たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

奈良旅行記 古寺に学ぶビジネスの知恵(?)

今週のお題「何して遊ぶ?」

 

 ゴールデンボールウィークは奈良に行ってきました。

一日目

 一日目。まずは京都駅から近鉄奈良線で40分かけて西ノ京駅へ。降りるとそこはファースト目的地である薬師寺です。

薬師寺

 「薬師〇〇」を見たら、「これは誰かが誰かの病気を治したくて作ったんだなあ」と想像するところです。実際、天武天皇が奥さん(後の持統天皇)の病気平癒を祈願して建てたのがこのお寺の由縁。もともとは飛鳥の地にあったものを平城京遷都に合わせて移築したのがこの薬師寺。「飛鳥って言われても分からねえよ」という方が大半だと思うので補足しておくと、広い奈良盆地の南端にあるのが飛鳥。北端にあるのが平城京西ノ京駅はその名のとおり平城京の南西部に位置します。

 薬師寺の目玉といえば、なんといっても東塔。創建当時から残る唯一の建物であることも重要なのですが、それよりも大事なのがその美しさ。どこかの誰かが「凍れる音楽」と称したそうな。君も感じてみないか? 木材の奏でるハーモニーを。

 ちなみに売店では「東塔(とうとう)のトートバッグ」というイカしたお土産が売っていましたわー。トートバッグを持ってなかったら買いたかったぜ……!

 この塔の対になる位置には、西塔があります。西塔は1981年に再建されたもの。古から生き残ってきた東塔と、その遺伝子を受け継ぎつつも新しい西塔。新旧のコラボレーション。ツインタワーといえばマレーシアのペトロナス・ツインタワーが有名ですが、日本には薬師寺のツインタワーがあるということを忘れないでいただきたい。

 西塔はこれでもまだ古い方で、大講堂は2003年、食堂は2017年に再建されたものだそうな。薬師寺は近年までかなり荒廃していたようです。復興を推し進めたのが、高田好胤管守。本当に復興しなければならないのは伽藍ではなく人々の心だ、ということで(?)埼玉の慈恩寺から玄奘三蔵法師の遺骨を分けてもらって、1991年には玄奘三蔵院伽藍を新築までしています。

 そんなわけで、現在進行系で復興、興隆を進めようとしている古くて新しいお寺、それが薬師寺。今までに訪ねたどんなお寺よりもエネルギーに満ちていた気がしました。

唐招提寺~ホテル

 薬師寺を出て北上すると間もなく唐招提寺が現れます。

 唐招提寺はその名のとおり唐のお坊さんのためのお寺です。唐のお坊さんといえば、そう、鑑真ですね。鑑真といえば六度に渡る挑戦の結果、ようやく日本にたどり着いたものの、その頃には失明してしまっていたなんて話が有名です。当時は東シナ海横断は大変だったんだなあと思わされるエピソードですが、この後行った平城宮跡の展示によると渡航の成功率はそこまで低くなかったようで、「えっ、鑑真さんってめちゃくちゃ運が悪いだけの人だったの!?」となりました。(ウィキペディアを見てみたら、失敗のうち3回くらいはそもそも渡航すらできていないようでした。)

 唐招提寺を出て、北へ2,30分歩くと平城宮跡へ。バスが来るのが遅かったため歩いたものの、それならば素直に西ノ京駅へ戻って電車で西大寺駅へ行ったほうが良かったんじゃないか。何十分も歩くのは疲れるし、日に焼けるし、汗かくし……馬鹿のやることですよ、馬鹿の!

 そうしてたどり着いた先の平城宮跡には立派な門と広大な野原があります。

 奈良には何もないがある。ミロのヴィーナス理論と同じで、空白がある方が平城京雄大さに思いを馳せることができるとは思わんかね?

