私には感想文を書く時に使いたくない言葉があります。
それは「考えさせられる」という言葉です。
というのも、「考えさせられる」は考えないための言葉だと思うからです。
本当に考えさせられたのならば、考えた結果を書けばよい。
まだ結論には至っていないとしても、その途中経過を書けばよい。
それすら書けないというのは、そもそも自分が何を考えているのかさえ明確でない可能性が高い。いやそもそも本当に考えているのかさえ怪しい状態です。
そんな状態でも「考えさせられる」と描写してしまえば、とりあえず何かを述べた風なエモい感じを演出できます。
「考えさせられる」というのは、何らかの作品を見て胸の内がザワザワしているけど、なんでザワザワするのか分からない、このザワザワをどうすればいいのか分からない、そういうなんだか気持ちの悪い状態からローコストで解放されるための言葉だと私は捉えています。
しかし、その気持ちの悪い状態を分析してみることこそ考えることなのではないでしょうか?
仮に「考えさせられる」を使うとしても、何についてなのかをなるべく詳細に書きたいところです。
ここまで書いてから例文を探すために「考えさせられる」でググってみたら類似の記事が出てきたので、具体例を出すことで差別化を図ってみたいと思います。「考えさせられる」を使わなければ文章がどう変わるのかを具体的に見ていきましょう。
たとえば、『星の王子さま』を読んで感想を書くとします。
【原文】
『星の王子さま』を読みました! とっても考えさせられるなあ~☆✿✈
これが「考えさせられる」感想文ですね。これを改善してみたいと思います。
【改善案1】
『星の王子さま』を読みました!
「大切なものは目に見えない」
胸に響く~(*ノェノ)キャー
たくさん考えさせられる言葉が詰まっている本でした☆
具体的にどの部分に考えさせられるのかを書いてみました。これならまあ悪くないかもしれません。
でも、できればもっと詳しく書きたいところです。たとえば、なぜ胸に響いたのかを深堀りしてみたらどうでしょうか。
【改善案2】
『星の王子さま』を読みました!
「大切なものは目に見えない」
イケメンと付き合っては暴力を振るわれて別れてきた私にはとても響く言葉でした!
たしかに大切なのは、心だよね!
ウンウン☆
なぜこのヒトに「大切なものは目に見えない」という言葉が響いたのかがよく分かるようになりました。
しかし、こんな風に書けるなら、そもそも「考えさせられる」とは使わなかったかもしれません。
自分を偽らずに、正直な気持ちを書きましょう。
【改善案3】
『星の王子さま』を読みました!
「大切なものは目に見えない」
イケメンと付き合っては暴力を振るわれて別れてきた私にはとても響く言葉でした!
たしかに大切なのは、心だよね!
でも、でも、やっぱりイケメンが好き~!!
だいぶ良くなりました。こうなってくると、この感想文自体が考えさせられる文章になってきます。やはりルックスは大事なのでしょうか?
それにしても、最初は考えさせられる言葉がたくさんあると書いていたのに、一つだけになっています。字数が許すのであれば、考えたことは全部書いてしまいましょう。
【改善案4】
『星の王子さま』を読みました!
「大切なものは目に見えない」
イケメンと付き合っては暴力を振るわれて別れてきた私にはとても響く言葉でした!
たしかに大切なのは、心だよね!
でも、でも、やっぱりイケメンが好き~!!
あとキツネくんの言葉も響いたなあ~!
「君がバラのために費やした時間の分だけ、そのバラは君にとって大切なものになる」
ウンウン。私にとっても親友Aと過ごした思い出は永遠だよ!
まとまりには欠けますが、自分のために書く文章であるのならば、感じたものは全て書き出してしまったほうがよいでしょう。
しかし、欲を言えば、書きたい事柄の間になるべく繋がりをもたせたいところです。
【改善案5】
『星の王子さま』を読みました!
「大切なものは目に見えない」
イケメンと付き合っては暴力を振るわれて別れてきた私にはとても響く言葉でした!
たしかに大切なのは、心だよね!φ(..)
でも、でも、やっぱりイケメンが好き~!!ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。
そんなバカな私にキツネくんがこうささやくの・・・。Uo・ェ・oU
「君がバラのために費やした時間の分だけ、そのバラは君にとって大切なものになる」
そうかぁ・・・あんまりタイプじゃない人でも、付き合ってるうちに好きになれるものなの・・・かな?
う~ん・・・ワカンナイっ(´;ω;`)
☆彡
これで完成とします。改めて原文を見てみましょう。
【原文】
『星の王子さま』を読みました! とっても考えさせられるなあ~☆✿✈
量・質ともにだいぶ厚みのある文章になりましたね。
原文の方がバカを晒していないため知的な感じがすることは否めません。が、この文章から何を感じ取れるでしょうか? この人が『星の王子さま』を読んだという事実以外のことは何も分かりません。「ふーん、どんなことを考えたんだい?」とツッコみたくなります。
改善案ならば、同書を読んだことのない人は「こんな名言があるのか~」と思うかもしれませんし、読んだことのある人は「この人はこんな風に読んだのか~」と思うかもしれません。アマゾンのレビューに投稿すれば、100人のお客様が役に立ったと考えることうけあいです(?)。
なにより、書いている本人にとって、最初の文章を書いた時よりも考えが深化しているはず。変に気取るより、拙くても思ったことを書き連ねていって、頭の中を整理した方が良い。私はそう信じています。