たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

金利の調整

Q.令和2年5月1日に98,600,000円で額面100,000,000の満期保有目的債券を購入した。購入日までの経過利息12万円も含めて支払った。利率は0.36%、令和2年1月1日発行、令和6年12月31日償還予定である。利払日は毎年6月および12月の各月末日。これの次期繰越額および有価証券利息の当期発生額を答えよ。ただし額面価額と取得価額との差額は金利の調整の性格であると考えられるため償却原価法(定額法)を適用するが、月割計算にて求めること。決算は3月。

 

 こんな問題があります。次期繰越額は取得原価でしょ、利息は額面に利率を掛けて月割で~とやっていくと、はたと疑念がよぎります。「金利の調整」ってなんじゃ……?これは無視してはいけないのでは……?と。

 果たして金利の調整とは何でしょうか。

金利の調整とは

 債券と言えば、額面価額と利率が設定されていて、その二つを掛けた利息をもらえるものという認識が一般的です。

 しかし、世の中にはゼロクーポン債というものがあります。クーポンがゼロ=利札の付いていない債券。すなわち利率0%の債券ということです。利札とは、「現金とは」で学びました。紙の債券に付いている銀行に持っていくとお金に変えられる券でしたね。

 はてさて、利率が0%の債券? そんなもん誰が買うんだい?とお思いでしょうか。しかし、債券というのは、利息がもらえるだけではありません。償還日が訪れれば、額面価額が戻ってくるのです。ということは、販売額が額面額より低い金額であれば、その差額が利益になるということです。

 例えば、額面100万円の債券を80万円で買えば、満期保有すると20万円儲かるということですね。

 さて、この取得価額と額面価額の差は利息と考えることができます。これはゼロクーポン債に限ったことではありません。金利がちょっと低いけどその分額面よりも低い金額で販売するよ、ということがあるようで、これを金利の調整と言うようです。

どのように計上するか

 額面価額と取得価額との差額は金利の調整の性格であると考えられた場合、その差額を利息に含めます。

 今回は定額法が取られた、ということで満期までの期間で割り返して金利相当額を算出します。

有価証券利息

  • 調整相当分
    100,000,000-98,600,000=1,400,000
    当期保有月:5月~3月の11ヶ月
    満期までの月数:12ヶ月*5年-1月~4月の4ヶ月=56ヶ月
    1,400,000×(11/56)=275,000
  • 普通の金利
    100,000,000×0.36%×11/12=330,000
  • 合計
    275,000+330,000=605,000

となります。

次期繰越額

 利益に計上するだけだと、満期が到来した時に困ったことになります。

(借方)満期保有目的債券 98,600,000

が現在の状態です。これが償還日を迎えると、

(借方)当座預金 100,000,000 (貸方)満期保有目的債券 98,600,000

 こんな感じになってしまいます。左右の差額は利益になりますが、それは上の方法で計上済みです。よって、次期繰越額は満期保有目的債券に調整の利息相当分を加えた金額になります。

次期繰越額=98,600,000+275,000=98,875,000

仕訳

 以上、仕訳の形にまとめると、

(借方)満期保有目的債券 275,000 (貸方)有価証券利息 275,000

という形になりました。

まとめ

 知らないと、金利の調整……調整ってなんじゃ……?と混乱してしまいますが、「差額は金利として扱う」という意味だと分かれば、あとはなんとなくでもいけそうです。

 ちなみに、このような債券は購入した時点においても、調整分の金利が織り込まれた形で購入したと考えられるので、月割りするときの分母は取得日から償還日までの月数になるものと思われます。今回の場合、金利相当額140万を56月で割り12月を掛けて一年分の利息を計算すると30万円。4ヶ月分は1/3で10万円。これが足し込まれて売却額(=取得額)が決定されたと考えると、発行時の金額は、取得額から10万円を差し引いた9850万円だったのではないかと推測いたします。