たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

歴史を学ぶ時にやったほうがいいかもしれないこと

この記事は、東大法学部卒のバビボが主に中高生向けに成績を向上させるきっかけを与えられればと思って書いたものです。受験の記憶は10年以上前のものなので、不備があってもあしからず……。

 

 歴史の勉強をしていると、やたらと税制だとか法制度のことが書いてありますよねぇ~。

「なんでこんなつまらねえこと覚えなくちゃならないんだ」

 そんな声が聞こえてきます。街中の至るところから。

 彼ら(そして昔の私)がそういう風に感じるのは、そもそも現代社会のことを知らないからかもしれません。

 あなたは見たことのない映画のメイキング映像を見るでしょうか?

 まあ好きな役者が出ていたり、このメイキングが面白い!みたいな噂が立っていたりしたら見るかもしれませんが、普通は見ないでしょう。

「メイキングの前に映画本編を見せてくれ!」

と思うに違いないのです。

 皆さんはいわば、見たことのない映画のメイキングを見せられ、その内容を記憶するよう強いられた虜囚なのです。

 拷問ですね。

 

 というわけで、今日はちょっと現代社会のことを学ぼうのコーナーをやってみたいと思います。

税金のお話

 まだ中学生高校生であるあなたは、消費税以外の税金のことについては何も知らないに違いありません。

人頭税

 歴史上には人頭税というものがそこかしこで登場します。

「お金持ちには多く税金をかけて、貧乏人からは税金は取らない。これが現代の常識!」

「所得の多寡に関係なく税金を皆から徴収するなんて野蛮野蛮!」

 そんな風にあなたは思っているかもしれませんが、現実には人頭税は現代の日本においてすら残存しています。

 あなたは住民税というものをご存知でしょうか?

 所得税は聞いたことがあると思います。所得(収入)があると払わなくてはならないという、あれです。

 昔は高額納税者公示制度(いわゆる長者番付)といって、所得税を多く納めた人が新聞などで発表されていたという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 所得税は国の税金ですが、住民税は地方税です。

 要するに、住民税は、所得税都道府県&市町村versionといったところのものです。

 ちなみに、地方自治体(都道府県や市町村)は国とは独立した組織なので、基本的にはそれぞれが財源を持っています。つまり、それぞれが税金を徴収しています。

 この説明を聞いて、あなたはこう思うかもしれません。

所得税の地方バージョンなら人頭税じゃねーじゃねーか」と。

 ですが、この住民税は、以下の二つにより構成されています。

  • 所得割
  • 均等割

 所得割というのは、ざっくり説明すると、所得に対しておよそ10%をかけることで算出されます(五公五民がどれだけの重税か分かりますね)。

 累進課税という言葉を聞いたことがあるかもしれません。所得が大きくなるほど税率が大きくなるという仕組みです。

 累進課税は住民税にはありません。住民税は誰でもみんなだいたい10%。

 それでも所得が大きくなればなるほど税額が増えるわけですから、所得税的なものであることには違いありません。

 肝心なのが均等割の方です。

 これは誰もが同じ額を支払います。所得の額に関係ありません。つまり、一人頭いくらで計算されるものです。

 東京都民ですと、一人当たり5,000円かかるようです(2021年現在)。

 これを人頭税と言わずしてなんというのでしょうか。

「え?でも、おら、そんなもん払ったことねえだよ!」

と戸惑う人も多いかもしれません。

 あなたが住民税を払ったことがないとしたら、それはあなたが慎ましい生活を送っているからです。

 住民税は「所得の少ない人にはかけないようにしようね」という免除制度があるのです。

 ざっくりいうと、給与収入で100万円を超えるとかかる可能性が出てきます(自治体によって異なります)。

 ともかく免除制度があるだけ住民税は優しいのですが、国民健康保険料(税)はもっと厳しいです。

 国民健康保険料は主に所得割、均等割、平等割、資産割の四つで構成されています。

 国民健康保険料は世帯単位でかかるのですが、こちらの均等割もやはり一人頭いくらで計算されます(世帯の中に何人国民健康保険加入者がいるかで金額が決まる)。

 で、こちらは所得が0でも減額こそされ、免除はされません。完全なる人頭税ですね。

 ちなみに、東京都港区の場合、均等割は52,000円のようです(2021年現在)。

 というわけで、人頭税は決して馬鹿な古代人が考えた古臭い仕組みではないということが分かっていただけたと思います。

地租

 地租改正というのを聞いたことがあると思います。

 明治時代に入って、地価の3%とかを税金として徴収することにしたよってやつですね。

 日本史を履修し終えた皆さんは、あれがいつなくなったかご存知でしょうか。

 ご存じない人が多いと思います。

 なぜなら形を変えて今も生き続けているからです。

 地租の現在の名前は、固定資産税といいます。

 土地を所有しないとかかりませんので、一般生徒の皆さんには無縁の代物でしょうが、将来、土地を買うようなことがあればお世話になる税金です。

 固定資産税も市町村が徴収しています。つまり、地方税です。

 ちなみに、土地にかける税額を決めるには、土地の面積を測定しなければなりません。

 これは別に固定資産税があるから必要というわけでもなく、人々が土地を所有することができる社会であれば、土地の面積を測るという営みは必ず必要になります。

 みなさんは数学の図形の授業も

「なんで三角形の面積を求める必要があるんだ~!」

と思っているかもしれませんが、そもそも図形についての研究は、土地の面積などを測るという実用的な目的のために発展したものなんです。

 幾何学を英訳するとGeometryですが、これは土地測量という意味です(Wikipediaに書いてありました)。

 Geo(土地)metry(測量)ということですね。Geographyといえば地理のことだし、meterといえばメーターのことですから。

 ですから、みなさんが授業中に

「なんで三角形の面積を求める必要があるんだ~!」

と口に出してしまうと、先生からは下のように言われてしまうわけです。

「将来てめえは金持ちになって土地を買うんだろ? ならてめえの土地の面積くらい計算できるようになっておけ」

寄進地系荘園

 日本史で、貴族に土地をあげて税金を逃れるみたいな話が出てきますね。

 あれと似たような話は現代にもあります。

 タックスヘイブンという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 日本語でいうと、租税回避地(税金天国ではありません)。

 ざっくりというと、税金が安い国を利用して、税負担を合法的に軽くしちゃおうという取り組みです。

 これをやるにはとても頭のいい法律の専門家が必要になるので、だいたい利用するのは超お金持ち。

 そんな人達が法律の抜け穴を使って、租税のがれをするのは国家にとって大打撃ですので、現在進行系の問題になっています。

(ちなみに、法律を破って税負担を逃れるのは脱税です。これをやると、ある早朝、ピンポーンという呼び鈴の音で目覚めることになるかもしれません。)

 法に抜け穴があれば、ずる賢い人はそれを利用して利益を得る。

 人間っちゅうのは昔から変わらんのです。

 人間には善良な人も悪い人もいますが、歴史を動かすのは人間の利己心だということなのです。

まとめ

 というわけで、歴史の授業が面白くないのは、歴史の行き着く先(今の世界)をあなたが知らないからかもしれません。

 歴史の授業を聞いていて、なんか頭に入ってこないんだよな~と思ったら、今どうなっているかを調べてみるとよいのかもしれません。

 本当は、法律について「今でも世界を支配しているのはローマ法なんだよ」とか「イスラム教は神様の教えとかいう小さなものじゃなくてもはや法律なんだよ」とかの大学で学んだ話や、「国家を一つの会社として考えてみよう」という話も書きたかったのですが、もはや記憶が曖昧で今の自分には書けないことが分かりましたので割愛しました。