たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

『チートデイ』を受けて、乃木坂46の選抜について考える

 2024年7月19日、乃木坂46の36thシングル『チートデイ』の先行配信が始まった。

 楽曲は耳馴染みのいい良曲だが、MVもまだ公開されていないし、私の能力では特に語れることがない。

 それよりも今回、選抜メンバーが面白い。興味が湧いてこれまでの傾向を調べてみたら、現在の乃木坂46内の序列が見えてきた。

センター

 センターは井上和。33rd『おひとりさま天国』に続いてのセンター。ここは特にサプライズがない。

 ちなみに、歴代で複数回センターを経験しているのは以下の面子。

7回:西野七瀬

6回:生駒里奈

5回:白石麻衣齋藤飛鳥

3回:山下美月、遠藤さくら、賀喜遥香

 複数回センターを任されたのはレジェンドばかり。井上和センターに「サプライズがない」とか当然のように書いてしまったが、実は当たり前ではない。井上和がレジェンドになることが確約された重要な一歩なのだ。

センター横

 今回の最大のサプライズであり面白みがギュッと詰まっているのがここ。センターの両サイドに池田瑛紗と小川彩。

 小川を選抜にという声は以前からあったものと思われるが、おそらくは年齢が理由でアンダーに据え置きされてきたところ、今回ついに選抜。そして、いきなりセンター横。

 池田も33rdから続けて選抜入りを果たしていたものの、3列目→2列目→3列目と来ていたので、センター横は一気に引き上げられた感がある。

 面白いのは、これまで若手の抜擢といえばセンターに据えることだったのが、今回はセンター横を使ってきたことだ。センターの重圧で潰れるのを回避しながら、複数の若手を引き上げられるメリットがあるはずだが、乃木坂ではあまり見られなかったように思える。確認してみよう。

初選抜=センター横のパターン

 まず、歴代で初選抜がセンター横だったのは、

の4人だけ。生田・星野は1stシングルなので無視する。

 賀喜・筒井は、遠藤が『夜明けまで強がらなくてもいい』でセンターに抜擢されたのとセットでの起用だった。新人をセンターに抜擢するのは乃木坂の伝統で、2期生では堀が、3期生では与田と大園がダブルセンターで起用された。4期生では遠藤・賀喜・筒井が甲乙つけがたったのかもしれない。

 実際、遠藤と賀喜はこの後、12回連続で選抜入り、福神*111回*2、フロント9回、とエリート街道を驀進している。筒井は、10回選抜入り、4回福神。前回はアンダーだったものの、センターを務めた『車道側』のMVが表題曲『チャンスは平等』を上回る再生数を記録したという活躍ぶり。

 今回も『夜明けまで強がらなくてもいい』の考え方で選ばれたとすると、小川は今後選抜の常連となることが確約されていると考えてもいいかもしれない。

 ただ、5期生で最初にセンターに選出されたのは中西が単独でだったし、井上がセンターに選ばれたときもフロントにほかの5期生は起用されなかった。それを考えると、「井上・池田・小川」の三点セットというより「井上+ほか二人」という感じが個人的にはする。それに、5期生の競争は熾烈で、序列がこれで定まったとは考えづらい。次は別の5期生を井上の隣に並べる、なんてことがありそうな気がしてならない。とはいえ、それはあくまでフロント固定とまでは言えないぐらいの話であって、やはり小川が今後選抜落ちすることはまずないだろう。

3列目からセンター横のパターン

 池田と同じく、前作で3列目だったのにセンター横になった例は以下のとおり。

 生田・星野は経験者だし、中田・桜井に関しても初期も初期で序列がまだ定まっていない頃だったからあまり考慮に入れる必要はなさそう。

 衛藤は『今、話したい誰かがいる』が初フロントで初センター横。乃木坂初のダブルセンター楽曲で、しかもダブルセンターを務めたのがすでにエースとなっていた西野&白石。以降、衛藤は引退するまで9回連続で福神に選ばれている。

 梅澤と久保は、山下の初センター『僕は僕を好きになる』での起用。この時は白石が卒業した直後で、西野・白石・生駒といった乃木坂の柱がいなくなった後の初めてのシングルでもあった。次世代である3期生を前面に押し出した形だ。以降、二人ともずっと福神入り。しかも、梅澤はキャプテンになっているし、久保はセンターも経験することになる。

