学園のカウンセリングルームにて。
「私、最近アニメにハマってるんです。『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『東京リベンジャーズ』……最近流行りのアニメはすべて見ています」
「深く……もっと深く……」
「この間、ツイッターでクソリプを食らったんです。そいつは私のことを『ニワカ女、お前はアニメのことを何も分かっていない』って馬鹿にしたんです。それ以来、ニワカという言葉が棘のように刺さって抜けないんです。私はニワカなんでしょうか? ニワカではいけないのでしょうか!?」
「分かりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの見るアニメは用意してあります」
カウンセラーが少女にブルーレイディスクボックスを手渡す。
「これは……」
「神アニメ。百万人のヲタクの胸に刻み込まれた、神聖なアニメです。アニメの沼は世界の果てへと続いています」
テレビに映し出された映像を見て、少女は目を見開く。
「もう抜け出せないよ。これが君の新たな心臓、新たな命だ。世界の果てに咲き誇る『少女革命ウテナ』、君に!」
「ああああああああああ!!!!」
卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。
我らは雛、卵は世界だ。
世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。
世界の殻を破壊せよ。
というわけで、今日は見るアニメに迷ったら『少女革命ウテナ』を見ようというお話です。
なぜならば、『少女革命ウテナ』を見ることで、様々な道があなたの前に広がることになるからです。
『少女革命ウテナ』を作り上げた天才たちを通して、ウテナを見ると次に見るべきアニメがどう決まるのかについて語ります。
OPも( ・∀・)イイ!!
幾原邦彦ルート
まず、アニメの質において決定的に重要な役割を果たすのが監督です。
聞いたことがない?
いや、あなたは知っているはずです。
忘れているだけで。
この幾原邦彦監督、あの『美少女戦士セーラームーンR』を手がけています。
『セーラームーン』がどんな作品か、説明する必要はないでしょう。
日本人であれば誰もが知る名作です。
これは幾原邦彦監督の監督デビュー作でもあります。
この事実だけでも幾原邦彦の天才っぷりがうかがい知れますね。
というわけで、『少女革命ウテナ』を見たら、次に見るべきは『美少女戦士セーラームーン』です。
(※なぜか12話が表示されてますが、プライムビデオのセーラームーンのページに飛びます。以下同じ現象が続く。)
セーラームーンを見たことがない人はプリキュアみたいなものと思っているかもしれませんが、全く違います。
セーラームーンのほうがより大人向けです。
そんじょそこらの深夜アニメよりもはるかにドラマチックな展開が待っています。
『美少女戦士セーラームーン』(無印)は最終回で主人公たちが全員死にます。
美少女戦士全滅エンドです。
子供向けアニメでそれはファンキーすぎる。富野アニメかよ。
とはいっても転生する(記憶は失われる)ので、ギリギリのラインは踏みとどまっています。
美少女戦士セーラームーンS
セーラームーンシリーズは傑作揃いですが、特に注目していただきたいのが3作目の『美少女戦士セーラームーンS』です。
この作品の何がヤバいかというと、百合界のカリスマが登場します。
短髪イケメンのセーラーウラヌス。
長髪美女のセーラーネプチューン。
この二人のカップルです。
ちょっと匂わせる程度ではなく、ガッツリ百合です。
土曜のゴールデンタイム、平均視聴率10%超の国民的アニメで堂々たる百合を描く。
時代の先を行き過ぎているぞ、セーラームーン。
さらにヤバいのが、庵野秀明が関わっています。
『新世紀エヴァンゲリオン』と『シン・ゴジラ』で今や世間的認知度も高いあの天才、庵野秀明が関わっているのです。
カリスマのバンクシーン(変身シーンや必殺技の何回も繰り返して使われる一連のカット)を担当しています。
めちゃくちゃカッコいい!
庵野秀明がセーラームーンシリーズに関わったのは作品が彼の心に響いたからです。
『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサトが月野うさぎ(セーラームーン)と同じ声優で同じ前髪なのは偶然ではありません。
ここらへん深堀りすると色々なエピソードがありますが、割愛します。
輪るピングドラム
10年以上の時を経て、2011年、ついに復帰。
発表した作品が『輪るピングドラム』です。
幾原邦彦らしい謎めいたストーリーと演出で、放送当時話題になった作品です。
魅せるバンクシーンを作る手腕と、美麗な画作りは全く衰えておらず、ぜひ見ておきたい作品です。
佐藤順一ルート
セーラームーンシリーズで幾原邦彦が監督を務めたのは2作目の『美少女戦士セーラームーンR』からです。
『美少女戦士セーラームーン』は違う監督が務めています。
その監督こそ佐藤順一です。
この佐藤順一監督もヤバイやつです。
彼のヤバさはそのヒットメーカーぶりにあります。
彼が携わった作品を見ていきましょう。
有名作品目白押しです。
私と同年代の人間であれば、彼の関わった作品を一つとして聞いたことすらない人は少数派のはず。
その才能は早くから認められていて、名門・東映アニメーションにおいて最年少監督デビューの記録を持っています。
『少女革命ウテナ』でも超重要な回で絵コンテを担当しています。
「セーラームーンでは最初のシリーズが一番好き!」という方は佐藤順一監督作品をさらっていくのがおすすめです。
上に挙げた作品以外だと、『カレイドスター』と『たまゆら』が個人的にはオススメですね。
『カレイドスター』は日本人の少女がアメリカのサーカス団に加入し究極の高みを目指す話。イイハナシダナー要素と胸アツ要素を兼ね備えている。
榎戸洋司ルート
『少女革命ウテナ』のシリーズ構成(脚本のリーダー的な存在)を担当しているのが榎戸洋司氏です。
『少女革命ウテナ』っぽさのかなりの部分を占めているのが榎戸洋司成分です。
初めて名前を聞いた?
