たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

音楽を巡る時代の流れについて考えてみる

 近年は若手アーティストの台頭著しいです。時代が変わった感があります。私の学生時代と言えば、ランキングに乗ってくるのはジャニーズ、AKB、エグザイルばかり……という時代でした。つまり、売れ線に乗ってくるのは、アイドルの系統ばかりでバンドやシンガーが姿を消したという状況です。

 それがここ数年で、米津玄師、あいみょんofficial髭男dism、King Gnu、YOASOBI、Adoと続々と優れたアーティストが出てくる群雄割拠の時代になってしまいました。これは、音楽業界に変化が起きた結果だと推測します。

 その変化とは、簡単に言うと、動画配信サービス(主にYouTube)の影響力の増大です。ユーザー数も視聴時間も確実に伸び、テレビを超えつつあります。

 動画サイトの特徴は民主的であることです。誰でも発信できるし、誰でも投票できるし、誰でもメッセージを送れます。この「誰でも」にはアーティストだけでなく、ファンも含まれます。これによってテレビにはない動画サイトならではのエコシステムが形成されます。

 

 このような社会構造の変化が音楽業界に波及する現象は、今回が初めてではないはず。と思い、ちょっと調べてみました。注目したのは、音楽を聴く媒体です。

www.riaj.or.jp

 こちらを見ると、1971年にテープが登場して、1973年には音楽ソフトの売上が1970年から倍増しています。レコードがどれだけ不便な代物だったかを如実に物語っていますが、媒体の革新が音楽業界に大きな影響を与えるのは間違いなさそうです。

 次のブレイクスルーがCDです。CDが登場したのが1984年。1995年に1983年の倍に達しています。レコードからテープへの変化に比べるとマイルドではありますが、それでも大きく伸びています。この間にバブル崩壊があったことも考慮しておきたいところです。

 音楽ソフトの売上の伸びにテレビが注目することは想像に難くありません。私の子供時代の音楽番組といえば、以下の番組ですが、ほとんどが90年代にスタートしています。CDの出現による音楽ソフトの成長→音楽番組の出現→音楽ソフトのさらなる成長……という正のスパイラルが起こっていた可能性もあります。

THE夜もヒッパレ 1996-2000

うたばん 1994-2010

HEY!HEY!HEY! 1994-2012

ミュージックステーション 1986-

カウントダウンTV 1993-

 この頃はさぞや音楽番組の視聴率が良かったのだろうと思い、参考に音楽番組の視聴率ランキングを見てみたのですが、多かったのは80年代初頭でした。うーんなんでじゃろ?(テレビで音楽を聞く時代だったのかと思いましたが、そうであれば時代を遡るほど高視聴率であるはず。事実、紅白の視聴率は左肩上がりである。)

 音楽ソフトの売上は1998年でピークに達しているようです。なぜ1998年なのかは分かりませんが、これ以降に起こる技術革新は音楽ソフトの売上を伸ばすことには貢献しなかったということでしょう。CDの次に現れたのは無でした。つまり、もはや「音楽が入った物」を買う時代ではなく、インターネット上で「音楽そのもの」を買う時代に突入していったというわけです。(今となっては、音楽を買う時代ですらなくなっているのかもしれません。)

 時代と時代の狭間に生まれたのは、CDが売れないという現象です。この時代の中で、CDを売るにはどうすればいいか?を模索した結果が(あるいは結果的に生き残ったのが)、冒頭に書いたアイドルだったのでしょう。

 はてさて、時代はこれからどうなっていくのでしょうか?

 純粋に実力のあるアーティストだけが生き残っていく時代になるのか? それともSNSでの話題作りが上手いアーティストが生き残る時代になっていくのか? あるいは音楽ではなく体験を売るアーティストが隆盛する時代になるのか? アーティストの分業・協業が進んでいくのか? はたまた今までとは違う領域にアーティストたちが踏み出していくのか?

 楽しみですね。ではまた。