たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

『もののけ姫』をグラフで表現する試み

 『ホモ・デウス』という本を読みました。『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた本です。

 その中で、

人間は神が意味の源泉だった時代から、人間が意味の源泉になる時代へ移行して今がある。しかし、今、データが意味の源泉であるとするデータ至上主義の時代が到来しつつある。

 みたいな感じの話が書いてあります。

自由主義経済がなぜ社会主義経済に勝ったのか? それは中央集権型のデータ処理システムより分散処理型のデータ処理システムの方が、当時の時代状況においては有利だったからだ。このようにデータを中心に考えると、人間も(他の動物に比べて優秀な)CPUとして捉えることもできる。

 みたいな感じの興味深い話もあって、なるほどね~と感心しながら読んでいました。

 

 そんな時、ふと目に入ったのが、私の本棚に鎮座しているもののけ姫の絵コンテでした。

もののけ姫 (スタジオジブリ絵コンテ全集11)

 

「これ、データ化できそうやん」

 そんなことを思いつきました。アニメーションは工業製品ですから、その設計図である絵コンテには様々な数的データが盛り込まれているのです。

 思いついたらやってみるべし。なんの意味があるのかも分からないまま、もののけ姫の絵コンテから各カットの秒数をスプレッドシートに打ち込んでみました。(誤解のないように書いておくと、ハラリはデータ化を推奨しているわけでもなんでもありません。)

 私はデータサイエンティストではないので、いったいここから何が読み取れるのかまるで分かりませんし、グラフの作り方もまずいかもしれません。

 ですが、せっかく作ったので公開してみます。

 ちなみに、途中からコンテ中のカット数とスプレッドシート上のカット数が一致していないため、誤入力が混じっている可能性が非常に高いです。

全体

 各カットの秒数をグラフにしたもの↓

 各カットが映画のどのへんかわかるようグラフにしたもの↓

 これだとよくわからないので、各パートごとに抜き出したものを下に載せます。

Aパート(冒頭~シシ神の森を抜けるまで)

 冒頭、たっぷり長い時間のカットがあって、そこからどんどん秒数が短くなっていきます。91カット目でタタリ神が倒れますが、そこまでの盛り上がりがグラフ上に現れている気がします。

 そこからまた全体の秒数が長くなっていき、また急激に右肩下がりになっていきます。171カット目で野武士の首がとびます。

 ジコ坊との出会いにかけて、また右肩上がりに。そこから急降下するのは、モロたちがエボシ御前を急襲するシーン。

 グラフが右肩上がりならば落ち着いたシーンになっていき、右肩下がりなら激しいシーンになっていくことが分かります。

Bパート(アシタカがたたら場を出るまで)

 アシタカがたたら場に入ると落ち着いたシーンが続きます。

 500カット目辺りからサンがたたら場を襲います。550あたりで上昇するのはエボシがサンを広場に誘い出すくだりです。

 アシタカがサンとエボシを気絶させるとグラフも右肩上がりになっていきます。

Cパート(イノシシ軍団が動き出すまで)

 Cパートは全体的に上下が少ないですね。しかも5秒以上のカットが多い。

 800付近は死にゆくアシタカのもとにシシ神が現れるあたりです。900付近はエボシがジコ坊を連れて、戦場からたたら場に帰還するあたりですね。「黙れ小僧」は950を過ぎたあたり。

Dパート(ラストまで)

 Cパートに比べ緊迫したシーンが多いことがグラフ上でもわかるDパート。

 まず押し通ります。そこから騎馬とのバトル。

 飛び出ている1150(実際のコンテ上は1169)は爆発に巻き込まれた男が肩を震わせているカット。その直後に、回想で猪たちが吹き飛ばされます。

 1300付近は乙事主がタタリ神になるあたり。1400付近はアシタカVS乙事主。1500手前あたりでシシ神の首が吹き飛び、デイダラボッチが出現します。

 1535の19秒はコンテ上では1561カット目で、トキが寝ている甲六を起こそうとする場面です。1600手前はアシタカたちVSジコ坊のあたり。ここまで見てきて、宮崎駿監督は盛り上がるシーンの前に長くて静かなカットを挟むことで、落差を生み出していることがグラフ上から分かります。

 そして全てが終わった後は全体的にゆったりとしています。

 

 グラフの元となる表は下のリンクから。

もののけ姫 - Google ドライブ

※「k」で表記されているものは24k=1秒として計算しました。

気分でそのカットで何が起こっているか書いています。

平均や標準偏差を計算してみましたが、そこから何かがわかるのかわかりませんでした。