『ストーリーとしての競争戦略』という本を読んだ。
まず前提として、企業が生き残るために何をしてきたかについて書かれた本は往々にして面白い。人の心を引き付けるのは、死・性・金だ。企業に関する物語は、死と金についてこの上ないリアリティをもって詳細に描いている。面白くて当たり前だ。
『スティーブ・ジョブズ』みたいな伝記が長編小説だとすれば、『ストーリーとしての競争戦略』みたいな戦略論は短編集に当たる。それぞれに違った面白さがある。
『ストーリーとしての競争戦略』は、マイケル・ポーターの議論を踏まえつつ、さらにその先を行こうという試みだ。要旨としては次のようなものが挙げられる。
- 個々の打ち手ではなく、その間の論理こそが重要
- 論理が強く、太く、長いほど良い戦略となる。
- ゴールはWillingness to pay(WTP)を上げるか、コストを下げるかのほぼ2択
- スタートは「誰に」「何を」売るか
- それ自体は不合理だが、ストーリーの中では合理的な打ち手こそが肝
まあこれだけ読んでもよく分からないだろうから、ぜひ本を買って読んでほしい。「企業の競争戦略」なんていうと難しそうな感じがするが、この本は全編が丁寧語で書かれており口当たりが柔らかい。非常に読みやすい本だ。
ちなみに、登場する会社は、マブチモーター、サウスウエスト航空、スターバックス、ガリバーあたり。サウスウエスト航空はこの分野では頻出だが、にもかかわらず個人的には新しい発見があった。それからスターバックスに関する部分は、「喫茶店で勉強することは許されるか問題」に興味がある方は必読。
で、こういう本を読むと自分でも企業の戦略について考えたくなる。というわけで、乃木坂46の競争戦略について考えてみたい。
握手券商法×選抜制が柱か?
まず、乃木坂46の目指すゴールはなんだろうか?
であるから、「WTPの向上」か「コストの削減」かの二択となる。
乃木坂46が多人数グループであることを考えると、コストの削減ではなさそうに思える。チケット代やCD代が安いわけでもない。
となると、WTPの向上こそが乃木坂46が目指すゴールであるはずだ。では、いかにして乃木坂46はWTPを向上させようとしているのか?
まず思い浮かぶのが、ミート&グリート(握手券)商法だ。一人のファンが何枚もCDを買うという通常ではありえないことがこれにより発生する。
さらに、ミート&グリートの売れ行きは選抜に強い影響を及ぼす。これにより、ファンはアイドルに会うためではなく、応援するためにCDを買うこととなり、購買意欲を一層刺激する。乃木坂46は、ファンに応援する対象を売っているのだ。
つまり、握手券商法×選抜制こそが乃木坂46の戦略の要となる。
……という説明は微妙だ。
たったそれだけのことなら他のグループでも簡単に模倣できてしまう。競争によって顧客がCDを何枚も買うことになるという論理も弱い。必然性が薄い。ほかの様々な打ち手との繋がりを説明できない。面白みもない。
女性アイドルグループを運営するということ
ここで一旦、女性アイドルをプロデュースするとはどういうことかを考えよう。
女性アイドルの最大の特徴は、寿命が短いことだ。通常のアーティストは、賞味期限が訪れない限り、生物として死ぬまで芸能活動を続けることが少なくない。これは男性アイドルも同様の傾向にある。郷ひろみは今日も元気だ。それに対して、女性アイドルの活動期間はだいたい10年ぐらいなものだろう(統計的な根拠はなく個人的な感覚的なものだが)。
となると、個々のアイドルに対して付くファンの寿命も、およそ10年程度ということになる。
ここで一女性アイドルあたりの売上を伸ばすために取れる戦略は二つに絞られる。その10年の間に搾り取れるだけ搾り取るか、アイドルの寿命を伸ばすか、だ。いずれの戦略にも限界があることは容易に想像できる。アイドルという娯楽に可処分所得のすべてを費やさせることの難しさ、アイドルをアーティストの域に踏み込ませる難しさがそれぞれにある。
だが、アイドルを個として捉えるのではなく、グループとして捉えるのであればどうか?
ファンがアイドル個人に付くのではなく、グループに対して付くのであればどうか?
