たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

9問目 「源泉所得税控除後」

Q当座預金口座に配当金40万円(源泉所得税20%控除後)の入金があった

 

 この問題は簡単ですね。

(借方)当座預金 400,000 (貸方)受取配当金 400,000

で終わり!

 ……と思ったら、間違いなのですね。

 正解は

(借方)当座預金 400,000 (貸方)受取配当金 500,000

(借方)仮払法人税等 100,000 

になるようです。

なぜいちいち仮払法人税等として仕訳せねばならないのか

 ぶちあたる疑問(というか不満)は、「源泉徴収されてるものはそこで処理が終わってるのだから、受け取ったお金だけ考えればいいじゃん!」ということです。

 なぜわざわざ仮払法人税等として処理するのでしょうか?

 これは、一般人が配当を受け取ったらどうすべきか?の延長線上にあると考えると良さそうです。

私が配当金を受け取った場合のお金の流れ

 たとえば私がトヨタの株を100株買ったとします。配当期日が来て、一株あたり220円の配当に決定されました。そうすると、220×100=22,000円が受け取れる配当金の金額になりますが、銀行に振り込まれるのは約20%の所得税が引かれた後のおよそ17,600円になります(つまり、この時点で約4,400円を納税しています)。

 年度末に確定申告をします。総合課税で申告した結果、支払うべき所得税は0円になったので、すでに納付していた約4,400円は還付されることになりました。

 以上は単純化したお話ですが、株式投資をしているとこういうことがよくあります。配当所得は総合課税で申告すると源泉徴収時の税率より税率が下がる場合がありますし、配当控除という制度もあるからです。

 さて、確定申告をする時に必要になる数字はどの数字でしょうか? 17,600円という実際に銀行に振り込まれた数字ではありません。22,000円という源泉徴収前の数字と、源泉徴収された4,400円という数字の二つです。

 税額の計算の際には、まず税引前の数字に基づいて一から税額を算出し、そこから源泉徴収済みの税額を差し引いて、納付すべき金額(あるいは還付を受けるべき金額)を算出するからです。

法人の場合も似たようなもの

 で、法人税の申告書を見てみると、法人税の算出の際は、所得税の額を控除することができるようです。別表六(一)という様式を見ても、必要な数字はやはり税額控除前の数字と税額のようです。

 国税庁のHPにも次の通り書いてあります。

法人が支払を受ける利子等、配当等、給付補てん金、賞金などについて、所得税法租税特別措置法又は復興財源確保法の規定により源泉徴収される所得税及び復興特別所得税の額(分配時調整外国税相当額(コード5761)を除き、以下「所得税等の額」といいます。)は、法人税の額から控除することができます。

  従って、法人税を適正に算出するためには、自分が実際に受け取ったお金だけでなく源泉徴収されたお金もきちんと管理しないといけないということになります。そのため、上で書いたような仕訳になるというわけですね。

租税公課は?

 それは分かったとしても、一つ迷う要素があります。

 租税公課って勘定科目もあるじゃんと。仮払法人税等の代わりに租税公課を使ったらあかんのかいと。

 会計においては、租税公課法人税等には明確な線引があるようです。

 要するに、法人税等は法人の所得に対してかかる税、租税公課は法人の所得とは関係なしにかかる税ということのようです。

 租税公課は必要経費になりますが、法人税等は必要経費になりません。ですので、法人税の計算においてもこの区分は非常に重要なものと思われます。

 「じゃあ、所得税は?」といえば、配当という所得に対してかかる税だから法人税等になる、ということなのではないでしょうか。

 「でも、法人税から控除できるんでしょ?」と問われれば、所得税は必要経費として算入できるわけではないんですね。すでに算出された法人税から差っ引けるんです。

 たとえば、収入が200万円、経費が70万円、仮払の所得税が30万円、税率が30%だったとします。以下を見てください。1番は所得税を必要経費にできるパターン、2番は所得税法人税から差っ引けるパターンです。

  1. (200万円 ー 70万円 ー 30万円)×30% = 30万円
  2. (200万円 ー 70万円)×30% ー 30万円 =  9万円

2番の方が圧倒的にお得ですね。というか、1番では実際に30万円納めているのに、税額から引かれるのが9万円だけという不合理な結果になってしまいます。

 だから、源泉徴収された所得税は、必要経費になる租税公課とは完全に別物なんです。

まとめ

 ごちゃごちゃと書きましたが、一言で言えば、「法人税の申告まで意識して考えれば分かる!」ということですね。

 圧縮記帳法人税が関わっていましたし、簿記を完璧に理解するためには、法人税まで理解できていないといけないということがうっすら示唆されている気がします。逆に言えば、簿記の勉強をしていれば法人税の勉強にもなるかもしれません。