たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

なぜか聴かずにはいられないビジネスウォーズ

 以前、歩いている時間を無の時間にするためにAudibleを解約すると書いたのですが、あの直後にゆる言語学ラジオというコンテンツを発見してしまいました。

 

 あなたは「た」の用法を6個言えますか?


www.youtube.com

 

 このゆる言語学ラジオ、YouTubeでの配信がメインだと自分は認識しているのですが、ポッドキャストでも配信しているので、Amazon MusicSpotifyでも聞くことができます。

 面白いので初回から通して見たのですが、家にいる時にYouTubeで見るだけだと時間がかかるため、ポッドキャストでも聞いていました。

 そのおかげで一ヶ月弱で最新回まで追いついたわけですが、そうするとこれまで毎日ポッドキャストを聞いていたのに、聞くものがなくなってしまうという現象が発生しました。この頃には「歩いている間は何も聞かない」という当初の志も忘れています。

 そこでなにか聞くものはないか……とコテンラジオやハイパーハードボイルドグルメリポートを聞いたりしてみたわけですが、なにか物足りない……。

 そうしてたどり着いたのが、ビジネスウォーズです。

 

Amazon Musicのポッドキャスト番組「BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ」

 

 ビジネスウォーズはその名の通り、企業と企業の競争の様子をオーディオドラマ化したコンテンツです。アメリカのWONDERYが制作したドラマをニッポン放送が翻訳して配信しています。

 最新のテーマがマクドナルドVSバーガーキングです。

 なんかおもしろそーと思って聞いて、見事に気に入りました。今は一つ前のテーマである「ワクチン開発競争」編を聞いています。

 ただ、めちゃくちゃ面白いかというそういうわけでもなかったりします。なんなら、実はストーリーの完成度はそんなに高くないのではという気さえしています。

 というのも「マクドナルドVSバーガーキング」といいつつ、マクドナルドは始まりから終わりまでずっと圧倒的に優位で、バーガーキングマクドナルドの地位を脅かす場面はほぼありません。それぞれがそれぞれにピンチになって、それぞれがなんとか打破していくのを並行して描いているだけという印象でした。じゃあそれぞれのストーリーにいい感じの起承転結があるかといえば、それも特にありません。あれ? もう終わり?といった感じ。

 それなのに、なんか他のシリーズも気になってしまうのはなぜだろう?と考えた時に思ったのは、このフォーマット自体が面白いということです。具体的には

  • 企業の歴史を描いている
  • 対立構造を用いている

この二点が私のツボをおさえているなあと感じます。

 企業の歴史は面白いコンテンツです。ピンとこない人も多いかもしれませんが、『ジョジョの奇妙な冒険』や『賭博黙示録カイジ』が日本でかなり人気のコンテンツであることを考えると、企業歴史ものはわりと万人受けするジャンルなのではという気がします。なぜならば、企業の歴史には金を巡って、人間が知恵比べをするシーンが詰まっているからです。しかも、それがただの空想ではなくまぎれもない現実であり、我々の日常を構成する有名企業の裏側なのですから。

 さらに人間は闘争が好きです。スポーツは闘争以外の何物でもないし、フィクションのメインストリームは昔からバトルものです(根拠はありませんが)。企業の歴史にも競争は欠かせませんが、ビジネスウォーズはダメ押しで「○○VS△△」という構図を強く押し出しています。

 映画なら昔から「ゴジラVSモスラ」みたいなのはよくありますが、ポッドキャストだとこういうジャンルはあまりないのではないでしょうか。

 というわけで、今後ビジネスウォーズが何を題材にしようと、このフォーマットを続ける限り、ライバルが現れない限り、私は聞かずにはいられないのではないかという気がします。

 

 ちなみに、Netflixの番組でも企業の歴史っぽいものを最近見まして、それが『ハイスコア ゲーム黄金時代』です。

www.netflix.com

 これはゲームの歴史を振り返るドキュメンタリー番組なのですが、軽妙な語り口調もあってまあまあ面白かったです。

 日本のゲームの話も当然でてくるのですが、当時の日本のゲーム業界は世界を見ていたんだなあと驚きましたね。ゲーム業界は今でも世界を見据えているかもしれませんが、映画にせよ音楽にせよアニメにせよ日本の会社は国内しか見ない傾向にあると思っていたので。韓国がK-popや映画ドラマを世界展開しようとしているのと同じようなことを日本でもやっていた時期があったんだなあと感心しました。企業の歴史は国や社会の歴史でもあるのです。

 

 それはそれとして、この「フォーマットが面白い」ってけっこう大事だなと感じた次第です。

 ゆる言語学ラジオが面白いのは、「堀元と水野が会話する」というフォーマットが面白いからだと思うんですよね。ゆる言語学ラジオは言語学に関する回も面白いのですが、雑談回も面白い。これがゆる言語学ラジオの強みで、雑談回が間を埋めてくれるから、ガチの回のクオリティを時間をかけて高めることができるのです。それに堀元さんと水野さんの会話が面白くなければ、視聴者は題材によって見る見ないを決めるでしょう。しかし、堀元さんと水野さんなら何を話題にしても面白いから、「た」なんていうつまんなそ~な話題でも見る気が起きるわけです。

 中田敦彦YouTube大学にも同じことが言えます。中田敦彦YouTube大学の視聴者は基本的には中田敦彦のプレゼンが見たくて見ているのです。YouTubeで知識を得ようと思って見ているわけではないのです。その証拠に、一番人気の動画は中田敦彦のしくじり武勇伝だし、逆にゲストを呼んで対談する回は再生回数があまり伸びていません。

 ジャルジャルタワーもジャルジャルが毎日「〇〇な奴」というタイトルでネタを上げていることに意味があるのです。これがあるから、毎日義務感にかられて真顔で見てしまうんです。もし今のスタイルの代わりに、「寝具店」だの「蓄積」だのといったタイトルの舞台上でやるネタを一ヶ月に一回アップロードする形になったりしたらチャンネル登録者数は減りはしないかもしれませんが伸びることもないでしょう。

 

 私は影響を受けやすいたちなので、十年ぶりくらいにマクドナルドに行ってみました。

 昼にはダブルチーズバーガーとマックフライポテトとマックシェイクを、夜にはビッグマックチキンマックナゲットをモバイルオーダーで注文しました。注文の3分後には(ストップウォッチで計測しました)、あの工業製品感のあるハンバーガーができあがっていました。バンズ、パティ、チーズ、どれを取っても一口食べるまで食べ物という感じのしないあの不思議な物体。モスバーガーならもっとみずみずしいものが出てくるのに。でもみずみずしくない分、食べやすいんだな、これが。店内では家族連れがファンシーな座席に座っていました。テンションの上がった女の子がお母さんに「静かにしなさい」と怒られていました。

 変わらない。マクドナルドは変わらない。家族は変わらない。

 マクドナルドもまた、フォーマットが魅力的だからこれほど広く長く愛されているのでしょうね。

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