ファンの寿命を伸ばすことは(アイドル個人の寿命を伸ばすのに比べれば)容易になる。
そう、乃木坂46の戦略の要諦はここにある。個の力で売るのではなく、グループを売る。乃木坂46というシステムを売る。「白石麻衣がいるから乃木坂46を推す」ではなく、「乃木坂46にいる白石麻衣を推す」。これが乃木坂46の目指すところだ。
乃木坂46の戦略の中心は卒業
ここから導き出される結論は、乃木坂46の戦略の中心には「卒業」がある、ということだ。
ファンがアイドル個人に付くのではなく、グループに付くということは、一人のスターに依存しない、させないということだ。選ばれたメンバーの中からスターが誕生しても、そのスターをいつでも辞めさせることができなければならない。そして、程よいタイミングで実際に辞めてもらわなければならない。そうでなければ新陳代謝は起こらないからだ。
さらに、ただ辞めさせればいいわけでもない。可能な限り円満に辞めてもらうこと、これも非常に重要だ。それによって「乃木坂46って良いグループだなあ」と思わせることができる。
乃木坂46のあらゆる打ち手は、この二つの観点から説明ができる。以下では、乃木坂の様々な打ち手が「一人のスターに依存しない・させない」「可能な限り円満に辞めてもらう」に繋がっていくことを説明していく。
多人数
乃木坂46の特徴の一つに、人数が多いということがある。これには個の力の劣位を数で補うという側面もあるが、乃木坂46にとってそれ以上に重要なのが、パワーの分散だ。
グループの人数が少なければ当然、一人ひとりの重要性が増す。それは、それぞれのメンバーへの依存度が高いことを意味する。こうなると、いつでも卒業させることができる状態を作るのは極めて難しくなる。
逆に言えば、人数が多ければ必然的に各メンバーへの依存度は減少する。西野七瀬や齋藤飛鳥の存在がどれだけ大きくても、所詮は35人前後いるメンバーの一人に過ぎない。
研修生制度なしの選抜制
乃木坂46は選抜制を採用していて、しかも研修生制度を取っていない。
これはメンバーとしての活動開始の早さを意味する。スター性があれば即座に抜擢し、それが足らなくてもアンダーメンバー(又は◯期生)として露出させる。スピーディーに新しいスターを生むためのシステムであり、活発な新陳代謝の中でなるべく長い活動期間を確保するためのシステムでもある。
早めに活動させるということは、トレーニングに時間をかけないということでもある。かといって、最初からダンスや歌に長けた人材を採用するわけでもない。実力不足かもしれない人材を早くから登用することになるが、これは個の力を重視しないからこそ可能な打ち手となる。
メンバーがパフォーマンスのエリートでないことも乃木坂にとっては重要だ。一人のスターに依存しないためには、新人はすべてスター候補でなければならない。そのような人材を獲得するためには、オーディションの応募総数を増やす必要がある。歌やダンスのトレーニングを受けたことのない人材からの応募を募るには、メンバーのスキルが高すぎない方が良い。
乃木坂46の6期生オーディションのスローガンは「世界は、ほんの一歩で変わる。」だ。乃木坂46が採用しようとしているのは、昨日まで普通の女の子だったような少女であって、ボーカルやダンスの激しいトレーニングを積んできた女の子ではないのだ。
(ほかにもパフォーマンスを重視しないからこそK-POPと競合しづらいのではとか、活動が見えて稼げるのが早いほうが親御さんも安心なのではとか、色々メリットがあるように思ったりもする。)
新人のセンター抜擢
乃木坂46では、加入直後の新人からセンターを選ぶのが定番となっている。2期生では堀未央奈、3期生では与田祐希&大園桃子、4期生では遠藤さくら、5期生では中西アルノといった具合だ。これもまた新たなスター候補を早く生み出すための取組の一環だ。
加えて、実力の伴わない新人を先輩に支えさせることによって、先輩と後輩の間に絆を生むことも意図されているのではないだろうか。選抜制の下ではメンバー間に対立関係が生じるはずだが、今の乃木坂46では対立が表面化することはなく、パートナーシップの方が強調されている。
