私、ちょうど一年前にNetflixに加入したのですが、今更ながら『ナルコス』を見てハマっております。今、3シーズンと新シリーズ1シーズンあるうちの、シーズン1を見終わったところです。
たしか去年、『乃木坂工事中』でバナナマンの設楽さんが面白いと言っていて存在を知ったのですが、なぜもっと早く見なかったのか!?と悔いております。
というわけで、今日は私のような被害者を増やさないために、あなたが『ナルコス』を見るべき理由を書いていきたいと思います。
なぜ『ナルコス』を見なかったのか?
なぜ私は『ナルコス』を見ずに放置していたのでしょうか? 『ナルコス』を見る前に私が知っていた情報を羅列してみます。
- コロンビアの麻薬王の話である。
- ものすごい金持ちで自分で建てた豪華絢爛な刑務所に収監された。
こんなところでしょうか。
私が無意識に抱いた感想はおそらく以下のようなものだったのではないかと思われます。
一部方面に失礼な感想ですが、しかし日本人にはきっと私と同じような人がいるに違いありません。今回はこういった誤解を解くことを意識して書いていきたいと思います。
あらすじ
まずはあらすじですが、端的に言うと、「コロンビアにパブロ・エスコバルという麻薬王が出現しました。アメリカの麻薬取締局の捜査員であるスティーブ・マーフィーはエスコバルを抹殺すべくコロンビアに発ちます」という話です。
主人公はアメリカの麻薬捜査官
まず、 第一に重要な点。主人公はアメリカの麻薬取締局(DEA)の捜査官です。パブロ・エスコバルはあくまで敵役です。
というわけで、構図は明快です。正義のアメリカVS悪のエスコバル。ここはけっこう重要なポイントだと思います。
ヤクザ映画って、勢力図が分かりづらかったりして、理解できないまま終わってしまったりすることが多々あります。その点、『ナルコス』は分かりやすい。
それに感情移入もしやすいです。主人公が正義側ですから。悪い人が主役の映画は感情移入ができずに終わることはままあります。
しかも、アメリカは並の正義ではなく大正義です。圧倒的な軍事力を誇るアメリカの人民に手を出したら、ヘリコプターが飛んできてコロンビアの悪党など一撃で粉砕されてしまうのです。なので、パブロ・エスコバルは基本的に主人公に手を出せません。『呪術廻戦』でいう五条悟ポジションです。
第二の主人公コロンビア政府
しかし、五条悟と同じで、その強大なアメリカパワーが発動されることはほとんどありません。なぜなら、国境がエスコバルを守っているからです。いかにアメリカが強大な力を持っているからと言って、犯罪者を追っている程度の理由では外国において自由に公権力を振るうことなどできないのです。
さらに、アメリカ本国からすればパブロ・エスコバルなど南米の小悪党に過ぎません。冷戦の真っ只中である当時、ソ連を始めとした共産主義勢力の方がよっぽど恐ろしい。ですから、マーフィーたちは本国の強力なバックアップを得られるわけでもないのです。
だからこそ、重要な役割を担うのがコロンビア政府です。麻薬王が金に物を言わせて横暴を働いていた……なんて聞くと、コロンビアは賄賂でホイホイ動く国なんだ~と思ってしまいがちですが、そんなことはありません。当たり前ではありますが、コロンビア政府にも正義に従って行動する人々が大勢いて、彼らにとって犯罪者パブロ・エスコバルは憎しみの対象でしかありません。そもそもこれはコロンビアの物語です。本当の主人公はコロンビア政府だと言っても良いかもしれません。
アメリカとコロンビアの微妙な立ち位置の違いが、両者の歩調に乱れを生みます。それがエスコバルを時に追い詰め、時に救います。
とはいえ真の主人公はやっぱりパブロ・エスコバル
とはいえ、実際に物語を動かしていくのはやはりパブロ・エスコバルです。
このパブロ・エスコバルはとてつもない大悪党なのですが、序盤においては彼の憎めない面も端々に描かれます。たとえば、家族を非常に大事にする様子だとか、動物に対する慈悲深さだとか。愛国心もあるため、有り余る金を人々に配り、選挙に出馬し政治家になってしまいます。
エスコバルは非常に大胆な人物です。大統領になろうとしたり、最高裁判所を襲撃したり、国の要人の家族を拉致しまくったり、自らの作った刑務所で何不自由ない牢獄ライフを過ごしたり。これは日本では考えられないというレベルではなく、世界でも考えられないスケールの大きさでしょう。
しかし、そのような所業の先には報いが待ち受けています。国家に対して公然と牙をむく所業はエスコバル自身の首を締めていきます。そうして段々と彼は人間性を失っていくのです。
このエスコバルの変化もまた面白いポイントです。
コロンビアが舞台だから面白い
さて、コロンビアと聞いて、あなたはどのようなイメージをいだくでしょうか?
