たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

世間の常識なのかどうかよく分からない単位の話

 しばしばツイッターでトレンドに上がる話題に「算数の式を書く順番」があります。

 たとえば、「2このりんごがのったおさらが8まいあります。りんごはぜんぶでいくつあるでしょうか」という問題に対して、「8×2=16」と書いたらバツを付けられたというエピソードトークです。

 是非はともかく、この話は重要なことを考えさせてくれます。それは単位についてです。

 どちらの順番が(教科書的に?)正しいのかは、単位を考えないと分かりません。上記の問題の場合、みなさんはどのような単位を考えるでしょうか?

 正解は「2個/枚×8枚=16個」です。

 単位とその意味さえ理解していれば、(個/枚)を単位に持つ数字が前に来る方が考え方として自然なことはなんとなく分かります。(もちろんそう書かなければ算数を理解していないのかといえばそんなことはないと思いますし、本当にそれが自然なのかと深く考えるとなかなか難しい問題であるとは思います。)

 ただ、それはどうでもよくて、私が本当に大事だと思うのは次の話なのです。

 もし、「2個×8枚=16個」と考えた人がいれば、その人は大事なことが頭から抜けているかもしれません。

 掛け算されるのは単位もです。数字だけではありません。

 もし、2個×8枚と考えるのであれば、答えは16個枚になります。なぜなら個と枚を掛けているからです。枚で割ってもいないのに枚が消えるなんてことはありえないのです。個枚なんて単位は聞いたこともなければ、どんな意味を表すのか説明できる人もいないでしょう。

 面積の単位が㎡なのはmを2回掛けているからです。体積の単位が㎥なのもmを3回掛けているからです。

 これは知っている人にとっては小学生レベルの常識でしょうが、意外と大学生でも知らない人はけっこういるんじゃないでしょうか。

 何を隠そう、私も大学で宇宙物理学の授業(名前はともかくそんな感じの授業だった)を取った時に、先生がひたすら黒板に書きなぐっていく計算式を必死に書き写して後から「どういう意味じゃ~!」と思いながら理解しようとして初めて気付いたのです。いやはやお恥ずかしいこってす。でも、そんなこと授業で習ったかな? 覚えていないだけかもしれません。

 で、これを理解すると、加速度(m/s^2)を積分すれば速度(m/s)が出ることも、速度(m/s)を積分すれば距離(m)が算出されることも理解できます。線分(m)を積分すれば面積(m^2)が出るし、面積(m^2)を積分すれば体積(m^3)が出ます。微分はその逆。単位を意識できるかできないかで、微積の概念を理解する難易度は大きく変わるに違いありません。

 まあ、そんな高度(?)な話じゃなくても、正しい単位で考えられるかどうかは計算、ひいては物事の理解度に深く関わってくるのではないかなと私は思っています。

 

 算数の授業も単位を書かせればいいのでは?と思いますが、掛け算を習うのは割り算や分数を習う前だから書かせられないという難しいジレンマがあるのかもしれません。