人間には多面性があり、それは様々な人間関係の中で引き出されることになる。ソロでは引き出しきれないアイドルの魅力を引き出す効果が、グループにはある。だからこそ、ファンはアイドル個人ではなく、グループに付く。円満な卒業も良好な人間関係なくしてはありえない。
ただし、新人の登用には、メンバー間の関係が険悪になるリスクもある。乃木坂においても、堀がセンターに選ばれた時、1期生は必ずしも歓迎ムードではなかった。それを乗り越えられたから今の乃木坂がある。逆に言えば、ほかのグループが真似をしても上手くいかない可能性があるわけだ。新人抜擢がすでに文化として根付いていることは乃木坂にとって大いなる武器かもしれない。
期別楽曲&期別冠番組
研修生制度は導入していないが、かといって新人の多くはすぐ選抜制に組み込まれるわけでもない。
新人たちには期別楽曲が与えられ、同期グループでパフォーマンスをする期間がある。5期生に至っては『新・乃木坂スター誕生!』という冠番組まで用意された。もともと4期生が出演していた『乃木坂スター誕生!』を5期生が引き継いだ形だ。
これもまた新しいスターを早期に生み出すためのシステムの一つだ。選抜メンバーを中心に出演する『乃木坂工事中』ではなかなか一人ひとり、特に新人にスポットライトが当たることが少ない。新人だけが出演する番組を作ることで、新人への注目を増やす。番組の内容を歌に取り組むものにさせることでパフォーマンス力の向上も同時に図る。また、期別に活動させることで同期の絆を育むことも意図されているだろう。
同じ扱いを3期生、4期生に対してもしてしまうと、在職年数の長いメンバーへの依存度が高まってしまうから、彼女たちには期別楽曲も番組も与えられない。
アンダーライブ
乃木坂は選抜制を導入しているが、選抜されなかったメンバーを冷遇するだけでは円満な卒業などありえないだろう。
そこでアンダーメンバーにはアンダーライブが用意されている。アンダーメンバーはそこでファンにアピールすることができるし、新人の修行の場にもなるし、儲けることもできる。一石三鳥だ。
ミート&グリート免除
乃木坂46に関する噂として、ミート&グリートを400部完売させたメンバーはミート&グリートへの参加を免除されるという話がある。
これはファンとの接点を人気メンバーから新しいメンバーに移行させることを企図した制度だと理解することができる。ファンの人気メンバーへの依存度を下げる取組だ。
これは人気メンバーの側にとってもメリットのある話で、ほかの活動に割ける時間が増えるため卒業後の進路の幅を広げることができる。
なお、ミート&グリート自体にシングルごとのWTPを最大化させる効果があるのはすでに述べたとおり。
卒業センター・卒業コンサート
円満な卒業の象徴が、特に功績の大きい卒業予定者をシングルのセンターに選んだり卒業コンサートを開いたりすることだ。
もちろん円満な卒業とは、それ自体に意味があるわけではない。円満な卒業をすることによってファンが乃木坂から離れずに済んで初めて意味を保つ。
だから、卒業コンサートは功労者への御褒美として行われる催しではない。これは譲位の儀式なのだ。山下美月のファンを乃木坂へ引き継ぐための儀式。
それでも離れるファンがいる可能性はもちろんあるが、そういうファンから支払いを引き出す最後のチャンスでもある。
バースデーライブ
乃木坂46のライブには大きく、アンダーライブ、全国ツアー、バースデーライブの三つがある。
このうち特にバースデーライブでは、乃木坂46の歴史を重んじた演出がなされる。メンバーが卒業しても、今のメンバーが卒業したメンバーの後継者であることをファンに示す儀式なのだ。
冠番組(乃木坂工事中)
メンバーが変わってもグループとしてのアイデンティティを保ち続けるために最も重要な施策が冠番組だ。
『乃木坂工事中』という番組が続き、そこにバナナマンという司会者が居続けることによって、乃木坂46は初期メンバーが全員いなくなっても乃木坂46であり続けられる。極端な話、『乃木坂工事中』に出演することでメンバーは乃木坂46の一員になれる。もしデビューしてから一度も『乃木坂工事中』に出演しなかったら、そのメンバーは乃木坂46として認知されうるだろうか?
