消費税関係の問題でちょくちょく不正解を叩き出しているので、まとめてみます。
消費税を支払った場合
Q1.1,000,000円の備品を現金で購入した。消費税の税率は8%で、税抜方式で記帳する。
問題の分析
この問題を解くには、問題が以下の二つの要素で構成されていることを理解することが必要です。
- 備品の仕訳
- 消費税の仕訳
消費税じゃない部分の仕訳
まず簡単な備品について考えると
(借方)備品 1,000,000 (貸方)現金 1,000,000
になりそうです。
これは簡単。でもこれで終わりではありません。消費税について言及があるということは、消費税の処理が必要であることを示唆しています。
消費税部分の仕訳
勘定科目の一覧を見ると、それっぽいのは以下のどれか。
これまでやってきて、簿記の選択肢にフェイクはなさそうだと感じています。となると、消費税を取り扱っているのなら勘定科目も消費税という言葉が入っていそう。そうすると選択肢は2つに絞られます。
- 仮払消費税
- 仮受消費税
今回は消費税を払っているわけなので、
(借方)仮払消費税 80,000 (貸方)現金 80,000
となりそうな感じがします。
まとめると以下の通りになります。
(借方)備品 1,000,000 (貸方)現金 1,080,000
(借方)仮払消費税 80,000
消費税を受け取った場合
Q2.商品を1,000,000円で売った。クレジットカード払いで手数料は販売代金の5%。消費税の税率は10%とし、税抜方式で処理するが、クレジット手数料には消費税は課税されない。
先ほどは買った時の仕訳でしたが、今度は売った時の仕訳です。
問題の分析
この問題も二つの問題に分けることができます。
- クレジットカード払いの問題
- 消費税の問題
消費税じゃない部分の仕訳
まず、クレジットカード払いについて、仕訳します。
もし手数料がなければ、
(借方)クレジット売掛金 1,000,000 (貸方)売上 1,000,000
となりますが、手数料があります。
(借方)支払手数料 100,000
となるため、クレジット売掛金からこの分を差し引きます。従って、
(借方)クレジット売掛金 900,000 (貸方)売上 1,000,000
(借方)支払手数料 100,000
となります。
ちなみに、私は初見では、支払手数料相当部分を売上に計上しないような形で考えてしまって、わけが分からなくなってしまいました。上のような順序で考えると迷わないかもしれませんね。
消費税部分の仕訳
問題は、消費税の方です。一問目の逆と考えると
(借方)クレジット売掛金 100,000 (貸方)仮受消費税 100,000
となりそうですね。
というわけで、正解は
(借方)クレジット売掛金 1,000,000 (貸方)売上 1,000,000
(借方)支払手数料 100,000 (貸方)仮受消費税 100,000
となります。
消費税額の確定
Q3.納付すべき消費税の額を確定した。仮払分は80,000円、仮受分は100,000円。記帳は税抜方式で。
上で学んだ通り、仮払は借方に記帳済みで、仮受は貸方に記帳済みのはず。これを打ち消すような仕訳になるはずなので……
(借方)仮受消費税 100,000 (貸方)仮払消費税 80,000
となるのは確実な感じがします。
差額の2万円が貸方に入りそうな雰囲気がビンビンします。実際、この状況を日常的な言葉で説明すると、
- お客さんから預かっている国に支払わなければならない消費税が10万円ある。
- 仕入先に預けた消費税が8万円ある。
ということになります。これを差し引きした分が払うべき消費税になりそう(この点、後述)。
確定した消費税は未払消費税
しかし、消費税を払うのですよね。そうすると、借方に費用として計上すべきな気がします。でも、今空いているのは貸方の方……。
どういうことー!!???
