たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

第13問目 減価償却

Q.平成31年4月1日に100,000円で取得した備品(耐用年数10年)を、令和3年9月31日に50,000円で売却し、代金は相手先振り出しの約束手形を受け取った。当社の決算日は3月末日であり、減価償却は200%定率法、記帳を間接法によっている。売却した年度の減価償却費は月割計算で算定すること。

 

 この問題を解くには、減価償却を理解することが必要です。減価償却とは、長期に渡って使用するものの費用を購入時に一気に計上するのではなく、使用する期間で按分して費用計上することです。

 ここで浮上する課題が、どのように按分していくのかということです。

定額法

 10万円で買ったものが10年使える場合、まず思いつくのが10万円÷10=1万円を毎年費用計上していく方法です。

 最も分かりやすく簡単な方法ですが、これを定額法といいます。毎年同じ金額を費用計上するからです。

 建物などは定額法で計算するものと決まっているようです。

生産高比例法

 これは名前でなんとなく察せられる通り、その物品の使用率によって償却額が決まります。

 たとえば、10万キロ走る車があって、その車が当期に1万キロ走ったら、

償却額=取得額×1万キロ/10万キロ

と算出されるということですね。

定率法

 ここからが難しいところです。

 定率法は定められた償却率を未償却残高に掛けて減価償却費を算出します。

 ただし、償却保証額というのがあって、算出された減価償却費がそれよりも少なくなった場合、改定取得価額に改定償却率をかけた値が減価償却費になります。

 改定取得価額とは、調整前償却額が初めて償却保証額に満たないこととなる年の期首未償却残高をいいます。

 ……わけわからん!

具体例

 耐用年数が5年の資産(取得価額100万円)について、以下の通りになっています。

償却率:0.4

保証率:0.108 →償却保証額=108,000

改定償却率:0.5

 毎年の減価償却費を計算していくと

一年目:40万円(100万円×0.4)、未償却残高60万円

二年目:24万円(60万円×0.4)、未償却残高36万円

三年目:14.4万円(36万円×0.4)、未償却残高21.6万円

四年目:8.64万円(21.6万円×0.4)(償却保証額を下回る)

四年目:10.8万円(21.6万×0.5)、未償却残高10.8万円

五年目:10.8万円(21.6万×0.5)、未償却残高0

こうなります。四年目に償却額が償却保証額を下回ったので、四年目の償却前の未償却残高21.6万円が改定取得価額です。

 ただし、正確には、残存価額は1円なので最後の年の償却額は107999円になると思われます。

 残存価額とは、耐用年数を過ぎてもなお残る資産の価値のことを言います。

償却率の謎

 ウィキペディアによると、償却率は以下の方法により求められているとのこと。

残存価額={(1-償却率)^耐用年数}×取得額より

償却率=1-(残存価額/取得額)^1/耐用年数

  取得額に(1-償却率)をかけると未償却残高になります。これを耐用年数分続けていくと最終的に残存価額になると。あとは各変数の場所を入れ替えてあげれば、この通りということですね。難しい!

 で、これを見ると、本当は償却率の算出には取得額が必要なようです。スプレッドシートで計算したところ、上の具体例では償却率は0.9369……でなければならなかったようです。償却率0.4で計算すると、改定償却率等がない場合、未償却残高が1以下になるのは56年後でした。

 しかし、法令で定めるにおいて、取得額ごとに償却率を設定していたらとんでもないことになってしまいます。いったい何行の表を作らなければならないのか。かといって、償却率を各自に求めさせるのは、納税者にとってもチェックする税務署にとっても大変!

 だから、仮の償却率を設定し、保証額と改定償却率でカバーした……ということなのでしょうか?

200%定率法

 200%定率法は、償却率を未償却残高に掛けて減価償却費を算出します。で、

償却率=2/耐用年数

と定まっています。

 何が200%なのかというと、償却率が定額法の2倍なのです。定額法は

減価償却費=取得価額×1/耐用年数

で算出しています。1/耐用年数の部分が定額法における償却率と考えると、200%定率法がなぜ200%なのか分かります。

 それなら200%定額法じゃないか!と思ってしまいますが、定額法との違いは、取得価額に償却率をかけるか、未償却残高に償却率をかけるかです。定額法は取得額にかけるので、毎年同じ額が償却されますが、200%定率法は未償却残高にかけるので毎年異なる額が償却されます。

 また、200%定率法においても償却保証額と改定償却率が設定されています。

 ……と、いいますか。

 日本における定率法は、200%定率法のようです。

 

www.nta.go.jp

を見ると、

なお、平成19年4月1日以後に取得する償却資産の償却費の計算において適用される償却率、改定償却率及び保証率は、耐用年数省令別表八耐用年数省令別表九及び耐用年数省令別表十で定められています。

とあります。この別表十の償却率をよ~く見てみると、定額法の償却率の二倍になっています。

 真の定率法ならば償却保証額も改定償却率もいらない。しかし、定率法は現実的な方法ではない。だから、代わりの似たような方法を探す必要がある。そこで現れた代替手段が〇〇%定率法。この方法では償却率だけだと耐用年数内に残存価額を除く部分を償却しきることができない。だから償却保証額や改定償却率を置いた。

 ということなのではないかと思います。で、今の日本では200%を採用しているということなのでしょうね。

まとめ

 減価償却の方法は主に3つあります。

  • 定額法
  • 生産高比例法
  • 200%定率法

 注意して覚える必要があるのは200%定率法ぐらいでしょう。

 しかし、私は定率法を理解するのにだいぶ時間を使ってしまいました。ずっと定率法と200%定率法がそれぞれあると思ってしまっていたのです。う~ん、ちゃんとテキストを買って勉強したら、こんなのはちゃんと書いてあることなのでしょうか? ググって勉強は非効率かもしれませんねー。

 

 ちなみに、冒頭の問題の解答について。

一年目の減価償却費:10万円×2/10=2万円

一年目の減価償却費:8万円×2/10=1.6万円

したがって、備品についての初期状態は以下の通り

(借方)備品 100,000 (貸方)減価償却累計額 36,000

 これが消えるので、

(借方)減価償却累計額 36,000 (貸方)備品 100,000

 9月末までの減価償却費を計算すると

6.4万×2/10×6/12 =0.64万円

なので

(借方)減価償却費 6,400

  備品の売却で約束手形5万円を受け取ったので

(借方)営業外受取手形 50,000

 64,000から6,400引いて、57,600円のものを5万円で売ったので、

(借方)固定資産売却損 7,600

  以上をまとめると

(借方)減価償却累計額 36,000 (貸方)備品 100,000

(借方)減価償却費 6,400

(借方)営業外受取手形 50,000

(借方)固定資産売却損 7,600

 こうなるはず。