たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

怪獣8号 感想

怪獣8号 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 『怪獣8号』を読みました。

 少年ジャンプ+で『SPY×FAMILY』に並ぶヒットを記録している漫画です。

 

 物語は次のナレーションで始まります。

「怪獣大国 日本 その発生率は世界でも指折りである」

 タイトルを読んだまんま、怪獣がいる世界です。怪獣の強さはフォルティチュードなる尺度で表現されたりするなど、怪獣の設定は明らかに地震をモチーフにしています。(そこに何か深い意味があるのかは今のところ不明です。)

 怪獣がいる世界にはヒーローがいるものです。この世界では防衛隊なる、おそらく国営の団体が怪獣退治をしています。

 主人公・日比野カフカはそんな防衛隊の一員……ではなく、倒された怪獣の後始末をする清掃員。かつて防衛隊員を目指していたものの、夢に敗れた32歳独身男性。

 ある夜、カフカの口の中に怪獣が飛び込んできます。気付くとカフカは怪獣になっていました。ゴキブリが口の中に飛び込んできて、オエーッ!てなったと思ったら自分がゴキブリになっているみたいな状態です。地獄ですね。(ということで『変身』の作者フランツ・カフカが主人公の名前の由来だと思われます。)

 怪獣になったカフカは人に見つかったもののどうにかこうにか逃げおおせます。この突然現れ忽然と姿を消した怪獣に付けられたコードネームこそ「怪獣8号」。

 人の姿に戻ることができたカフカは防衛隊の入隊試験を受けるのですが、怪獣を倒す試験の最中に人語を喋る謎の怪獣が現れて……。

 

 というのがだいたいのあらすじです。

 まあけっこう『進撃の巨人』みが強いですね。

  • 敵が災害的な存在
  • 主人公が敵に変身する
  • にもかかわらず主人公は敵を討伐する部隊に所属している
  • 本来は喋らないはずなのになぜか喋る敵が現れる

などなど共通点が多いです。

 一方で、『進撃の巨人』よりもかなり明るい作風です。主人公は「駆逐してやる……!!」なんてことは言わない、朗らかなおっさんです。(32歳はおっさんちゃうー!と近い歳の私は言いたくなってしまいますが……。)

 伝統あるジャンプの王道を行く漫画でもあります。ジャンプの漫画は試験的な催しがあるとたいていそれに乗じた輩が予定していないアクシデントを招くのが『NARUTO』以降のパターンです(?)。

 また、強い敵とまず当たるのはそこそこ強いけどそいつには勝てない程度のキャラです。奮闘するものの無念の敗北を喫する瞬間に、強キャラが登場して選手交代。勝負は強キャラの勝利で決着する。こういった展開も王道な気がします。

 というわけで、ノリとしては少年ジャンプの王道と『進撃の巨人』をミックスさせてみたという感じでしょうか……。完成度は非常に高く、熱くて面白いです。

 まだ4巻しか刊行されていないので、今のうちに読み始めておけばいずれ古参ぶれるかもしれません!

 

 しかし、よくよく考えてみると謎です。

 もし怪獣が災害と同じような存在だとしたら、怪獣は人類の歴史よりも古い存在であるはずです。しかし、現代の科学技術を持っている人間が簡単に倒せない化け物に対して、石器時代の人類はどのような対策を講じていたのでしょうか? 普通に考えれば、古代の人類は怪獣に駆逐されてしまうはずです。怪獣は実は放っておけば自然消滅するものなのでしょうか? 本当はそれほど恐れるような存在ではないのでしょうか? それとも怪獣が現れたのは最近のことなのでしょうか?(でも遅くとも室町時代にはいたようです。) いったい怪獣とは何なのか? よくあるのは、怪獣を生み出したのは人間パターンか実は人類も怪獣パターンですね。きっと今後のストーリーはそこに迫っていくことになるのでしょう!