たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

街の中に芸術品を置くのではない、街自体が芸術品なのだ

今週のお題「好きな街」

 

 私の好きな街はローマです。

 ローマには良いところがたくさんあります。食べ物(ピッツァ、パスタ、ジェラート……)は美味しいし、(私が行った当時は)簡単な日本語を使える人が店先にたくさんいたし、ローマ帝国時代の遺跡がたくさんありますし、ヴァチカンに行けばキリスト教がかつてどれだけ大きな力を持っていたかを目の当たりにすることができるでしょう。美術館もたくさんあり、そのどれもが極めてレベルが高い。美術館巡りだけで一週間潰せるというか、じっくり回っていたら一週間では足りません。

 

 しかし、個人的に何よりもポイントが高いのは、街自体が芸術品であることです。ローマという都市の中に芸術が置かれているのではなく、芸術がローマを作っている。芸術とローマは一体不可分なのである、ということなのです。

 

 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニという芸術家をご存知でしょうか。

 「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と賞賛される巨匠。

 彼の芸術作品が街中いたるところにあるのがローマなのです。ナヴォーナ広場には『四大河の噴水』『ムーア人の噴水』『ネプチューンの噴水』があり、『ローマの休日』で有名なスペイン広場の前にも『船の噴水』があります。

 ベルニーニは建築も手掛けており、サン・ピエトロ大聖堂の前のサン・ピエトロ広場はベルニーニの仕事です。現在はイタリアの国会議事堂として使われているモンテチトーリオ宮殿もベルニーニが設計したものです。

ネプチューンの噴水

 ベルニーニの他に、万能の天才ミケランジェロラファエロも建築を手掛けています。詳しくないのでこれぐらいしか語れませんが、芸術家が作った街がローマといっても過言ではないはず! 有名なトレヴィの泉も非常に美しいです。

 

 とかく我々は人生における余剰と生活必需品とを分ける傾向にあります。

 生活の土台はとりあえず無味乾燥で安上がりなもので用意しておいて、その上に生き甲斐を置くのが普通です。

 家に観葉植物を置こうという人はいても、家を森にしようと考える人は稀です。熱帯魚を飼う人はいても、海中に家を建てようと思う人は稀です。

 しかし、ローマでは、建物の中に芸術品を置くし、建物自体も芸術品にするということが行われていたわけです。もちろん現代建築も一種の芸術品なのでしょうが、生活に溶け込んでいて見えづらいものです。その点、ローマの建築や広場は芸術であることが見えやすいです。特に日本人にとっては地理的にも時代的にも宗教的にも言語的にも完全に異世界ですからなおさら顕著ではないでしょうか。

 ローマのことを思うと、「機能性に囚われるな」という声が聞こえてくる気がします。生活のすべてを芸術で満たしたってよいのです。

 ローマは我々の固定観念を揺るがせてくれる街。これぞまさに芸術。そんな気がします。