いや、そんなことはないはずです。
なぜなら、彼は『新世紀エヴァンゲリオン』にも関わっています。
テレビにも関わっているし、映画版でもしっかりと脚本に名を連ねています。
幾原邦彦監督とは高校時代からの知人であり、その縁で脚本家デビューしたという経緯があります。
よってセーラームーンシリーズにもSから関わっています。
私が特にオススメしたいのは
- 美少女戦士セーラームーンSuperS
- 桜蘭高校ホスト部
- STAR DRIVER輝きのタクト
- フリクリ
名作揃いです。
セーラームーンシリーズで個人的に一番好きなのがこのSuperS。ちびうさとペガサスの恋が切ない。って、冷静に考えると百合に続いてケモナー要素ぶちこんでる!
『桜蘭高校ホスト部』は全体としてあっけらかんとしたコメディーだが、要所でウテナみを感じさせる。
「スタドラ」といえば『スタンドバイミードラえもん』ではなく『STAR DRIVER輝きのタクト』。これを見たあなたは作画オタクの道へ踏み出すことになるかもしれない。
五十嵐卓哉ルート
セーラームーンは佐藤順一から幾原邦彦に引き継がれたあと、彼からさらに別の男の手に渡ります。
その男の名こそ、五十嵐卓哉。
セーラームーンシリーズを託されるイコールそれだけ信頼が厚い証拠です。
彼はおジャ魔女どれみシリーズでも佐藤順一監督の後を継いでいます。
榎戸洋司氏は『少女革命ウテナ』以降、五十嵐監督と組むことが多く、上に挙げた『桜蘭高校ホスト部』と『STAR DRIVER輝きのタクト』は五十嵐監督作品です。
榎戸洋司作品を追えば、五十嵐卓哉作品を追うことになるでしょう。
逆もまた然り。
『鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST』のOP2がイガタク演出なのですが、中村豊氏の作画もあいまって超絶にかっこいい。
細田守ルート
『少女革命ウテナ』を語る上で欠かせないのが細田守の存在です。
『少女革命ウテナ』の中でもとりわけ素晴らしい回は、だいたい細田守演出によるものです(クレジット上は橋本カツヨという名義を使っています)。
アニメの演出なんて意識したことがない、という人もいるかもしれませんが、そういう人こそ『少女革命ウテナ』を見るべきでしょう。
演出によって作品の質は全く変わります。
当時の細田守監督は才能がほとばしっています。
細田守を語る上でも『少女革命ウテナ』は欠かせないといって過言ではありません。
「わたし細田守監督の映画が好きなんだよねー」
と言っている女子がいたら、
「ウテナで一番好きなのはどの話!?」
と突っ込んでみましょう。
「わたし化粧品はプロクター・アンド・ギャンブル派なんだよね」
と言われたら、そいつはモグリです。
それはさておき、細田守作品は有名なので逐一作品名も挙げませんが、マイナーどころで見ておきたいのは『ぼくらのウォーゲーム』ですね。
この短時間でこれだけのドラマを詰め込めるのかと驚愕します。島根県民には特にオススメしたい。
庵野秀明ルート
上に挙げたように、『美少女戦士セーラームーンS』に参加している庵野秀明監督。
ウラヌスとネプチューンのバンクにシビレたら庵野秀明ルートに進みましょう。
彼の代表作と言えば『新世紀エヴァンゲリオン』です。
見ていないならまず見とけといいたい。
面白い面白くない以前に一般教養なので。
エヴァ以外だと『ふしぎの海のナディア』と『彼氏彼女の事情』のみ。
『ふしぎの海のナディア』はたしか第21話がめちゃくちゃ熱かった。
『カレカノ』は主人公たちがくっつくまでがめちゃくちゃ好きだった。
庵野作品に魅了されたのならぜひ履修しておきたいところです。
鶴巻和哉ルート&今石洋之ルート
その二つを見終えたら、旧ガイナックス系のクリエイターを追うのがよいでしょう。
特にオススメなのが、
- 鶴巻和哉監督の『フリクリ』
- 今石洋之監督の『天元突破グレンラガン』と『キルラキル』
古き良きガイナックスっぽさという点では庵野作品と通底するものがあるはず。
脚本が榎戸洋司なのでウテナみもあるフリクリ。the pillowsの曲がめっちゃいいんだ。
アニメ史上最高に熱いアニメ、それが『天元突破グレンラガン』。お前が信じるお前を信じろ!
『天元突破グレンラガン』のチームだけあってこれまた熱い。第一話が特に。
まとめ
というわけで、『少女革命ウテナ』を見ると、このように数珠つなぎのように次に見るべきアニメが見えてきます。
あなたの心に迷いがあるのなら、まずは『少女革命ウテナ』を見るとよいでしょう。
迷いがなくても見るとよいでしょう。
もっと沼にハマりたければWEBアニメスタイルあたりを見るのがオススメ。
というかウテナを見れば必然的にアニメスタイルにたどり着きます。
上にはとりあえずアマゾンプライムのリンクを貼りましたが、ラインナップが貧弱すぎてほとんど無料で見られません。
アニメを見るならdアニメストアかバンダイチャンネルが良さそうですね~。
Netflixはオリジナルアニメを制作するのもいいが古典(?)をもっと充実させてくれ。