たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

11問目 為替予約

Q.先日、商品を100,000ドルにてアメリカの顧客に掛けで売渡、適切に処理していたが(取引時の直物為替相場1ドル109円)、今後円の為替相場が上昇するリスクに備えてドル110円にて売却する為替予約を締結した。ただし、当該売掛金の円換算額と為替予約による円換算額との差額は全て当期の損益として振当処理を行う。

 

 為替の問題です。出てくるとちょっとドキッとするので、整理しておきます。

まずは適切な処理を確認する

 こういう「適切に処理していた」系の問題は、まずその適切に処理した結果どのような仕訳が行われたのかを確認することが必要です。

 取引の段階ではドル109円だったわけなので、下のようになります。

(借方)売掛金10,900,000(貸方)売上10,900,000 ……(A)

 この段階ではまだ支払いが行われていません。そして、決済時のレートがいくらになるか確定していません。つまり、円貨建てでいくらもらえるかはまだ未知数ということです。

為替予約

 今回の問題では為替予約を行ったとのことです。為替予約とは読んで字のごとく、「将来のある時点において事前に定めたレートで取引することを予約します」というものです。

 ですから、為替予約を行った段階でレートがドル110円で確定します。確定したレートでの仕訳はどうなるでしょうか?

(借方)売掛金11,000,000(貸方)売上11,000,000

 になりそうです。

 ただし、すでにAの仕訳を行っているので、差額のみ仕訳しなければなりません。

(借方)売掛金100,000 (貸方)売上100,000

となりそうですが、まだ終わりません。今回新たに生じた 売上100,000円は為替レートの変化により生じたものなので、売上ではなく為替差損益で処理します。

(借方)売掛金100,000 (貸方)為替差損益100,000

  これが正解になります。

いつ為替予約を行ったかがポイント

 次のような形の問題もありました。

Q.アメリカの取引先に対して製品200,000ドルを3ヶ月後に決済の条件で輸出した。輸出時の為替相場は1ドル110円であったが、700,000ドルを3ヶ月後に1ドル108円で売却する為替予約が輸出の1週間前に結ばれていたため、この為替予約により振当て処理を行う。

 これも先程と同じように処理するのでしょうか? もしそうだとすると答えは、

(借方)売掛金22,000,000 (貸方)売上22,000,000

(借方)為替差損益400,000 (貸方)売掛金400,000

 となるのでしょうか?(売上が減っているので、二段目が左右逆転しています。)

 いや、そうはなりません。この場合は、取引の段階で為替予約でレートが確定済みなので以下のようになります。

(借方)売掛金21,600,000 (貸方)売上21,600,000

もし為替予約を行わなかったら

 もし為替予約を行わなかった場合、どうなるでしょう?

例)2014年10月16日、スイスの仕入先から100,000フランで商品を買った(当時1フラン111円)。決済は三ヶ月後の2015年1月16日に行った(この時点で1フラン135円)。

 まず、取引時の仕訳が以下の通り。

(借方)仕入11,100,000 (貸方)買掛金11,100,000

 そして、決済時の仕訳が以下の通り。

(借方)買掛金11,100,000 (貸方)当座預金13,500,000

(借方)為替差損益2,400,000

 なんと!為替差損益だけで200万円オーバーの損失が出てしまいました!

 このレートは現実の数字を参考にしていますので、このようなことは実際にありえます。

 もちろん立場が変わったり、為替相場の流れが逆転すれば、逆に利益を得る可能性もあります。しかし、事業を営んでいる人々の多くは相場師ではありませんから、為替相場の変動によるリスクは好まないでしょう。そのような人々にとって為替予約は安心をもたらしてくれる仕組みと言えます。

まとめ

 為替予約の問題はいつ為替予約をしたのかに注目しようということですね。

 正直、一番戸惑うのは振当処理という言葉です。振当て?どういう意味?となります。調べたのですが、本当なら為替予約はそれ自体が一個の取引であるところ、それと売買取引を一体化させて処理しているから、売買取引に為替予約を振当てている(あるいはその逆?)という意味で振当処理と言うっぽいです。

 が、たぶん簿記二級では範囲外だと思いますので、

振当処理=為替予約のレートで会計処理をする

と理解しておけば十分ではないかな?と思います。