たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

アメリカ映画ベスト100制覇への道:その9 マルタの鷹

 『マルタの鷹』は、相棒を殺された探偵が秘密を抱えた美しい依頼人を守るために秘宝を巡って危険な男たちと戦う話……と言えばよいだろうか。

 同名の原作はミステリー小説史上に残る傑作で、ハードボイルド小説の代表的作品。この映画は三度目にして忠実な映画化を達成したと評価されていて、フィルム・ノワールの古典と考えられているんだそうな。

 フィルム・ノワールとは

ニューヨークやシカゴなどの大都市の裏通りに1人で事務所を構える影のある私立探偵が、謎めいた雰囲気の美貌の女性とともに、腐敗した警官や堕落した富裕層などを相手に事件の解決に挑む。そしてその捜査が進むなかで裏切りや残酷性・倒錯した支配欲といった人間の負の側面が暴き出され、探偵と女性も自らがかかえる過去の傷に向かい合うとになる[14]。これら全てが、行き場のない閉塞感を強く印象づける暗い画面で描かれるのである。

フィルム・ノワール - Wikipedia

 ふーん……。

 『タクシー・ドライバー』もフィルム・ノワールに分類されるらしい。まあ、なんかちょっと暗めの作品の地位を築いたのが『マルタの鷹』ってところか。『攻殻機動隊』なんかはフィルム・ノワールの影響が濃いかもしれない。

 ついでにハードボイルドについても勉強しておこう。

「ハードボイルド」は元来、ゆで卵などが固くゆでられた状態を指す。転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。

ハードボイルド - Wikipedia

 たしかに『マルタの鷹』の主人公サム・スペードは感情を表に出さない。相棒が死んでも悲しむ素振りがない。そのわりには女好き。このサム・スペード、相棒の妻と不倫しているのだ。そのせいで警察から相棒殺しの犯人ではないかと疑われてしまう。にもかかわらず、依頼人ともなぜかチューチューしている。なんだこいつ。

 このサム・スペードを演じたのが『カサブランカ』で有名なハンフリー・ボガート。彼の出世作がこの『マルタの鷹』なんだそうな。

 まあ、正直に言って、私には『マルタの鷹』の良さは分からなかった。だが、『マルタの鷹』の構成要素がなんだか魅力的なものであることは分かる。

  • すべてを見通してそうな雰囲気を醸し出している腕っぷしの強い主人公
  • ミステリアスな美女
  • 物腰柔らかなエージェント
  • 頭の足りない鉄砲玉
  • 金持ちの親玉
  • 第三勢力としての警察
  • いわくつきの秘宝

 なんだか『ルパン三世 カリオストロの城』を思い出す。実際、『マルタの鷹』は謎解き要素はほぼ皆無。ミステリーはミステリーでも、探偵小説より怪盗小説に近いのではなかろうか。

 『カリオストロの城』との大きな違いは、舞台が都会か古城かにある。おかげで『カリオストロの城』の方がいろいろな意味でよりロマンチックに仕上がっている。が、その分ノワールな感じは失われている。

 たぶん都会には閉塞的な雰囲気があるものなのだ。田舎で事件を解決すると、しがらみからの解放の雰囲気が出る。一方で、都市で事件を解決しても、これは数ある事件のうちの一つでしかないって感じがある。……のではないか。

 いや、あるいは都会を舞台にやたらロマンチックな秘宝(都会では失われてしまった何か、もしくはそのように思われているもの)を追い求めることの虚しさなんかがポイントなのかもしれない。

 とりあえず舞台が都会というのはフィルム・ノワールにとって非常に重要なポイントなのであろう。知らんけど。

 もしかしたら『攻殻機動隊』も舞台を東京から屋久島あたりに移したら全く別物になってしまうのかもしれない。