 この後、無料のバスでJR奈良駅まで行き、ならまちエリアのホテルへ。今回、初めてドミトリー(相部屋)を利用したのですが、ベッドメイキングと二段ベッドを上り下りする時に緊張することを除けば意外とそんなに悪くなかったですね~。一人旅なんて夕飯を食べてしまえば、スマホいじるくらいしかやることないんで同じ部屋に人がいるかどうかなんてあまり関係ありません。「宿にお金をかけたくない!でもドミトリーは恐い!」という人は一回チャレンジしてみるのがいいかもしれません。

二日目

興福寺

 坂を登れば現れる鹿。鹿に導かれた先に見えるのが興福寺

 興福寺藤原氏の氏寺です。藤原鎌足の息子、藤原不比等平城京遷都と同時に建立。平城京を見下ろせる立地にあることからも、藤原氏の権力が垣間見えます。その後、藤原氏の権力が増大していくにつれ、この興福寺奈良県全体を支配するようになったのだとか。要するに、興福寺はすげえ寺だってことですわ。

 そんなすげえ寺だったのだから今もでかい寺で当たり前と思うかも知れませんが、当たり前じゃないんですね。寺というものは何回も災害にあって、そのたびに破壊され、復興されなければ存続できない生き物です。古ければ古いほど、困難に遭う回数も増えますし、権力基盤も揺らいでいきます。藤原家の力が大きかった頃はともかく、江戸時代にもなると、さすがの興福寺もそう簡単には焼失したお堂を再建することができなくなっていたそうな。

 寺の最重要施設といえば金堂ですが、興福寺は金堂の再建を後回しにして、南円堂の再建に着手します。というのもこの南円堂、西国三十三所巡りの札所だったので、集客力があったのです。権力者からお金を集められなかった興福寺は、民衆にターゲットを絞ったというわけです。

 ちなみに、円堂は先人を祀る建物で、興福寺には北円堂と南円堂の二つがあります。北円堂は藤原不比等のために、南円堂は藤原冬嗣が父の藤原内麻呂を弔うために建てたんだとか。

 人を惹き付けるものは大別すると三つに分けることができます。巨大・無数・派手興福寺五重塔奈良県で一番高い建物です。木造建築物としては東寺タワーに次ぐ大きさ。

 塔の源流は仏舎利(釈迦の骨)を納める卒塔婆。人はかつて寺の精神的支柱という名目で塔を建て、現在は電波を送信するという名目で塔を建てとるわけです。東京の観光地といえば東京タワー&東京スカイツリー! でかいは正義! 果たして、人は宇宙に出てもタワーを建てるのか? 気になるところです。

 ついでにいえば、興福寺には無数の鹿もいます。(もう一つついでに言うと、興福寺には有名な阿修羅像があります。)奈良に来たら興福寺に行くシカない!

東大寺

 そして、寺のデカい代表といえば東大寺

 大仏もでかけりゃ大仏殿もでかい。南大門もデカい。

 しかも東大寺の大仏殿内は撮影可。有り難いことです。なるべく人が映らない写真を選んでアップしているので写真からは分からないでしょうが、人の少ない奈良にあって、東大寺周辺に限っては人口密度がかなり高かったです(並んだりとかはそんなにないけど)。やはりデカいは正義。

 こんだけでかい建造物は、鎮護国家思想とかいう現代からすれば考えられない政策の賜であるはずで、時代が経てもそうホイホイと建てられるものではありません。木はそう早く育たないので、巨大木材は時代を経れば経るほど希少になっていくという面もあります。そう考えると、立派なお寺は新築するよりリノベーションした方が色々な意味で経済的だったのでは。古いお寺が今もなお残っている裏にはそういう事情もあったのかな……という妄想が広がります。

 お水取りで有名な二月堂も眺めが良くて素晴らしい。

 昼食はここで茶粥を食べましたが、鹿糞の匂いのせいか、単に舌に合わなかったのかあんまりでした……。

 正倉院を見忘れていたことに気付き、北へ歩くも門が閉じていて見られず! この後、南にある春日大社に行くつもりだったので最悪の無駄足! 東大寺は境内も広いからこのタイムロスは辛いぜ! 正倉院が開いているかはちゃんと調べよう!

春日大社

 春日大社は回廊にたくさんの灯籠が吊るしてある神社で、奈良の人気観光スポット筆頭の一つ。やはり「数が多い」が人を呼び寄せるのか?

