狙われる羽目になり、逃避行に至る。借金背負って夜逃げするのとストーリー構造としてはほぼ同じだが、主人公には世界を守る使命が背負わさることになる。
こうしてフロドの旅が始まる。結局のところ、主人公が(我々から見て)異世界を冒険するのがこの物語のミソであろうから、全体としてのノリはロードムービーに近い。旅の中でこれまで交わらなかったような人々と出会い、別れ、様々な経験をする。経験を通して彼らはなんらかの学びを得る。
ファンタジー映画だから非現実的な風景が堪能できたり、この世には存在しない生き物に襲われたりするのが特徴だ。ファンタジーの肝はなんたって世界を一から創造できることであるし、作者としてはせっかく創造した世界はなるべく色々な部分を見せたい。そういうわけでロードムービー方式が採用されたに違いない。ファンタジーと旅は密接に結びついている。
物語はだいたい以下のような構成になっていた記憶。
- 歴史
- 誕生パーティ 旅するおじさんとの再会、父との別れ
- 旅立ちwithどこか抜けてるお供たち
- 酒場 怪しい男が実はいいヤツ
- 致命傷を負い、治療のためにエルフのもとへ
- 仲間が増え、指輪を適切に廃棄処分するという目的地を得る
- 厳しい登山
- ダンジョンに突入、そして師匠との別れ
- 命からがら切り抜けたと思ったらエルフたちに囲まれる
- 船旅の先でボス戦 仲間の死
- 一人で行こうとしたら従者がついてくる
一つ一つは面白そう感にあふれている。というか色々な作品で真似されているのだろう、既視感がすごい。
おそらく、これらの場面には人間の原始的な欲求を刺激するものがある。入学式卒業式その他様々な人生の節目には必ず人との出会いと別れがある。旅立ちの瞬間は緊張するものだが、そこに笑いを提供してくれる仲間ほど力強いものはない。見知らぬ人々ばかりの場所では警戒せずにはいられないが、人は見かけによらなかったりもする。大ピンチは死にものぐるいで行動するチャンスだし、仲間が増えると視野も広がりできることも増える。どんな国にも治安の悪い地域があるものだし、仲間が増えれば不和も生まれる。自分は一人だと思っていても意外と仲間になってくれる人がいたりするかもしれない。
正直、私にはこの映画が面白いとは思えなかったが、世の中にある面白い冒険ものの原型がここにはあることは否定できない。