たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

鎌倉五山を巡ってきました

今週のお題「お花見」

 

 昨日、鎌倉五山を制覇する旅に行ってまいりました。

 五山とは、鎌倉時代から室町時代にかけて幕府が作った寺院のランキング(たぶん)。京都と鎌倉でそれぞれランキングが設定されていて、つまりは鎌倉五山とは鎌倉トップ5の寺のことなのである(たぶん。あと臨済宗限定)。

 日本人はランキングが好きな生き物です。古来から温泉地でも相撲でもやたらと番付を行っておりますし、模試の成績上位者一覧を眺めているとテンションが上りますね。スポーツを見なくても世界ランキングやリーグ順位表を眺めているだけで楽しめます。というわけで、鎌倉五山という文字を眺めているだけで期待が膨れ上がります。

 ちなみに、鎌倉五山は次のとおり。

  1. 建長寺
  2. 円覚寺
  3. 寿福寺
  4. 浄智寺
  5. 浄妙寺

鎌倉の頂点、建長寺

 まずは序列第一位の建長寺へ。

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 北鎌倉駅から徒歩10分ほどの場所にあり。隣には桑田佳祐堺正章の母校である鎌倉学園中学校・高等学校が! Wikipediaを見ると、案の定、鎌倉学園の創設には建長寺が関わっていそうな雰囲気が醸し出されている。建長寺なくしてサザン・オールスターズなし。そういうこと。

 それにしても鎌倉五山の頂点に君臨するだけあって、立派な山門だぜ~~!!とテンションが高まります。

 この山門を抜けたところには大きなビャクシンが。実は建長寺で創建当時から残されているものは、梵鐘を除けば、ただこの巨樹のみだけだそうな。

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 創立当時の遺構がない建長寺だからといって、侮ることなかれ。ここには増上寺の遺構が残されているからです。

 増上寺は徳川家の菩提寺菩提寺というのは死者の冥福を弔うための寺のことで、まあ要するに徳川家お抱えの寺というわけであります。仏教が流入して以降の古墳、もっと分かりやすく言えば日本版ピラミッドと言ってもたぶんそんなに間違っていないのでは。徳川幕府の将軍家が建てたピラミッド、さぞ壮麗であったでしょうが、我々はもう目にすることができません。なぜならば、東京大空襲でほぼ燃え尽きてしまったからです。

 そんな幻のピラミッド、増上寺の幻影を拝めるのが建長寺なのであります。というのも、徳川家光の時代に「増上寺をアップデートするぜ~!」という動きがあり、「でもアップデート前の建物もだいぶ立派ですわよ?」という感じだったので、「捨てるくらいならうちにくれ!」と(言ってはいないと思うけど)建長寺が譲り受けたのです。

 それが、現在の仏殿と唐門。下がその唐門です。

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 ちなみに、2011年に修理されたそうで、それ以前よりもかなり綺麗になっているらしい。

 この唐門の横から入れる方丈には庭園があります。都会の喧騒を離れてゆったりと庭を眺める時間は、なによりも贅沢なものだと思いませんか?

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 Wikipediaを見ると、「夢窓疎石の作といわれる」と書いてあります。夢窓疎石といえば、天龍寺の庭園を作った人! 天龍寺の庭園は本当に美しいので、京都に行ったらぜひ立ち寄って欲しい場所です。

 建長寺の奥には半僧坊という場所が。なにかと思ったら、鳥居があるわ、幟に権現とか書いてあるわ、神社でした。烏天狗がいるし、完全なる神仏習合神仏分離の影響を受けなかったのかと疑問を抱きながら山を登ると、解説板に答えが書いてありました。この神社は明治23年に入ってから作られたのだとか。神仏分離の後に作られた神社だったというわけです。

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 自然豊かな山道。桜だけが花じゃない!

 ここに限らず、豊かな自然(を始めとして、スゴイ何か)を守るために日本人は神社を建ててきたのだとしたら、神社というのは古来から伝わるナショナルトラスト運動なのでは?……という妄想をしながら歩きました。
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 でもやっぱ桜も綺麗ですね。

 帰り際に、初めて御朱印帳を買いました。駅前には円覚寺もあるのになぜ最初に建長寺に来たのか? その答えがこれです。せっかくお金をかけて御朱印帳を買うのならテンションが上がるやつが欲しいじゃないですか。一番テンションが上がるのはやっぱり、一番立派な寺の御朱印帳でしょう。

けんちん汁を食す

 建長寺を出て、北鎌倉駅へ向かいます。道すがら、長寿寺にふらっと立ち寄ると、もうお昼時です。

 せっかくなのだから建長寺発祥のけんちん汁を食べたい! ちょうどそこに、看板にけんちん汁を掲げた五山というお店が。あじさいセットなるものを注文しました。精進料理っぽい健康的な味付けながらしみじみと美味しかったですね。