こんなところではないでしょうか。
つまり、コロンビアについてよく知らないのです。そもそもなんらかのイメージすら持っていないのです。だからコロンビアの話なんて聞くとイメージが湧かず、面白そうだとは思えなくなる。
興味ないと感じたらそれは面白いのサイン
しかし、そんな人こそ『ナルコス』を見るべきです。『ナルコス』を見れば、あなたにとってコロンビアは「『ナルコス』で見た国」になります。それは偏ったイメージかもしれませんが、ともかくコロンビアに興味を持ったということです。コロンビア一国分、あなたの世界が広がるのです。これはとても大事なことだと私は思います。
『ゲームの王国』という小説があって非常に面白いのですが、これがカンボジアの話なのです。私はこの小説を読むまで「カンボジアの話?つまんなそう」と思っていたのですが、この小説を読んでから私の中でカンボジアは特別な国になりました。『隠された悲鳴』という小説があります。これはボツワナの大臣が書いた小説で、ボツワナが舞台です。ボツワナに関しては興味がないどころか知識がゼロなので、逆に興味が湧いて読んだのですが、この小説を読んだことがきっかけでボツワナについて調べたことがあります。
あなたがコロンビアについて「興味ないね」と思うのは知らないからなのです。それは言い換えれば、知らないことを知る楽しみがコロンビアには秘められているということです。
かつてコロンビアに世界トップクラスの大企業があった
『ナルコス』を見て初めて知るコロンビアの一面は、なんといっても、コロンビアに世界有数の大企業があったということでしょう。
そもそもこのパブロ・エスコバルがなぜアメリカのDEAに狙われているのか? それは、コカインをマイアミに大量輸出していたからです。その量なんと一日あたり15トン! これはアメリカのコカイン供給量の84~90%、世界のコカイン供給量の80%を占める規模だそうです。
それだけの量を輸出しているだけあって、儲けた額も尋常ではなく、一年間で220億ドル(約2兆2000億円)の利益! これはパブロ・エスコバル率いるメデジン・カルテルの儲けですが、彼自身も世界第7位の大富豪になるほど儲けたのです。
※数字に関しては以下のサイトを参照しています。
商品が違法薬物だったという点を除けば、世界有数の巨大企業をパブロ・エスコバルは創業したのだと言えましょう。魅力的な商品は高く売れる場所で売るべしと、マイアミで売ることを思いつき実践する彼の視野の広さと行動力には見習うべきものがあると思います。
まさかコロンビアにかつてそんな大企業があったなんて……。なぜコロンビアにこんな大きな組織が生まれたのだろう?と考えるのは、なかなかおもしろい問題のような気がします。
また別の見方をすると、パブロ・エスコバルは決してコロンビアという南米の一国でせせこましく悪党をやっていたわけではなく、ワールドスケールの犯罪者だったということが分かります。「マイアミ=治安が悪い」というイメージがありますが(実際そのようです)、その裏にはパブロ・エスコバルがいたのです。平成3年の警察白書にもメデジン・カルテルが世界の薬物犯罪組織の筆頭に挙げられています。遠い世界のお話のようで、実は我々の世界と繋がっているのが『ナルコス』なのです。
そんなに身構えなくていい
『ナルコス』を見るのがためらわれた理由になんか重そうというのがあります。一話一話見進めていくのに気力がいりそうな感じがするというかなんというか。
