たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

「エンジニア騎士とクエリの魔女」感想

 はてなブログで、なんだか面白そうなキャンペーンをやっている。

 「エンジニア騎士とクエリの魔女」というゲームをプレイして感想を書いて上手いこといくと、3万円もらえるらしい。3万円はすごい。3万円あれば、電車で両隣に座っている人に一万円札をそれぞれ一枚ずつ渡しても、まだ手元に一万円札が残る。とてつもない金額だ。これに挑戦しない手はない。というわけで書く。

 リンクを貼ると編集ができなくなるという珍現象が起きるので、興味が湧いた方は一番下にあるキャンペーンバナーから飛んでいただきたい。

 

 ゲームをプレイするにはpaizaに登録しなければならないらしい。というわけで登録した。クロームがパスワードを自動生成してくれなかったので、グーグルアカウントを使って登録した。

 なんやら色々書かされるが、入力必須なのは最初のページだけなので、あとはすべて空欄でよい。

 それでさっそくやってみたのだが、いきなり戸惑う。

 スマホのガチャゲーなら必ずある、あの鬱陶しいチュートリアルがないのである。ホーム画面にええ感じの男女二人組が立っているだけで、特に「ここをクリックするといいよ」的な指示がない。「鬱陶しいチュートリアルがない」と言うと、なんか嬉しいことのように思えるが、いざなくなると何をすればいいか分からなくて戸惑ってしまう。そうか、チュートリアルは学校の先生のようなものだったのだ(そもそもチューターは教師という意味なのだから当たり前である。我ながらひねりがないというレベルじゃない)。

 とりあえず、「冒険」と書かれたアイコンをクリックすればよさそうな感じなのでクリックする。ちなみに、clickという言葉はクリックによって生まれるあの「カチッ」という音の擬音語なのだそうだ。もしクリックという言葉が日本で最初に生まれていたら、今ごろクリックは「カチッ」と呼ばれていたのかもしれない。しかし、そもそもclickという言葉はいつ頃生まれたものなのであろうか? マウスが生まれたのと同時に生まれた言葉なのか? おそらくそうではない。なぜならば、無線通信で待機の乱れから生じる雑音もclickで表されるらしいからである。マウスよりも無線通信の方が先に生まれているから、マウスが生まれた時点でclickという言葉は存在したはずだ。で、clickの起源は?って話なのだが、調べた結果、……分かりませんでした! いかがでしたか?

 そんなことを考えていたら、気づくと目の前にはマップが広がっていた。何が何やらよくわからないが、とりあえず「原初の村」というやつをクリックするとよさそうなので、クリック!

 問題が表示される。ざっくりまとめると「n回"hello"と表示されるコードを書いてね」と書いてある。まさに初級問題と言ったカンジダ。”hello world”と表示するのはプログラミングの勉強でほぼ確実に最初にやることだし、繰り返し処理はプログラミングの基本のキと言っても過言ではない。

 使用できる言語はたくさんある。C,Python,VB,JAVA,PHP,Perl,Ruby……。なるほどね……。これだけあれば、様々な言語を学びたい人の需要を満たせる。素晴らしき親切設計……とはならない。

 素人ならば、ここでつまずく。どの言語を選べばいいのか分からないからだ。これが英語と中国語であれば、「世界中で使われるのは英語だから英語!」「これからは中国の時代だから中国語!」といった根拠があるのかないのかよく分からない考えに基づいて選ぶことができる。しかし、プログラミング言語となると、それぞれの言語の違いをまるで知らない。「第二言語をアディゲ語とエストレマドゥーラ語とダザガ語の中から選べ」と言われているようなものだ。ちなみに、アディゲ語はロシア南部北コーカサスに位置するアディゲ共和国で使われる言語で、春日語話者のおよそ数倍である30万人の話者が存在する。ダザガ語はチャドとニジェールエストレマドゥーラ語はスペインで使われる言語である。

 だが、私は素人ではないので、迷わずPython3を選ぶ。Pythonはパイソンと読む。ニシキヘビのことかと思いきや、モンティ・パイソン由来の名前だ。モンティ・パイソンはイギリスのコメディグループで、ここでのパイソンは陰茎を意味するらしい。詳細はググっていただきたい。そして2よりも3の方が新しい。新しい方が良いに決まっている。ドラクエだって2より3の方が面白い(2をプレイしたことはないがリメイクされるのはたいてい3だから3の方が面白いに違いない)。以上は私がPythonについて知っているすべてである。

 さて、あとはコードを書くだけだ。”hello”と表示するのは簡単だ。なぜならば、もう最初から書いてあるからだ。問題は繰り返し処理をいかにするかだが……どこにもヒントがない。

 急いではてなブログのキャンペーンページに戻る。もしかしたら勘違いしていたのかもしれない。このゲームは、すでにプログラミングの腕に覚えのある人が楽しむためのゲームだったのかもしれない。自分は最初から対象外だったのかもしれない。しかし、勘違いではなかった。「プログラミング学習ゲーム」「プログラミング初心者の方も」とたしかに書いてある。

 ……。

 ……?