 そう考えると、今回は山下という現役センター最多経験者が抜けた直後のシングルだから、池田起用の考え方は梅澤久保パターンに近そうだ。池田と小川はこれからの乃木坂の中心メンバーとなることが期待されているのかもしれない。

 ただし、『僕は僕を好きになる』の時と今回とで、異なる点がある。

 梅澤と久保がセンター横に起用される直前、25th『しあわせの保護色』までで選抜を経験していた3期生は9人。以下のような状況だった。

与田:選抜7回(福神6回、センター1回)

大園:選抜6回(福神4回、センター1回)

山下:選抜5回(福神4回)

梅澤:選抜5回(福神3回)

久保:選抜4回(福神2回)

岩本:選抜3回(福神1回)

伊藤:選抜1回

佐藤:選抜1回

阪口:選抜1回

 山下・梅澤・久保は、センター経験者の与田と大園を除いた中でのトップ3だったのだ。梅澤と久保がセンター横に選ばれたのは順当だったわけだ。(ちなみに、久保に次ぐ順位だった岩本も今に至るまで選抜入りが続いている。)

 対して、前回シングルまでの、5期生の選抜状況は以下のとおり。

井上:選抜4回(福神4回、センター1回)

池田:選抜3回(福神1回)

川崎:選抜4回(福神3回)

一ノ瀬:選抜4回(福神1回)

五百城:選抜4回(福神1回)

菅原:選抜3回(福神1回)

冨里:選抜1回(福神1回)

中西:選抜1回(福神1回、センター1回)

 この数字だけ見れば、井上は当然として、川崎・一ノ瀬・五百城の方がレースで先を行っていた。一ノ瀬・五百城に関しては選抜入りが早かっただけと言えるかもしれないが、川崎は前回2列目で池田は3列目だったから、少なくとも川崎>池田だったのは明確だ。

 序列どおりの起用だった3期生に対し、今回は序列を覆す起用がなされた。これは5期生の序列がいまだ定まっていない混戦模様を反映しているのかもしれない。今回で池田が一歩リードする形になったが、その地位が盤石かはまだ分からない。今、乃木坂で最も面白い部分だ。

残りのフロント

 ここはサプライズなく賀喜&遠藤。

 ちなみに、現在のメンバーでフロント(センターを除く。)の経験があるのは、次のとおり。回数に今回の分は含めていない。

与田:9回

賀喜:5回

遠藤:5回

梅澤:4回

久保:4回

岩本:1回

 与田ちゃんがダントツだが、32~34で3連続で2列目に甘んじているし、ここ最近は序列を下げてきているように見える。

 梅澤・久保・岩本については、山下の卒業シングルブーストがあるので1回分差し引いて考えた方が良さそう。

 こう考えると、現在の乃木坂のトップは、間違いなくかきさくなのだ。

2列目

 2列目は次のメンバー。

  • 梅澤
  • 久保
  • 一ノ瀬
  • 五百城
  • 与田
  • 岩本

 サプライズは、6回連続で2列目に入っていた田村が落ちたことだろう。田村は4期生の中で筒井に並ぶ選抜回数の強者。

 ちなみに、4期生の選抜回数ランキングは次のとおり。(今回のシングル含む。)

遠藤・賀喜:13回(福神12回)

田村:11回(福神6回)

筒井:11回(福神5回)

弓木:7回(福神1回)

柴田:6回

金川:5回(福神1回)

早川・清宮:5回

掛橋:3回

黒見・佐藤・松尾・林:1回

 こうやってみると遠藤・賀喜・田村・筒井とそれ以外との格差がすごい。その中で田村すら福神落ちしたというのはけっこう重い事実かもしれない。4期生には冬の時代が訪れつつある。

3列目

 3列目は次のメンバー。

  • 中西
  • 川崎
  • 弓木
  • 田村
  • 冨里
  • 菅原
  • 金川
  • 筒井

 これまで見てきたことを総合すると、田村・弓木・川崎・筒井が入るのは既定路線。残る4枠に誰を入れるかが悩みどころ。

 実績的に当落線上にいるのが、4期生では柴田・金川、5期生では菅原・冨里。これならぴったり4枠が埋まるが、やはりこれまで選抜されたことのない者や選抜回数が少ない者を入れたほうが面白い。

 ちなみに選抜経験少ない人ランキングが以下(今回は数字に含めない)。

0回:岡本、奥田、矢久保

1回:吉田、黒見、佐藤璃果、松尾、林、中西(、冨里)

