前回までで連結修正仕訳について三回に渡って書きました。
weatheredwithyou.hatenablog.com
しかし、まだ肝心なことを書いていませんでした。
連結財務諸表を作る際に、連結修正仕訳を行いますが、その仕訳は連結財務諸表の中でのみ生きます。
つまり、個別財務諸表にはその仕訳は反映されないということになります。個別財務諸表の中では、子会社との取引だろうがなんだろうが関係なく、原則どおりに仕訳をします。
そうなるとどうなるかというと、次の連結決算の時に、前回までに行った連結修正仕訳を再び繰り返さなければなりません。連結をする個別財務諸表は、連結修正仕訳をされたことのない財務諸表だからです。なので、百年間連結していたら百年分をやらなければいけないということのようです。ひえ~!
これを開始仕訳といいます。
ですから、当期より前に子会社になった会社との連結財務諸表を作成する問題が出てきたら、まずは開始仕訳をして、それから当期の連結修正仕訳を行うということになるわけです。
商品の開始仕訳
同じ種類の連結修正仕訳であっても、開始仕訳と当期の修正仕訳とでは微妙に内容が変わってきます。
前回の、「子会社の商品のうち、親会社から仕入れたものが200円で、親会社の売上総利益率は50%である」という問題。
当期の連結修正仕訳では下のようになりました。
しかし、これが前期末の在庫について開始仕訳をするという話になると、下のようになります。
表1
なぜでしょうか? ポイントは次の2つに分けられます。
損益計算書ではなく貸借対照表の修正になる
前回、親会社は下のようになっていました。
個別財務諸表上では、これで完結していますから、売上から売上原価を引いた200円が利益剰余金としてバランスシート上に加算されています。
子会社の方も、利益が200円出て、商品が200円残りました。
しかし、親子を一つのグループとして見た時、利益は300円で商品は100円であるべきです。なぜなら、子会社が親会社から400円仕入れて200円の在庫が残ったということは仕入れたものの半分が売れ残ったわけです。この商品は、そもそもは親会社が外部から200円で仕入れたものなので、商品在庫の正しい帳簿価額はその半分の100円です。逆に、子会社は売上400円をあげましたが、これの原価も親会社が200円で仕入れたうちの半分なので100円です。よって利益は300円です。
単純に親子を合算すると、利益400円・在庫200円ということになり、
というわけで、未実現の利益の影響を取り除きます。
表2
とすることで、貸借対照表を正しい形で引き継ぐことができます。
要するに、前回の売上原価が利益剰余金に変わっただけです。
期首商品を正しく修正する
これで終わりではありません。
売上原価=期首在庫+当期仕入-期末在庫
でしたが、このうち当期仕入と期末在庫については、当期の連結修正仕訳で修正されます。しかし、期首在庫は修正されずに残ったままです。
子会社は期首の商品在庫について、下のような処理をしています。
その結果、売上原価が100円高い状態で計算されてしまっています。というわけで下のように修正します。
これと表2をまとめると、表1になります。
まとめ
うーん、難しい。
正直、これをいちいち一から考えているレベルならば、商品に関する問題は後回しにした方がいい気がします。ただ、連結の問題が出たらほぼ確実に出題されると思われますので、これを一瞬で処理できるようになれば、けっこう有利になるかもしれません。