私が『ナルコス』を避けて何を見ていたかというと韓国ドラマです。『愛の不時着』『梨泰院クラス』『スタートアップ』……。評判もいいし、なんか気楽に見れそうな感じがしたからです。
しかし、実際は全く逆だったかもしれません。韓国ドラマは面白いのですが、長いです。色々な意味で。まず一話が長い。CMなしで60分を超えます。『美少女戦士セーラームーンR』の映画より長い。しかも、1シリーズが15話前後です。一作品見るのに『美少女戦士セーラームーン』全話(OPEDスキップ)を見るのと同じくらいの時間がかかります(たぶん)。
それに比べると、『ナルコス』は日本のテレビドラマとだいたい同じサイズ感です。アメリカのドラマは延々と続くイメージがありますが、『ナルコス』の場合、シーズン2で一区切りつくらしいです。なので泥沼に引きずり込まれる心配はなさそう。
なにより面白いので、先が気になってどんどん見てしまいます。
『ナルコス』=『愛の不時着』説
「いやいや、長さとか関係ない。私は『愛の不時着』一気観しましたから~」と思ったあなた。そんなあなたにこそ『ナルコス』はおすすめかもしれません。
『愛の不時着』→韓国の大富豪が北朝鮮に乗り込んだ結果、北朝鮮の将校とドキドキな展開になるお話。
『ナルコス』→コロンビアの大富豪がアメリカに乗り込んだ結果、アメリカの警官とドキドキな展開になるお話。
こうやって見てみると、実はよく似たドラマなんですねえ!
『ナルコス』=『梨泰院クラス』説
「いやいや私は『梨泰院クラス』派だから」と思ったあなた。あなたにこそ『ナルコス』がおすすめかもしれません。
『梨泰院クラス』→親を殺された主人公が犯人の親に復讐を誓い実現する話。
『ナルコス』→同僚を殺された主人公が犯人の親玉に復讐を誓い実現する話。
正直、『愛の不時着』が『ナルコス』と同じだというのはこじつけた感がありました。しかし、これに関してはマジのガチで完全一致! すごい!!
『ナルコス』=『スタートアップ』説
「『梨泰院クラス』なんて古い古い。時代はもう『スタートアップ』だから」と思ったあなた。あなたにこそ『ナルコス』がおすすめかもしれません。
『スタートアップ』→韓国の若者が会社を立ち上げ、アメリカに乗り込んで成り上がり、最後は本国でライバルと戦う話。
『ナルコス』→コロンビアの若者がカルテルを立ち上げ、アメリカに乗り込んで成り上がり、最後は本国でライバルと戦う話。
またもや完全一致です。どうなっているんでしょうかこれは。
三つの説を統合すると
……え? ってことは、『ナルコス』を見れば、『愛の不時着』と『梨泰院クラス』と『スタートアップ』をまとめて見たも同然ってこと!? すごい、すごすぎる! お得感がハンパない!
そういうわけです。
まとめ
というわけで『ナルコス』は面白いのです。私の抱いていたであろうネガティブなイメージに対する反論は以下の通りです。
- なんか暗そう
→まあこれに関しては否めないかも? そんなに暗くないけど。 - ヤクザ映画って分かりづらいんだよなあ
→『ナルコス』は分かりやすい! - コロンビアみたいな小国で威張ってたって言われましても……
→パブロ・エスコバルはワールドクラスの悪党でした - 麻薬王が刑務所の中で贅沢して幸せに生涯を閉じる話なの?
→そんな単純じゃないよ! - 重そう
→むしろ軽いよ!
なにはともあれ、なにごともチャレンジが大事です。試しに一話だけ見てみるのはいかがでしょうか。