2022年も終わるので、今年読んだ本を書き出してみる。
記号の意味は次のとおり。
△:読まない方がよかった
◯:読んでもよかったけど読まなくてもよかった
◎:読む価値があった
☆:心が震えた
- ホモ・デウス ◎
- 沈黙のWebライティング ◯
- 失敗の科学 ◎
- 江戸川乱歩傑作選 ◎
- タヌキ学入門 ◯
- 雪国 ◎
- 田舎教師 ◎
- 『田舎教師』について ◎
- 和解 ◯
- 三四郎 ◯
- 暗号解読 ☆
- 十角館の殺人 ◎
- 2016年の週刊文春 ☆
- 教養悪口本 ◯
- 読みたいことを、書けばいい。 ◯
- 「面白い!」のつくり方 ◎
- ことばの発達の謎を解く ◎
- 国家 ☆
- バッタを倒しにアフリカへ ◎
- 宇宙創成 ☆
- ふたたびの高校数学 ◯
- 三体X ☆
- プロジェクト・ヘイル・メアリー ☆
- そして誰もいなくなった ◎
- シャーロック・ホームズの冒険 ◯
- 異常【アノマリー】 ◯
- 最悪の予感 パンデミックとの戦い ◎
- となりのハト ◎
- サッカー店長の戦術入門 ◯
- 六人の嘘つきな大学生 ◯
- 黒牢城 ◯
- そうだ神様に訊こう! △
- 同志少女よ、敵を撃て ◯
- 科学者たちが語る食欲 ◯
- 火星の人 ◎
というわけで、今年読んだのは35作品だった。『国家』や『プロジェクト・ヘイル・メアリー』など上下巻ものがあるので、冊数としては40冊ぐらいか。少し少ない。
感想
1~18
18までの感想は下の記事で書いた。
weatheredwithyou.hatenablog.com
バッタを倒しにアフリカへ ◎
詳細は下の記事で書いているが、これは面白かった。私は外国の話を読むのが好きなのかもしれない。
weatheredwithyou.hatenablog.com
宇宙創成 ☆
本当にハズレがないサイモン・シン。
『チ。ー地球の運動についてー』を読んでテンションが上った状態で読んだので、地動説が地位を確立するまでがピークだと勝手に思い込んでいたが、そんなことは全然なかった。この本は人類がいかにしてビッグバンセオリーにたどり着いたのかまでを描いている。
地動説の話も当然出てくるし非常に面白い。そもそも天動説に至るまでの「古代ギリシャ人がいかに地球の大きさや月の大きさやそこまでの距離などを算出したのか」の話からして面白い。しかし、地動説の後からもまだまだ面白いのだ。
アインシュタインが偉大な科学者であることは常識のある日本人であれば誰もが知っているわけだが、アインシュタインがなんの業績でノーベル賞を受賞したかご存知だろうか。光電効果を光量子仮説によって説明したことがアインシュタインにノーベル賞をもたらしたのである。この論文をアインシュタインが発表したのは26歳の時だ。これだけでも驚異的だが、驚くべきはこれからだ。同じ年、アインシュタインは特殊相対性理論に関する論文も発表している。ついでにいえば、ブラウン運動に関する重要な論文も発表していて、この年、1905年は奇跡の年と言われている。しかも、この2年後には特殊相対性理論を拡張した一般相対性理論に至る足がかりを得ている。「いや、相対性理論でノーベル賞受賞したんじゃないんかい!」という驚きと「相対性理論ってそんなに若い時の研究なんかい!」という驚きの二連撃。庄田二連撃ならぬアインシュタイン二連撃だ。
そして、このアインシュタインの理論から様々な仮説が生み出されることになる。その一つがビッグバンによってこの宇宙は生まれたという今では常識となっている説である。問題は、この仮説を支持する証拠があるのか?だ。そのためには観測が鍵となるわけだが、ここにも様々なドラマがある。その過程で、地学の教科書で読んだ知識がたくさん出てくるのが楽しい。高校で学んだ情報が、ビッグバンセオリーを軸に配列しなおすと、これほどドラマチックな物語になるとは! 本を読んでいて最も幸せを感じるのは、世界の見方が変わる瞬間だ。『宇宙創生』はコペルニクス的転回を私にもたらしてくれた。素晴らしい本。結果、私は天体観測のために双眼鏡を買った。
