たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

中田敦彦の小池百合子の動画について

 昨夜、中田敦彦YouTube大学で小池百合子編が公開されました。

 ここ最近、河野太郎岸田文雄高市早苗野田聖子と総裁選候補者の反省を紹介する動画を上げていたのですが、これが面白かった。しかし野田聖子編までたどり着き、このシリーズもついに終わりかと思った矢先の小池百合子。しかも、動画の再生時間が五人の中で最長。たしか1時間20分くらいだったかと思います。動画の長さは熱量に比例しているので、この動画への期待感も膨らみます。

 『女帝 小池百合子』の内容を紹介する動画だったのですが、まず導入が面白い。小池百合子についての記事を書いていた著者の元にある日、一通の手紙が届く。その手紙の差出人は小池百合子カイロ大学に在学していた時の同居人。彼女は「小池百合子カイロ大学を卒業してすらいない」と言うーー。みたいな感じです。

 

 私は皿洗いや入浴などの最中に聞いているので、風呂から上がったところでいったん切り上げました。その時点では40~50分あたりまで見ていたと思います。

 続きは翌日に見るつもりだったのですが、今朝起きてみたら、なんと動画が非公開に。しかも、Twitterのアカウントまで削除されているうえに、動画の更新を来週まで休むことにしたという……。

 これだけ見ると、「怖い!」「シンガポール在住のユーチューバーにまで小池百合子からの圧力が!?」みたいに感じてしまいそうになるし、現にツイッターなどではそのような投稿が散見されます。

 ただ、私としては、本当に「自分自身で内容を検討したうえでの判断」である可能性は十分あると思っています。

 

 というのも、動画を見ている最中から危うさは感じていたのです。この動画の内容は小池百合子という現役の政治家を貶めるものでした(途中までしか見ていない人間の感想なので全体を見たらそうではない可能性はあります)。ただ本の内容を紹介しているだけとはいえ、どういう本を紹介するかについては中田さんに選択の余地があるわけで、その選択に明らかに問題があれば批判の余地があります。

 小池百合子は公人ですから、彼女に対する批判は、それが事実に基づいたものであり、論理的倫理的に問題があるとまでいえないものであれば許容されるし、そうあるべきだと私は思います。でも、事実に基づかなかったり、論理的に破綻していたり、倫理的におかしかったりするような批判はいくら公人であっても許されないでしょう。

 では、この『女帝 小池百合子』が緻密な取材により様々な事実を解き明かした上で小池百合子を批判しているのかというと、YouTubeでの話を聞いた範囲ではどうも怪しそうでした。

 私の聞いた範囲では、上述の小池百合子の元同居人の証言をベースに話が進んでいっていました。しかし、真偽の検証をすることなしに、この同居人の(小池百合子を貶めるような)話を公にすることは許されない、というのが一般的な感覚ではないでしょうか。

 まず、この元同居人が本当に同居人だったかも定かではありません。世の中には現実と妄想の区別がつかない人はたくさんいます。

 さすがにそこの裏は取っているとしても、元同居人が真実を語っているとは限りません。痴情のもつれだとかで小池百合子のことを憎んでいるから嘘を吹聴している可能性もあれば、誤解により脳内で作り上げた「事実」を語っている可能性もあるし、長い年月の中で無意識のうちに記憶を改ざんしている可能性もあります。

 要するに、裏は絶対に取らねばならないということです。ところが、動画内で語られたのは「当時カイロ大学の卒業証書は偽造されたものを買うことができたから、それを買ったのかもしれない」だのといった全く無意味な情報です。(小池百合子カイロ大学を卒業していない証拠にもしこれがなりうるのだとしたら、全カイロ大卒業生を学歴詐称に仕立て上げることができてしまいます。)

 元同居人が身を守るために名前は隠すというくだりは、私には理解できませんでした。小池百合子からすればカイロ大学時代の同居人という情報だけで告発者が誰かは一発で分かります。その情報を明かすのに名前を隠してなんの意味があるのでしょうか? 仮に小池百合子が我々の知らないパワーによって自分に不利なことを言う者を抹殺できるのであれば、むしろ名前を晒した方が安全なはずです。小池百合子にそんなパワーはないし、元同居人は穏やかに日々を過ごしたいだけというのなら話は分かるのですが……。しかし、元同居人の実名を隠すことで確実に利益を得られる人が一人います。著者です。実名を公表しないのであれば、著者に近づいた元同居人など本当は存在しないとしてもバレません。著者は小池百合子について思いついた架空のエピソードをいくらでも真実のように語ることが可能になります。

 実際には、著者に手紙を送った元同居人など存在しない……ということはないと思います。ですが、些細な疑念をもとに仮説を構築し、その仮説の検証をしなくてよいというのであれば、上のように言うことも許されることになるわけです。

 以上が、私が当該の動画が危ういと思った理由です。中田さんが動画にするにあたり情報を省いているためこうなった可能性はあります。書籍のアマゾンレビューを確認したところ、私と同様の感想を抱いている方がいるようでした。ということは、根本的に書籍に問題がある可能性もあります。書籍を読んでいない私には、どちらかは分かりません。

 

 というわけで、書籍選びと説明のいずれかは分かりませんが、内容に問題があることにアップしてから気付いたため、動画を非公開にした可能性は十分にあるんじゃないかな?と思った次第です。

 陰謀論は面白いのですが、面白いからこそ陰謀論に飛びつきたくなる気持ちを抑えることが必要です。

 う~ん、でも本も読んでいないし、動画も完全に見られていない状態でこんなこと書くのもあまりよくないのだろうか?