 この灯籠、神社が金をかけて作ったり買ったりしたものではなくて、武将なりなんなりが願いを込めて寄進したもの。人の金でゲットした物で集客するって最強のビジネスじゃないか???(リサーチに基づいて語っていないので、もしかしたら神社側の持ち出しがある可能性もありますが。)

 しかも、春日大社さん、灯籠は明かりが灯っている時が一番美しいというのが分かっていて、灯籠を灯した暗い部屋を用意しています。しかも鏡張り。狭い部屋の中に無限の灯籠を現出させている! よく分かってる感が半端ない。商売上手すぎる。

 ちなみに、奈良公園に鹿がたくさんいるのは春日大社が神の使いとして保護してきたからだそうな。思想は生態系を形作る。

 この後、ミニチュアの五重塔という面白い国宝がある元興寺に寄って宿へ。

信貴山宝蔵院

 宿泊に関しては今回もう一つチャレンジがあって、それが宿坊に泊まろうというもの。本来は寺に泊まれるというだけでありがたいのですが、ゴールデンボールウィークでも宿泊料金が(たぶん)上がらないという素晴らしいおまけが。

 せっかくお寺に泊まるということで夕飯は精進料理を選びました。精進料理というくらいだからそんなに美味しくないんだろうと予想していたのですが、これが美味! 「坊さんがこんな美味しいもん食っていいんか!?」と思ってしまうくらい。今回の旅行で一番美味しかったのは間違いなくここの精進料理でした。

 問題が一つあるとすれば、アクセスが非常に悪いこと。公共交通機関を使うと、JRで王寺駅まで行って、そこからバスで信貴大橋までというのがグーグルマップで出てくる最も経済的なルートなのですが、このバスの本数が非常に少ない。そのため、異様に時間をかけるかタクシーを使わないといけないのです。車を使っていくなら非常におすすめですが、公共交通機関を使っていくつもりなら、旅程はよく練った方がいいかもしれません。ついでに問題を言うと、境内にはたぶん夜通し灯りが灯っているのですが、私の部屋ではこれが眩しくてなかなか寝られなかったですね。

三日目

法隆寺とか

 法隆寺といえば聖徳太子が建立した、世界一古い木造建築として有名です。奈良の寺といえば法隆寺でしょ、という人も多いのではないでしょうか。

 しかし、人を呼び寄せるものは巨大・無数・派手。世界一だろうが、古さでは人を呼ぶことはできない! そういうわけなのか、法隆寺はネームバリューに比して、かなり人は少なめです。ゴールデンボールウィークなのにそう感じるんだから、いわんや普段をや。

 古さでは人は呼べないとか言いましたが、法隆寺はかなりアクセスが悪いです。最寄り駅から20分以上歩かなければたどり着けないし、バスは例のごとく一時間に数本の頻度。法隆寺の人気の無さはたぶんこれが最も大きい理由でしょうね。

 とはいえ、来てみればさすがに法隆寺です。国宝が非常に多く、「これ教科書で見たやつだ!」がたくさんあります。

 有名な夢殿。これも円堂なわけですが、興福寺のところに書いたように円堂は先人を祀る施設です。法隆寺の夢殿もやはり聖徳太子を祀っています。法隆寺にはもう一つ西円堂があるのですが、これも誰か先人を祀っているはず。

 その後、ほぼ法隆寺と一体の中宮寺に行った後、法輪寺法起寺へ。レンタサイクルを借りたのですが、これが大正解。歩くにはかなり遠い道のりでした。自転車だけでなく、法輪寺法起寺も貸切状態でした(ゴールデンボールウィークなのに!)。法隆寺のある一体は斑鳩といいますが、斑鳩は本当に人が少なかったですね~。お土産屋の奈良祥樂は良い感じのお店なので、お土産をじっくり選ぶならここが良いかも知れません。

京都駅での暇の潰し方

 法隆寺駅から奈良駅まで行きて、名物のかき氷を食べてから、少し早いものの京都駅へ。

 少し早いとか言いつつ、京都駅に着いた頃にはすでに5時。新幹線は7時発なので2時間をどう潰すか?という問題が。5時をすぎると観光スポットはだいたい閉まっているので、なかなか難しいのです。

 今回はなんとなく京都駅の上に登ってみることに。イルミネーションで飾られた巨大な階段を登ると屋上から景色を眺められるではないですか。しかも、近くのフロアには拉麺小路など飲食店が立ち並ぶエリアが。次からも京都駅で時間が余ったらここに来ようと誓ったのでした。

 そんな感じで旅は終了。

 

 今回の旅へ行く前に読んでおいた本が↓。

 今回の記事を書くに当たっても参考にした点がいくつかあります。奈良をより深く味わいたいなら読んでみて損はないかも。

 


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