2回:向井、中村

3回:阪口、掛橋(、池田、菅原)

 まず、ここから3期生は除外したい。前回、山下の卒業シングルで全員を選抜に入れたばかりだから。

 4期生からは矢久保、黒見、佐藤、松尾、林。5期生からは岡本、奥田、中西。

 ここから選ぶか、選ばないか。選ぶということは、柴田・金川・菅原・冨里の誰かを落とすということでもある。

 ここで運営が選んだのは中西アルノ。デビュー後、即センターに抜擢された期待の星が、ようやく選抜に戻ってきた。禊は済んだと運営が判断したのなら、今後選抜や福神の常連となる可能性は高い。今後、選抜争いがますます激化することが予想される。

 アルノINの代わりにOUTとなったのは柴田。やはり運営としては今後のために5期生を推していきたいだろうし、3列目だけのバランスを見たら落とすのは4期生にした方がいい。アンダー期間は金川の方が1作分長いし、プロ野球オールスターがエスコンフィールドで開催されるし(関係ないか)……てな具合で柴田が落ちたのではなかろうか。

まとめ

 色々と学びが多かったので、重要ポイントをまとめてみよう。

  • 複数回センターになったらレジェンド
  • 一度センター横になったら選抜常連はほぼ確定。福神常連の可能性も大。
  • 3期生では梅澤・久保・与田・岩本が福神常連
  • 4期生では賀喜・遠藤が別格。田村・筒井が福神常連で、弓木・柴田・金川がそれに続く。
  • 5期生では井上が別格。今回で池田・小川が頭一つ抜けたかもしれないが、川崎・五百城・一ノ瀬も選抜常連。中西も今後、強キャラ化していく可能性あり。
  • 選抜とアンダーの境界線上にいるのは、柴田・金川・菅原・冨里

 選抜常連組が14人。弓木も常連組に入れるなら15人。近年、選抜の人数は19人か20人だから、入れ替わり席は4、5席程度しかない。中西が上に行くならさらに減って3、4席。競争が激しすぎる……。

今後の展望

これまでの傾向

 今回の選抜の特徴はやはりスリートップに5期生が選ばれたこと。上記のとおり、『夜明けまで強がらなくてもいい』と『僕は僕を好きになる』に重なるところがある。

 ここで一旦、『夜明けまで~』からの流れを振り返ってみよう。

24th:センター遠藤、両サイド賀喜・筒井(かきさく時代の始まり)

25th:センター白石、両サイド松村・生田(白石麻衣卒業シングル)

26th:センター山下、両サイド梅澤・久保(乃木坂の中心が1期生から3期生へ)

27th:センター遠藤、両サイド齋藤・山下(再びかきさく時代へ)

28th:センター賀喜、両サイド齋藤・与田

29th:センター中西、両サイド齋藤・山下(5期生加入)

30th:センター賀喜、両サイド齋藤・山下

31st:センター齋藤、両サイド山下・遠藤(齋藤飛鳥卒業シングル)

32nd:センター山下・久保、両サイド賀喜・遠藤

33rd:センター井上、両サイド賀喜・遠藤(5期生時代の始まり)

34th:センター遠藤・賀喜、両サイド山下・久保

35th:センター山下、両サイド梅澤・久保(山下美月卒業シングル)

36th:井上センター、両サイド池田・小川

 センターに注目してみると、24th以降は明確にかきさく時代だ。新人センターシングル、卒業シングルとその直後を除き、基本的には遠藤か賀喜がセンターを務め、そこに井上が割って入りつつあるのが今。

 33rdは初センターの井上だけでなく、かきさくにとっても明確な分岐点だ。それまでセンター横は齋藤と山下のセットが多かったのだけれども、齋藤が卒業する。卒業後一発目は山下久保のダブルセンターだから横は当然かきさくになるわけだが、問題は次=33rd。井上がセンターを務めて、その横に誰が入るのか?となったときに、山下が弾かれて、かきさくが選ばれた。センターだけでなく、センター横にまでかきさくの力が及ぶようになったのである。

 参考として、23rd以前も概観してみよう。まず、生駒が5連続でセンターを務める。続いて、白石、堀のセンターの後に西野時代が始まる。西野を主軸としつつも、生田、生駒、卒業シングルを挟み連続でセンターはさせない仕組み。そこに齋藤飛鳥が台頭してきて、西野・齋藤・白石の三頭体制ができあがる。そして西野が卒業→齋藤センター→遠藤センターに至る。つまり、三頭体制の終焉とともにかきさく時代が幕を開けたという流れ。

