Q備品10,000,000円の取得に当たり、国庫補助金5,000,000円を受け取り、会計処理を行っていた。この補助金を返還しないことが確定した。直接控除方式により圧縮記帳の処理を行った。
まあー、取っ掛かりもつかめない問題です。直接控除方式とあるから
(借方)??? 5,000,000 (貸方)備品 5,000,000
となることはなんとなく予想ができますが、???には何が入るのでしょうか?
補助金をもらった時の仕訳
まず、補助金をもらった時の仕訳は以下の通り。
(借方)現金 5,000,000 (貸方)国庫補助金受贈益 5,000,000
勘定科目はどのような形で受け取ったか、どのような名目で受け取ったかによって変わってきますが、おおむねこうなります。
ポイントは、補助金をもらったらそれは利益になるということです。税金がかかります。コロナの関係で様々な給付金や補助金が発生していますが、そのうちのいくつかは課税されるというのを小耳に挟んだことがあります。
しかし、補助金を500万円受け取ったことで、仮に150万円の法人税負担が発生するとします。この補助金を10年使う備品の購入にあてた場合、まだ備品を購入したメリットを享受していないにも関わらず、150万円の税負担が発生することになります。
まあ本当なら自分で全額負担しなければいけなかったわけで、別に損しているわけではありませんが、なにか釈然としないものがあります。減価償却や長期前払費用のように、費用と利益の享受のタイミングを合致させようとするのがこれまでなんとなく学んできた会計マインドです。だったら、利益にも同じようなしくみがあればいいのに!
そういう理由かどうかは分かりませんが、圧縮記帳という手法が用意されています。
圧縮記帳
圧縮記帳は、補助金で購入した固定資産のうち補助金相当額を損失とすることで、税負担を先延ばしにすることができる制度です。
仕訳の方法
補助金を受け取ってから圧縮記帳するまでの仕訳は以下の通り。最後が圧縮記帳です。
(借方)現金 5,000,000 (貸方)国庫補助金受贈益 5,000,000
(借方)備品 10,000,000 (貸方)現金 10,000,000
(借方)固定資産圧縮損 5,000,000 (貸方)備品 5,000,000
こうすることで、国庫補助金受贈益と固定資産圧縮損が相殺されてプラマイ0になります。つまり、法人税も補助金に関してはかかりません。
支払う法人税の額は変わらない
法人税は支払わずに済みましたが、備品の価額が下がったので、減価償却費も減ります。
たとえば、本来であれば、10年の間、毎年100万円の経費を申告できたところが、50万円しか申告できなくなるとします。前者であれば、法人税を30万円下げる効果あったとして、後者では15万円しか法人税を下げることができません。
少し分かりづらいかもしれないので、もう少し具体的な状況を設定してみましょう。もし仮に法人の収入が200万円で、法人税が利益の30%だとすると、法人税の額は以下の通り。
- 経費がない場合:200万 × 30% = 60万円
- 経費が100万円の場合:(200万 - 100万) × 30% = 30万円
- 経費が50万円の場合:(200万 - 50万) × 30% = 45万円
損失を計上すると、損失×税率の分だけ減税効果があることが分かると思います。
さて、そうすると圧縮記帳によって、差額の15万円が法人税に上乗せされてしまいます。これが10年続くと……150万円の法人税を支払うことになります。
圧縮記帳を行わなかった場合の法人税も150万円、圧縮記帳を行った場合の法人税も150万円。
よって、圧縮記帳をしようがしまいが、最終的にトータルで支払う法人税の額は同じです。払うタイミングが異なるだけです。
まとめ
というわけで、圧縮記帳とは、補助金等による法人税負担を先延ばしにする手法だということが分かりました。
そして、「費用も利益もそこから受け取った便益と同じタイミングで計上する」という簿記の世界のルールが改めて見えてきたような気がします。
なお、この圧縮記帳は掘り下げるともっと複雑なようです。問題に直接控除方式とあることからも察せられるように、積立金方式という別の方式もあるみたいです。
が、今回は簿記2級の範囲だけ、ということでここまでにします。