たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

櫻坂46と日向坂46についても考える

 前回、前々回と、乃木坂46内の現在のパワーバランスを調べてみた。

 では、同じ坂道シリーズである櫻坂46と日向坂46はどうだろうか?

日向坂46 全員表題曲参加から選抜制へ

 まずは日向坂46について見ていこう。なお、今回、けやき坂46時代については考えないことにする。

まずは乃木坂46と同様に序列を確認してみる

 日向坂46はこれまで11枚のシングルを発売している。センターを務めた回数は、小坂菜緒の5回が最多。その他では、加藤、金村、齋藤、上村、正源司が1回ずつセンターを務めている。

 というわけで小坂菜緒の地位が圧倒的に高い。7thを最後にセンターから遠のいているが、これは本人の意向又は小阪への配慮によるものと思われる。

 センターを除くフロントを務めた回数では、加藤が8回、齋藤が7回、金村が6回、佐々木美・丹生が4回、小坂・河田が3回、東村・上村が2回、佐々木久・松田・影山・柿崎が1回となっている。

 というわけで、現役の1期生では加藤>佐々木美>東村>佐々木久、2期生では小阪>金村>丹生>河田>松田といった序列が見て取れる。

選抜制度が存在しなかった日向坂46

 このように日向坂46においても序列はあるのだが、現時点において、これは些末な問題だ。

 序列よりも重要なのは、日向坂には10枚目シングルまで選抜制度が存在しなかったということだ。万年3列目のメンバーはいるものの、全員が表題曲にメンバーとして参加することができていた。

 それが可能であったのは、日向坂46の構成員が少なかったからだ。1期生と2期生の人数を合わせて21人程度で推移してきた。乃木坂の選抜メンバーとほぼ変わらない人数なので選抜制を導入する意味がない。もしかすると、選抜制を避けたいがために、新規加入メンバーの人数を調整してきた可能性もある。

4期生の加入と選抜制導入

 ところが、日向坂46の1期生がけやき坂として活動し始めてから今年で8年目。そろそろ1期生の脱退を考慮する必要性がある。10枚目シングルに参加したメンバーは19人だが、ここから潮と齋藤が抜けるので、既存のメンバーは17人となる。今後も減っていくことが予想される。

 構成員の減少に対応するため、11人の4期生が加入する。これにより一時的にグループの人数は28人になる。このぐらいの人数になると選抜制を導入せざるを得ないようだ。日向坂は11枚目シングルで初めて選抜制を採用することになる。

 28人に対して、それまでと同じ21人程度の選抜とすると、非選抜メンバーが7人となり、バランスが悪い。というわけで、表題曲に参加するメンバーの人数は過去最少の16人となった。乃木坂の選抜が19人前後だから、選抜の人数だけなら日向坂の競争は乃木坂以上に厳しいものになっている(といっても、全体の人数が違うので単純に比較できないが)。

 大所帯アイドルグループの選抜制度のあり方は世代交代と密接に関わっているようだ。

櫻坂46 苦心の櫻エイトから選抜制へ

 櫻坂46はどうかというと、欅坂46から名前を改めて新体制となった時点でメンバーは26人。

 もともと欅坂46であった頃は、21名のメンバーで構成され、やはり選抜制度は導入されなかった。わざわざ長濱ねるのためにけやき坂46を結成したのにもかかわらず、両グループ間でメンバーの入替えが行われることもなかった。乃木坂46が当初から選抜制度を軸に据えていたのとは対照的だ。

 そして、やはり日向坂46と同じ道を歩むことになる。いや、歩もうとして歩めなかった、といった方が正確か。欅坂46に15名の2期生が加入すると、やはり選抜制を導入するほかない。ところが、初の選抜制を導入しようとした9thシングルを発売する前にグループが瓦解。櫻坂46への改名に至る。

 そのような経緯があったため、櫻坂は選抜制を導入せざるを得ない人数を抱えながら、(少なくとも当面の間)選抜制を導入するわけにはいかないというアンビバレントに悩むことになる。

 そこで運営が導き出した答えが、櫻エイトというシステムである。これは2列目までの8人を固定して3列目のメンバーのみを入れ替えた楽曲を3曲用意するという手法である。これにより、名目上は誰も選抜されることなく、なんらかの楽曲に参加できるということになる。

 櫻エイトというハブを通じて、全メンバーが繋がるという仕組み。選抜とアンダーに分断しない仕組みだ。たしかにこれで分断は防ぐことができる。しかし、これは私見だが、メンバー間格差は選抜制を導入したとき以上に広がるのではなかろうか。なんせ櫻エイトは三つの楽曲で2列目以上で踊れるのにもかかわらず、非櫻エイトは一つの楽曲で3列目に入れるだけだ。アンダーの中でならセンターになれるかもしれない乃木坂46と必ず3列目にはなれるがセンター楽曲を持てる可能性の乏しい櫻坂46。どちらが良いかといえば微妙なところだ。しかも、これは櫻エイトにとっても負担が重い制度だ。

