今日は『だから僕は音楽を辞めた』について語る。
ハマったのは2週間前。その時に記事を書いたものの何かが足りなくて下書きに眠らせていた。
それが昨日、『ルックバック』を観て、『だから僕は音楽を辞めた』についても書ける気がしてきた。
どちらも狂気に囚われたクリエイターの物語なのだ。ただ、『ルックバック』は漫画の道を歩み続けるが、『だから僕は音楽を辞めた』は音楽の道を外れてしまった。その差がある。
ただ音楽が好きなのではない。狂気なのだ。狂気というからには、世間に背を向けなければならない。大学に進学して、友だちと朝まで酒を飲んで、企業に就職して、結婚をして……といった王道のライフスタイルの反対を行くことを意味する。
「音楽を辞める」ということは、そうした狂気から脱することであり、世間の価値観に迎合することを意味する。多数説によれば、そうすることによって幸せになれるはずなのだ。
ところが、そうは問屋が卸さない。
将来何してるだろうって
大人になったら分かったよ
何もしてないさ
幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいんだ
満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感
一度狂気に浸かってしまった人間は足を洗うことができない。というか、そもそも世間の幸せに満足できる人間は音楽の道に没頭することなどできない。そういう風に生まれついてしまった。
本当に大切なことは、歩んできた道を突き進むことなのだ。映画ではそのことに気付いた時にクライマックスが訪れる。『だから僕は音楽を辞めた』も同じだ。漫画と音楽という差があっても、道を歩み続けるか逸れてしまったかの差があっても。
『ルックバック』が漫画へのラブソングだとすれば、『だから僕は音楽を辞めた』は音楽への失恋ソングなのだ。