たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

効率化の手段を考える前にやらなければならないことがあるはずだ

 仕事にせよなんにせよ、人は「どうすれば効率よくできるだろう?」と考えがちです。「どうしたらもっとスピーディーに仕事をこなせるだろう?」「どうしたら残業せずに済むだろう?」……。

 そして世間にはその疑問に答えるべく、効率化の方法や仕事術を説いた本が数多あります。

 しかし、私が思うに、「どうすれば?」を問う前にやるべきことがあります。それは、「私は何をやっているのか?」を問うことです。自分が何をやっているのか理解せずに、どうすれば効率化できるかを問うても、実のある答えはなかなか出ません。なぜならば、ある特定の課題に対しての解決策は、別の課題解決には役に立たないのが普通だからです。

 たとえば、仕事を効率化しようとしているとします。まずやることは、どの作業にどのくらいの時間をかけているかを知ることです。仮に、下のような状況だったとします。

 

<パターンA>

作業の手順の確認をしている時間:70%

パソコンの操作をしている時間:30%

 この場合、業務効率化のためにまず手を付けるべきはなんでしょうか? パソコンの操作を素早く行うことでしょうか? そうではないはずです。より時間を掛けている、作業手順確認プロセスに改善の手を加えるべきです。

 なぜ、作業の手順確認にこれほど時間がかかっているのでしょうか? 調べてみるとどうやら、手順は口伝されるだけで、文書に残されていない。そのうえ、口伝するべき人が口伝を好まないという奇妙奇天烈な職場であることが原因のようです。だとすれば、作業効率化のためにすべきことはマニュアルの作成です。

 

<パターンB>

作業の手順の確認をしている時間:10%

パソコンの操作をしている時間:90%

 マニュアルを作成した結果、手順の確認にかかる時間は劇的に減りました。そうなると、次に手を付けるべきはパソコンの操作時間の短縮です。頑張って手順確認の時間を0にしたとしても、業務の10%しか削減できないからです。

 当たり前のことですが、先立って革命的な業務効率化に寄与したマニュアルの作成はこれに関しては必ずしも有効な手段ではありません。

 パソコンの操作時間を短縮するためにできることはなんでしょうか?

 一つには、ショートカットキーの駆使があります。マウスを掴んで動かしてクリックする、という動作を一日に100回しているとします。その動作一回あたりに2秒かかっているとします。ところがショートカットキーを利用すれば、一回あたり1秒しかかからないとすれば、ショートカットキーを駆使することで100秒の時間短縮に貢献します。

 あるいは、キーボードを見ながらでないとタイピングができないため文字を打つことに時間がかかっているのであれば、タッチタイピングを習得するという方法もありえます。

 はたまた、定期的にエクセルで同じ種類の書類を作成しているのであれば、マクロで自動化するという方法もあります。

 

 このように、業務効率化の手段は、効率化すべき課題に応じて変わってくるわけです。にもかかわらず、「私は何をやっているのか?」=効率化の対象は何なのか?を分析せずに、「どうすれば効率化できるか?」を考えても、得られる答えはどんな仕事にも通ずる普遍的なことにしかなりえません。つまり、「睡眠はよく取ろう」とか「朝食を食べよう」とか「運動しよう」とか「お酒は飲むのはやめよう」とか「意思決定の機会を減らそう」とか……。こういうことは大事っちゃ大事ですが、具体的な課題解決の役に立つかというと微妙です。手作業でやると1時間かかるけど、マクロを使えば1分で済む作業には、マクロで対処すべきです。どれだけぐっすり眠ろうが、手作業には限界があるのです。

 しがないサラリーマンが偉そうに語っても説得力がありませんが……。