 ゲーム画面に戻る。「標準入力からの値取得方法」と書かれた小さなリンクをクリックするとちょっとそれっぽいことが書かれているが、微妙に話題がずれているので解読がめんどくさい。

 戻って、その隣の「paizaラーニング:標準入力サンプル問題セット」をクリックすると、「標準入力サンプル問題セット」言語一覧と書かれた下に、各種言語のアイコンが配置されている。その隣には「0/8問」とか書かれている。この時点で若干の吐き気がこみ上げてくる。まず「標準入力」ってなんやねん。I have a 標準, I have a 入力 ……ah! 標準入力! ってことか?  そして、目の前に問題を出されているのに、それを解く前に8問も問題を解けと? それなら最初からその問題を出してくれ。

 こみ上げてくる思いを押さえつけて、「はじめる」ボタンをクリックしてみる。その先にはドラクエっぽいアイコンが並んでいて、なんだか8問の問題に挑めそうな雰囲気が漂っている。しかし、「チャレンジする」ボタンの下に「チケット3枚消費」と小さく書かれている。チケットがなんなのか分からないし、自分がそれを持っているのか、持っているとして何枚持っているのかも分からないが、とにかく消費するらしい。消費という言葉ほど嫌なものはない。私の大好きな言語は貯蓄と投資なのだ。無駄な消費はしたくない。

 かくして、私の冒険は終わった。

 

 感想としては、「プログラマーが作ったゲームだな」という印象だ。つまり不親切だということである。ネット上に散在するプログラマーはなぜあんなに偉そうなのだろうか? ヤフー知恵袋で初心者が初歩的な質問を投げているのに対して、初っ端からキレ散らかしている奴を見かける率がけっこう高いのはなぜだろう? 一般人(私)にとって、プログラマーは不親切の象徴なのである。

 

 忌憚ない意見を書いてしまった。このままだと3万円が遠いので、挽回するためにpaizaという会社に注目してみたい。

 会社ホームページのAbout usには次のように書いてある。

 paizaは、国内最大のITエンジニア向け転職・就職・学習プラットフォーム「paiza」を運営する会社です。

 要するにITエンジニアに特化したリクルートとかマイナビとかそんな感じの会社だということだろう。特徴は、サイト内でテストを受けることで登録者が自らのプログラミングスキルを証明できる仕組みを備えていることだ。プログラマーの実力を伸ばす教育事業にも取り組んでいる。

 経済産業省の調べによると、2030年には最大79万人のIT人材不足が発生すると予測されているようで、今後の需要が期待される領域だ。

 創業は2012年。当時の名前は株式会社スタートアップパートナーズ。翌年にギノ株式会社に名を改め、paizaを開始。2019年に登録者が20万人に到達し、そこから毎年10万人ずつのペースで登録者を増やしている。サービスが普及していく中で、2020年に社名もpaizaに。

 paizaの意味については以下のように書かれている。

13世紀にモンゴル帝国政府が発行した、街道沿いにある宿駅で宿泊したり、 馬を交換したりすることが可能な許可証をパイザといいます。プログラマ/エンジニアの転職許可証的なサービスを目指しpaizaと名付けました。
paizaのロゴの鳥(パイザ君)は、モンゴルのパイザに彫られている鳥をモチーフにしています。

 リクルートページを見ると、経理責任者募集メッセージの中に「IPO準備の経験を積みたい方」という文言があるので、IPO(新規株式公開、つまり上場)を目指していることがうかがえる。ちなみに、中途採用のほぼすべての職種で月給33万以上となっているが、採用担当メンバーだけは月給250,000円~333,334円と設定されている。

 コンセプトは「異能を伸ばせ」。なんだか『僕のヒーローアカデミア』みたいだ。ちなみに、『ヒロアカ』では「異能」は敵(ヴィラン)側が使う言葉で、主人公(ヒーロー)たちはそれを「個性」と呼んでいる。というと、まるでpaiza株式会社がヴィランのように見えるが、もう少し深く考えてみよう。(『ヒロアカ』世界の)今では「個性」と呼ばれる超能力が人々に発現し始めた当初、超能力は「異能」と呼ばれた。超能力者はまだ少数派だったからだ。ところが、超能力者が多数を占めるに連れ、「異能」ではなく「個性」と呼ばれるようになった。と、同時に「個性」に対する規制が強くなっていくのだが、ヴィランたちは誰もが自由に能力を発揮できた過去を懐かしみ「個性」ではなく「異能」と呼んでいるというわけだ。翻って、我々の暮らすリアルな現代社会は当然まだ個性社会ではないわけだから、超能力は異能と呼ぶ方が『ヒロアカ』的に自然というわけだ。社長は「異能への思い」の中で、次のように述べている。

機会を提供することはできても主体的でないと成長はできないため、他の誰かではなく、一人ひとりが自分自身の成長を志す社会にしていきたいと思ったためです。

 これもやはり『ヒロアカ』の終盤の展開に沿った発言だ。

 以上のことから、paiza株式会社の社長はおそらく『ヒロアカ』大好き人間だと思われる。要するに、paizaは雄英高校を目指しているのである。

 『僕のヒーローアカデミア』は週刊少年ジャンプで連載されている漫画だ。現時点で既刊35巻であり、物語は終盤を迎えている。私見を述べさせてもらえば、この漫画は週刊少年ジャンプ史上に残る大傑作である。序盤は登場人物が多すぎて困惑するだろう。なんせ主人公の通う高校のクラスメイトだけを考えても、20人全員が名前ありで、それぞれ描写があるのだから。だが、読み進めていくうちにそれぞれの登場人物たちの誰一人として欠かすことのできない存在であることが明らかになっていく。物語がその全貌を明らかにしていくにつれ、最初とはまるで違った世界が開けてくる。序盤に起きた出来事の意味がどんどん重みを増していくのだ。この物語構造自体が、少年の成長の様子を表現しているような気さえしてくる。まあとにかく傑作である。

 というわけで、『僕のヒーローアカデミア』、読んでいない人はぜひ読んでいただきたい。

 

 

 

paiza特別お題キャンペーン「ゲームでプログラミング力を試してみよう」

paiza×はてなブログ特別お題キャンペーン「私がハマったゲームたち」「ゲームでプログラミング力を試してみよう」
by paiza