乃木坂46のアイデンティティは『乃木坂工事中』にあると言っても過言ではない。だからこそ、乃木坂46は個人に依存せず、スターを円満に辞めさせることができる。
だとすれば、『乃木坂工事中』は継続することがかなり重要だ。もし『乃木坂工事中』を日本テレビのゴールデンタイムで放送しようとすると状況はかなり不安定になる。テレビ東京系列の深夜帯で放送されていることにも意味があるのだ。
乃木坂46の現在地
このように「一人のスターに依存しない・させない」「可能な限り円満に辞めてもらう」を軸にして考えると、乃木坂46の打つ様々な施策の意図が見えてくる。瞬間最大風速を最大化させることではなく、常に風が吹いている状態を維持することが乃木坂46の目指すところなのだ。
今のところはこの戦略が上手くいっているように見える。13周年を迎えた今もなおアイドル業界のトップクラスをひた走っている。
業績
乃木坂46合同会社の簡単な財務状況は株式会社KeyHolderの有価証券報告書に記載されている。
有価証券報告書|財務情報・IRライブラリー|IR情報|株式会社KeyHolder
抜粋すると、2023年12月期決算は以下のとおり。
流動資産 110億円
非流動資産 8億円
流動負債 14億円
非流動負債 なし
資本 104億円
売上 146億円
包括利益 27億円
はわわ……。しゅ、しゅごい。
ちなみに、エイベックスの音楽事業の売上は1132億円、利益は19億円*2。アミューズの売上は365億円で利益は13億円*3。
乃木坂46合同会社の利益率は異常だ。(音楽業界の構造が複雑すぎて理解しきれていないので、もしかしたらエイベックスとアミューズは比較対象として不適かもしれないけど……。)上場企業じゃないからかもしれないが、自己資本比率も乃木坂46合同会社はかなり高い。ROEも20%を超えている。超優良企業だ。
エイベックスやアミューズのIRを精査できていないので雰囲気で書くが(そもそもここまでの話はすべて妄想です)、両社は売れないアーティストを多数抱えているであろうのに対し、乃木坂は超売れっ子単品で勝負できているというのが大きいのではないか。これは乃木坂がたまたま売れてラッキーという話ではない。乃木坂46というビジネスモデルは、言うなれば売れないアーティストも乃木坂46というシステムの中の一要素として取り込むものなのだから、乃木坂46の作戦勝ちなのだ。
ちなみに、JYPエンターテインメントの2023年度決算は売上5665億ウォンで純利益1050億ウォン。1ウォン=0.11円とすると、売上623億円、純利益116億円。ほえぇ……もっとしゅごい。
乃木坂46と三英傑
瞬間最大風速を最大化させる方法としては、テレビの活用が考えられる。ここでいうテレビとは、『乃木坂工事中』のような低視聴率で細々と続けていくものではなく、高視聴率を志向しているものだ。この手法は手っ取り早く爆発的な人気を得られるが、番組との縁が切れるとグループの衰退が始まる。
テレビに依存せずに圧倒的な人気を獲得したのがAKB48だ。乃木坂もAKBの戦略を多分に踏襲しているし、なんなら「AKB48公式ライバル」という肩書きで人気に便乗までさせてもらった恩義もある偉大な先人である。
が、センターの一覧を見る限りAKBは世代交代への意識が乏しいように見える。前田敦子のセンター率がかなり高いし、今に至るまで新人のセンター起用はないっぽい。AKBは乃木坂と組織体制がかなり違うので、それ自体に良い悪いとは言えないし、私のAKBの知識が乏しいので詳しいことも分からないが。
そもそもAKBの衰退(ここでは仮に衰退しているとする。)は世代交代によるものなのか?という疑問が生じる方もいるだろうからそこらへんかなり雑に一応検討してみたい。たしかにCD売上ではコロナ前までAKBが乃木坂を上回っている。この時点ではAKBも神7が全員卒業しているわけで、その状況で乃木坂より強いならAKBも世代交代には成功していたんじゃないか?と思わずにはいられない。だが、2017年のライブ会場のキャパシティを見てみると、少し違った景色が見えてくる。乃木坂がさいたまスーパーアリーナ(以下「SSA」という。)3日+明治神宮2日+東京ドーム2日をやっているのに対し、AKBはSSAで1日まゆゆの卒コンをやったぐらいしかでかい会場*4でのライブがない。実はこの時点で乃木坂は下剋上を果たしていたのではないだろうか。
