たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

夏に見たい作品といえば『リリイ・シュシュのすべて』でしょう

 夏に見たい映画といえば、リリイ・シュシュのすべてをおいて他にあるだろうか、いや、あるかもしれない。

 『リリイ・シュシュのすべて』は、『花は咲く』の作詞でおなじみ岩井俊二、『ROOKIES』でおなじみ市原隼人南海キャンディーズ山里亮太の配偶者でおなじみ蒼井優、『乃木坂工事中』の妄想恋愛アワードでおなじみ忍成修吾の代表作だ。

 この映画は美しい。岩井俊二(あるいは篠田昇か)の撮る、あの淡い感じの映像。ドビュッシーを奏でるピアノの音色。輝くような鮮やかな田園。

 この映画はグロテスクだ。中学校で行われるいじめが描かれていて、救いがない。海に行けばダツが飛んできて死にかける。

 この対比。いや、矛盾か。これぞ日本の夏!

 

 私は高校一年生の時にこの映画を見た。TSUTAYAで借りたDVDをプレーヤーに入れて、居間の照明を消して、真っ暗な中で見た。内容は事前に知っていたから、浸りたかったのである。

 ……浸れたね~。期待に応えてくれたというか、超えてきたというか。

 当時の私にとって、これほど衝撃的な作品も他になかった。私の中学高校生活はそこまで陰鬱ではなかったのだが、それでもナイーブな思春期男子にとって、この映画の感じはなんというか、自分に寄り添ってくれている感じがあった……気がする。少年少女は大なり小なり誰かに傷つけられ誰かを傷つけて生きている。その中で救いを求めて、でも救われなくて……。

 今気づいたが、子供時代を惨めなものとして描いている点で、この映画は『おもひでぽろぽろ』に似ているかもしれない。そうか、私は子どもが惨めな思いをしている様子を見るのが大好きなのだ(なんて酷い奴だ)。

 

 とかいいつつ、高校一年生の頃に見たっきり、一度も見ていない。見る気にならない。重たすぎる気がするから。記憶もおぼろげなので、このぐらいのことしか書けない。

 それでも、リリイ・シュシュのアルバム『呼吸』は買ったし、小説も買った。好きな映画であるのは間違いない。高校生の頃にこの映画を見ることができたのは幸いなことであったように思う。


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