第四位の浄智寺

 お次は鎌倉五山第四位の浄智寺です。『とある科学の超電磁砲』でいうと麦野沈利です。

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 かつては壮大な寺院だったようですが、鎌倉の衰退&関東大震災でほとんどが壊滅したようで、今では自然豊かなひっそりとした寺院になっています。

 山肌を削って色々と祀っている様子には、若干の石窟寺院風味を感じました。

 この後、東慶寺にも寄りましたが割愛。

鎌倉五山第二位は円覚寺

 鎌倉五山の第二位は円覚寺北鎌倉駅から降りるとそこは円覚寺

 参道を登り、中に入っていくと、巨大な山門が。

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 さらに、先に行くと、これまた夢窓疎石の作とされる妙高池を復元した池があります。

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 ランキングでは第二位に甘んじているものの、円覚寺には建長寺よりもすごいものがあります。それが国宝。そう、あの円覚寺舎利殿です。神奈川県唯一の国宝建築物。

 が、通常は一般公開されていないようです。ストイックやね~。

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 次の写真は白鹿洞。円覚寺の創建に当たって、無学祖元氏の法話を聞くためにここから白い鹿が群がってやって来たという伝説があり、円覚寺山号は瑞鹿山となったそうな。
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 絶対嘘やん。エイプリルフールだからちょうどいいものの。本当だとしてもせいぜいタイミングよく鹿の群れが通りがかってその中にアルビノの鹿がいたくらいなもんでしょう(それでも十分奇跡的だけど)。

 神社仏閣にはよくこういう「絶対嘘やん」エピソードがありますが、たぶん箔を付けるための方便だったのでしょう。企業がイメージキャラクターに芸能人を起用するノリと考えると、むしろそこから当時の人々の知恵や価値観が見えてくるかもしれません。
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 方丈の庭です。

 円覚寺にはもう一つ国宝がございまして、それが梵鐘。これを見るためにはわりと長い階段を登らなくてはならなくてですね、非常にしんどかったですね。

 階段を登った先で下界を眺めながら、「鎌倉五山には鎌倉の要衝を守るという役割があったりしないかなあ」ということを妄想しました。というのも三方を山に囲まれた鎌倉へ行くには道が限られています。建長寺巨福呂坂寿福寺亀ヶ谷坂浄妙寺は金沢街道と、ちょうどその道にあります。戦国武将が兵站のために寺を建てることもあったみたいな話を読んだことがあるので、防衛拠点としての役割があったのでは……みたいな。(でも現在の鎌倉五山室町幕府が設定したものなので理屈に合わないかもしれない。)

鎌倉五山第三位の寿福寺

 円覚寺を出た後はJRに乗って鎌倉駅へ。静かな北鎌倉駅と違って、鎌倉駅は人、人、人! ここだけ異様に人が多すぎる。

 浄妙寺は結構離れているので、先に行こうと思いましたが、現金が枯渇したのでコンビニに寄るついでに先に寿福寺へ行くことに。

 寿福寺鎌倉五山の第三位。北条政子が開基で、栄西が開山というなかなかな肩書のお寺。

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 なのですが、境内を一般公開しておらず、良く言えば硬派、悪く言えば寂れた印象。たぶん境内に入れたとしてもそんなに見どころはなさそうな雰囲気です。るるぶに取り上げられていないのも納得。

鎌倉五山第五位、浄妙寺

 鎌倉駅に戻り、バスで浄妙寺へ。参道の桜並木が素敵。

 中はやはりそれほど立派な伽藍はないものの、枯山水を楽しみながらお茶を飲めたり、イングリッシュガーデンがあったり小洒落た雰囲気があります。

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 こうして鎌倉五山を制覇したわけですが、感じたのは盛者必衰ですね。建長寺円覚寺は流石に大寺院の趣ですが、他の三寺院は平均より少し大きめくらいです。

 平安時代からずっと都であり続けた京都と違って、鎌倉時代武家政権があっただけの鎌倉はそれほど富も集まらなかっただろうし、復興したくてもできなかったのかもしれません。そもそも復興したいと思う人も現れなかったのかもしれません。

 そう考えると、鶴岡八幡宮があれだけ栄えているのが不思議に思えてきます。当たり前じゃねえからな! 鎌倉駅前から鶴岡八幡宮までずっと混雑してるの当たり前じゃねえからな! 私はそう言いたい。

 いやしかし……帰りに鎌倉かつ亭あら珠総本店で食べたヒレカツとエビフライがめちゃくちゃ美味しかったなぁ