初見だとこうなることうけあいです。
大事なのは、まだ消費税の額が決まっただけ、ということですね。まだ払わないんです。もし払うのだとしたら、問題に払い方は現金なのかなんなのか書いていなければなりません。でも書かれていません。必要ないからです。
よって、正解は以下の通り。
(借方)仮受消費税 100,000 (貸方)仮払消費税 80,000
(貸方)未払消費税 20,000
税額が確定したら「未払〇〇税」で計上する。これ大事。
まとめ
消費税の問題は、問題を小分けにすると簡単になりますね。
ちなみに、税抜方式があるなら税込方式がありそうです。税込方式は、売上や仕入の中に消費税分を含めてしまうやり方だそうです。
たとえば、「商品を10万円の現金で購入した」というのを
(借方)仕入 100,000 (貸方)現金 100,000
と仕訳したら、それはもう税込方式なのかもしれません。
私が解いた中では消費税の問題は全て税抜方式でした。税込方式だと問題がすごく簡単になってしまうので、税込方式の問題は出ないような気もしますが果たして?
余談:なぜ仮受消費税から仮払消費税を差し引くの?
上では当然のように仮受消費税から仮払消費税を差し引きました。
でも、お客さんから預かった消費税と、仕入先に預けた消費税は別物のような気がします。少しゆっくり考えてみます。
まず本当に差し引くのが正しいのか、国税庁のHPを見てみましょう。
消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上高に7.8%(軽減税率の適用対象となる取引については6.24%)を乗じた額から、課税仕入高に110分の7.8(軽減税率の適用対象となる取引については108分の6.24)を乗じた額を差し引いて計算します(注1、2)。
これを見ても、仮受消費税から仮払消費税を差し引いたものが未払消費税になることは間違いなさそうです。
でも肝心なのは、なぜそうなっているのか?です。もし仮払消費税を差し引かなかったらどうなるでしょうか?
たとえば、消費税の存在しない世界における本の販売を考えてみます。
- 出版社が取次に300円で本を売る(300円の儲け)
- 取次が書店に400円で本を売る(100円の儲け)
- 書店が消費者に500円で本を売る(100円の儲け)
という三段階の流れで本が消費者のもとにたどり着きました。
では、消費税率10%の世界ではどうなるのでしょうか。
もし仮受消費税から仮払消費税を差し引かない場合、以下のようになります。
- 出版社が取次に330円(税込)で本を売る
300円の儲け&30円の仮受消費税 - 取次が書店に473円(税込)で本を売る
100円の儲け&43円の仮受消費税 - 書店が消費者に630円(税込)で本を売る
100円の儲け&57円の仮受消費税
なんと、消費税が10%なのに、消費者が払わなければいけないお金が26%増しになってしまいました!
消費税の趣旨は500円の本が550円で売られてそのうち50円が国に納められることです。これではおかしなことになってしまいます。
では、仮受消費税から仮払消費税を差し引く場合、どうなるでしょうか?
- 出版社が取次に330円で本を売る
300円の儲け&30円の仮受消費税=30円の未払消費税 - 取次が書店に440円で本を売る
100円の儲け&40円の仮受消費税&30円の仮払消費税=10円の未払消費税 - 書店が消費者に550円で本を売る
100円の儲け&50円の仮受消費税&40円の仮払消費税=10円の未払消費税
こうすると、出版社も取次も書店も利益を確保しつつ、国も30+10+10=50円の納税を受けることができるし、消費者も消費税率分だけの負担増で済みます。
消費税を負担するのは最終的な消費者です。しかし、取引の段階では誰が最終的な消費者になるか分からないので、各々の取引で消費税を徴収します。書店は40円の消費税を取次に払いましたが、消費税を負担すべきなのは一般消費者なので、40円をどこかから返してもらわなければいけません。取次に請求しなければならないとなると大変なことになります。世の中には無数の取引があるのですから。となると返してもらう先は国しかありません。その時、ちょうど書店には国に納めるべき50円の消費税があるのです。いちいち国に50円払って、国から40円もらう、などということをするのは無駄の極みです。最初から書店は国に10円払えばよいのです。残りの40円は仕入先が納めてくれるはずです。
仮払消費税は、国に対する債権だと考えてしまえばいいかもしれません。