 そのような問題意識によるものかは分からないが、櫻坂46は3thシングルで非櫻エイト(櫻坂46において「BACKS」という。)用の楽曲を作ることになる。

 そして、総勢17名になった6thでは櫻エイトを廃止し、全員が表題曲『Start over!』に参加する。7thでは3期生が合流し、選抜制が導入されるに至る。

 現在の櫻坂46は26名で、グループ始動時と同じ人数。櫻坂46の選抜は直近2作で14人。日向坂46より少ない。

アイドルグループのあり方を決定するもの

 結局のところ、選抜制を拒否することで乃木坂46との差別化を図ろうとした2グループが、世代交代に伴い乃木坂化するに至ったというわけだ。なんだかんだ乃木坂46の仕組みが一番合理的ということなのかもしれない。

 これまで当然のように世代交代を前提としてきたが、本来これは当たり前のことではない。某老舗男性アイドル事務所のグループは、メンバーの脱退に伴い新しいメンバーを補充するということはたぶん行っていない。グループ名は箱ではなく、メンバーの総称に過ぎないのだ。

 では、なぜ乃木坂46などのグループは、メンバーの入替えのある箱として運用されているのか。理由は単純で、これらのグループが多人数で構成されているからだ。

 AKBグループや坂道グループの設計思想の根底には「質より量」があるはずだ。韓流アイドルなどに比べればスキルで劣る人材も、多数揃えれば厚みが生まれ、多様な需要に対応することができる。逆にいえば、どれだけ優れた才能を持つ人材がいても、量の中に埋没させてしまうシステムとも言える。(埋没させまいとした結果が欅坂46かもしれない。)

 「質より量」で設計されたグループにとって、量を維持することは死活問題である。ところが、多人数アイドルグループの構成員は、長く在籍しようとしない傾向にある。理由は分からないが、個性を売る仕事を望む人が自分の個性を埋没させてしまう組織に長居したいと思わないのは自然なことだろう。個性を売りたくない人がアイドルを続けないのは言うまでもない。多人数アイドルグループは、構成員の数を維持しなければならないのに、構成員が減り続ける宿命にあるといってよさそうだ。(そもそも女性アイドル自体が短命の傾向にあるが、PerfumeNegiccoももいろクローバーZなど、長期間活動しているアイドルはやはり人数が少ない。)

 したがって、多人数グループは世代交代をせざるを得ない。スムーズに世代交代を行うためには余剰人員を確保しておく必要がある。この余剰人員を貯める場所はおそらく2パターンあり、一つは別の組織にストックしておく方法、もう一つは同じグループの中に所属させる方法。前者では、たとえばハロプロは事務所で採用活動を行い、合格者はハロプロ研修生となる。坂道グループは後者の方法を採用しており、これは選抜制を実施することとほぼ同義だ。

 ……という道筋で考えていけば、櫻坂46と日向坂46において選抜制が導入されたのは必然に思える。アイドルグループのあり方をまず第一に決定するのは、人数なのだ。

櫻坂と日向坂の今後

 現状を確認しよう。各坂道グループの全体の人数と選抜人数は次のとおりだ。(休業中の者は除く。)

乃木坂46:32人中19人(57.6%)

櫻坂46:27人中14人(51.9%)

日向坂46:27人中16人(59.3%)

 同じ坂道でも選抜の人数は最大5人も違うのだ。乃木坂の多さが際立つが、乃木坂はそれでも他に先駆けてオーディションを開始している。やはり規模の大きさを求める度合いは乃木坂が強い。

 というか、櫻坂と日向坂の人数はこれだと心もとない。今はいいが、これ以上減ると選抜とアンダーの数を両方維持することが難しくなってくる。今週からメンバー募集が開始されたのも自然な流れだろう。

 櫻坂と日向坂にとっては選抜制を維持できるかも課題だ。櫻坂はすでに3作を経ているから安定期に入っているかもしれないが、日向坂はまだ選抜制が導入されて1作目。選抜制が定着するにはまだまだ時間がかかる。

 関係があるのかは分からないが、日向坂46は加藤・東村・丹生・濱岸の脱退が発表された。人気メンバーが一気に4人も抜けるというのはなかなか衝撃だ。次々回作から、日向坂46は23人体制となる。仮にアンダーを10名とすると、選抜は13名。正源司・小阪・金村・河田・佐々木久・松田・上村の7人は選抜確定だろうから、残る枠は6。これを16人で争うことになる。一時的に選抜制が解除される可能性もある。

 では次回作はどうかといえば、仮に選抜16名アンダー11名とすると、おそらく正源司・小阪・金村・河田・佐々木久・松田・上村に加えて、加藤・東村・丹生もほぼ確定。やはり残る枠は6で、争いの厳しさは変わらない。アンダーの人数を十分に確保できなければ、上位メンが抜けても選抜の枠が減るだけで競争の激しさは緩和されないのだ。人気メンバーが減り、下位メンバーに与えられるチャンスが増えないのでは良いことが何もない。(少数選抜の方が良いパフォーマンスができるなら話は別だが。)やはり人員増は急務だ。

 櫻坂も1期生はいつ全員いなくなってもおかしくない。別に抜けてもいいじゃんと思うかもしれないが、日向坂と同じ理屈で人員減は選抜枠の減少に繋がりうる。今の状況では、誰であろうといてくれるだけでありがたいのだ。

 いずれにせよ、今後は櫻坂も日向坂も乃木坂並みの規模を目指していくことになるのではないだろうか。