 以上を勘案すると、今の主軸は遠藤と賀喜、そして井上。伝統的なやり方でいくならば、今後は遠藤・賀喜・井上でセンターとセンター横を回していくことになりそうだ。

 そして、遠藤・賀喜・井上以外では、誰が卒業することになったとしても卒業シングルはなさそうだ。6期生が加入するのはおそらく10月頃になる。早ければ次回、早くなければさらにその次のシングルで6期生がセンターに立つのが慣例。それを除けば、しばらく遠藤・賀喜・井上体制が揺らぐ余地はない。遠藤か賀喜のいずれかが卒業すると、もう一方もセンターから退き、後進に道を譲る流れになる。これが従来のやり方だった。

真のポイントは3期生が2列目にさがったことかもしれない

 ところが今回、センター横に池田と小川が入った。これにより、単純に井上・遠藤・賀喜で回していくという線は薄くなったかもしれない。

 では、どうなるのか? 難しいが、次回を考えてみよう。

 とりあえず、次のような案を考えてみた。

 

(A案)

一ノ瀬 遠藤 賀喜 井上 五百城

(B案)

中西 賀喜 遠藤 筒井 井上

(C案)

中西 賀喜 遠藤 井上

(D案)

一ノ瀬 川崎 賀喜 遠藤 井上 五百城

(E案)

遠藤 井上 五百城 一ノ瀬 賀喜

 

 A案は、順当に遠藤・賀喜・井上がトップ3を占めるパターン。この場合、おそらくはフロントに5期生が二人入ってくるのではないか。

 B案は、トップ3に筒井を入れるパターン。こうすると、井上のシンメトリーにおそらく5期生が入ってくる。5期生から一人だけなら、自分だったら中西を選ぶかな~。

 C案はダブルセンターのパターン。ダブルセンターの場合はフロントが4人になる確率が高い。この場合、新鮮味を出せるのは中西の位置だけになる。

 D案はダブルセンターでフロントが6人のパターン。これだと井上以外の5期生を3人起用できる。5期生から二人、4期生から一人もあり。

 E案は遠藤・賀喜・井上以外からセンターを選ぶパターン。中西はまだセンターには上げないだろうし、可能性が高そうなのは池田・小川・五百城・一ノ瀬・川崎・筒井・6期生あたりか。

 いずれの場合でも、井上がセンター以外で初めてのフロント、3期生からはフロント起用なし、井上以外の5期生からフロントに選ばれるのは変わらない。

 無難にいくならA案。とにかく早く5期生にフロントを経験させたいならD案一択だし、C案はありえない。インパクト重視ならB案、次点でE案ってところか。個人的にはB案が一押し。

 ……と考えていくと、実は今回の選抜のポイントは、5期生のセンター横起用ではなく、3期生をフロントに起用しなかったことではないか。これが次回以降も続くとすると、5期生からの抜擢が増えるのはもちろん、4期生からの抜擢の可能性も高まる。上では4期生に冬の時代が訪れつつあるなんて書いたが、遠藤と賀喜にセンターの途が開かれている間は、筒井・田村・弓木クラスに関してはむしろチャンスが広がっているのかもしれない。

次回の注目ポイント

 というわけで、気が早すぎるが、次回の選抜発表は以下に注目するとより楽しめるかもしれない。

  • 3列目で柴田・金川は呼ばれるか? → 呼ばれなかったら、覚悟しよう。
  • 3列目で田村・筒井・弓木が呼ばれるか? → 呼ばれなかったら、昇格を期待。
  • 3列目で中西・菅原・冨里は呼ばれるか? → 呼ばれなかったら、昇格か選抜落ちかハラハラ。
  • 2列目までで一ノ瀬・五百城・川崎・池田・小川が呼ばれるか? → 呼ばれてなかったら、フロント入りの期待が膨らむ~。
  • 1列目で最初に呼ばれるのはかきさくか? → 呼ばれたら、時代の変化を感じよう。

*1:1列目と2列目を表す乃木坂用語。ファーストシングルでは7人だけだったため七福神と呼ばれたことが由来。

*2:なお、3列目に甘んじたのは『夜明けまで~』の次の『しあわせの保護色』。白石の卒業シングルであるため、1期生のみで福神が構成された。