そこで遡って見てみると、以下のとおり。
2013:日産スタジアム1日+ドームツアー ※篠田麻里子&板野友美卒業
2014:味の素スタジアム1日+東京ドーム3日 ※大島優子卒業
2015:SSA4日
2018:SSA1日
やはり人気メンバーの卒業に伴って縮小していっているように見える。
これを考えると、全盛期を築き上げた1期生が全員抜けた後もSSA4日+東京ドーム2日+京セラドーム2日+ナゴド2日+明治神宮3日をやっている乃木坂46は、日本の多人数アイドルグループとして前人未到の領域に入ろうとしていると言っても大きく間違ってはいないのではなかろうか。
これらの流れは三英傑になぞらえることができるかもしれない。モーニング娘。は全国統一に大きく前進したがキープレーヤーに裏切られて倒れた織田信長。AKBは全国統一を成し遂げたが目の黒いうちに王位継承できなかった豊臣秀吉。乃木坂は秀吉の築いたものを奪い取ったらすぐ息子に譲位して江戸幕府というシステムを構築した徳川家康だ(モー娘。もAKBもまだ元気に活動中だけど)。乃木坂46は江戸幕府なのだ。
乃木坂46の牙城は崩れるか
それだけ乃木坂46が売れているなら模倣を試みようとするグループがあってもおかしくない。が、乃木坂46の姉妹グループである櫻坂46と日向坂46を除けば、私の認識している範囲内だと僕が見たかった青空ぐらいしかそのようなグループは存在しない。(そもそも私が坂道グループにしか関心がないのでこれらのグループ以外の情報が入ってきていないだけの可能性は十分にある。)
ちなみに、櫻坂46と日向坂46でさえ、当初から乃木坂46を模倣しようとしていたわけではない。櫻坂46の前身である欅坂46は平手友梨奈のグループだったし、日向坂46の前身であるけやき坂46は長濱ねるのために作られたグループだった。個に対する依存への反省や反感を抱く経緯があったうえで、ようやく乃木坂46と同じ道を歩むことになったのだ。
なぜ乃木坂46を真似することができないのか? あるいは真似しようとしないのか?
素人目線では、まず多人数アイドルグループを作ること自体にかなり高い壁があるように思える。人を雇用するのにはコストがかかるわけだから、金になりそうな人材だけを集めたい。そのような人材はそう多くないし、仮にそれをある程度集められたとしたらせっかくの人材は最大限活用したいから、グループの人数はそれぞれが目立てる10人前後にしたい。これが合理的な判断だ。それ以上の人数を確保しようとするのはリソースの無駄遣い。不合理だ。したがって、合理的な経営者は乃木坂46っぽいグループを作ろうとすることすらできない。
「最大で10人前後のグループを作る。売りはパフォーマンス力の高さ。どれが当たるか分からないからそんなグループをいくつか作る。補充要員は研修生としてどこのグループにも属させず抱える。」これが合理的な戦略に見えるし、JYPなどはそれで乃木坂以上の規模と乃木坂並みの経営効率を達成しているわけだから実際に合理的なのだ。
そんなんだから乃木坂46と競合しようと思う組織がほぼ存在しない。思った組織があったとしてやはり独自色を出したくなるもので、一人のスターを前面に押し出すみたいな乃木坂の戦略の真逆を行ってしまいがちだったり選抜制を忌避しがちなのは欅坂46を見れば分かる。だが、それでは乃木坂46の戦略を模倣したことにはならない。上に書いた一連の打ち手全てを合わせて乃木坂46の戦略だからだ。
というわけで、乃木坂46を模倣して乃木坂46を崩せるのかを考えるための材料が非常に少ない。この事実自体が乃木坂46の盤石さを物語っている。
その点、僕が見たかった青空が今後どうなっていくのかは非常に興味深いところだ。個人的には宮腰友里亜ちゃんと安納蒼衣ちゃんは可愛いと思うが、やはり良い人材は乃木坂に吸い取られてしまっているように私には見える。13年の歴史が乃木坂をさらに強くしている。
*1:Willingness to pay。顧客が払ってもいいと思える金額のこと。
*3:決算短信 | 株式会社 アミューズ - AMUSE - 2024年3月期は赤字なので2023年の数字を引用。
*4:キャパ3万人超