この本は『フェルマーの最終定理』や『暗号解読』と決定的に違う部分がある。どちらの本も、ほぼ数学を題材にしているわけだが、数学は純粋に論理の学問だ。一方で、天文学や物理学は現実の現象を説明するための学問だから、観測が極めて重要になる。それは理論が間違っていないかを検証することが科学において大事だということだ。この違いが、『宇宙創生』に前2作とは異なる読み応えをもたらしている。
ふたたびの高校数学 ◯
たしか『暗号解読』を読んで数学を学び直したいな~と思って買った気がする。とりあえず通読したが、身になったかはわからない。でも数学は面白い。今は物理の問題集を買って勉強しているがサボリ気味。
三体X ☆
感想は以下の記事で書いた。二次創作だからといって侮るなかれ。二次創作だからこそ描けるものもある。
weatheredwithyou.hatenablog.com
プロジェクト・ヘイル・メアリー ☆
感想は下の記事で書いた。『三体』と『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が好きなのは、つまりファーストコンタクトものが好きってことなのでは疑惑が浮上中。
weatheredwithyou.hatenablog.com
そして誰もいなくなった ◎
感想は下の記事で書いた。クリスティー作品はもっと読んでもいいかもしれない。
weatheredwithyou.hatenablog.com
シャーロック・ホームズの冒険 ◯
クリスティーを読んだら、次はシャーロック・ホームズでしょということで読んだ。長編ではなく短編集。よくこんな話をポンポンと思いつくなあと感心する。
昨日、『LIAR GAME』の1巻を読みながら、これ「ボヘミア王のスキャンダル」っぽいな~と思ったりした。ホームズがアイリーン・アドラーの家にあるであろう写真を探す話。知恵比べとミステリーには親和性がある。
異常【アノマリー】 ◯
この小説、序盤は様々な登場人物が出てきて、全く異なる物語が展開される。なんなのだこれは?と思いながら読んでいると、だんだんとすべての登場人物に共通点があることに気づく。そして、その共通点の持つ意味が明かされる中盤。ここが異常に面白い。
ただ、そこまでが異常に面白かっただけに、「つ、つぎにどんな展開が待っているんだああァァァ~~~~???」と期待しながら読むとたぶん肩透かしを食らう。私は食らった。この小説はあくまでフランスの純文学なのだ。
最悪の予感 パンデミックとの戦い ◎
感想ともいえないものを下の記事で書いた。この本を読むと、「アメリカでは誰もマスクを付けていない!」みたいな言説がいかにクソか分かる。コロナ対策に関してはアメリカは盲従すべき国ではない。
weatheredwithyou.hatenablog.com
となりのハト ◎
感想は下の記事で書いた。こういう軽そうな本が案外、非常に面白かったりするから本選びは難しい。
weatheredwithyou.hatenablog.com
サッカー店長の戦術入門 ◯
ワールドカップに備えて読んだ。入門とか書いてあるが、これはあくまで戦術の入門であって、サッカーの入門書ではない。そのためある程度サッカー知識があることを前提に書かれており、ガチの初心者が読むと「?」を頭に浮かべながら読むことになる。これに耐えられない人もいるだろうし、耐えたとしてもあまり頭に入らないかもしれない。私は耐えたがあまり記憶に残っていない。偽9番ってなんだっけ……? ゲーゲンプレスってなんだっけ……? インナーハーフって何……? そんな感じ。(ちなみに、同じ著者が書いている『サッカーフォーメーション図鑑』という本も買って途中まで読んだのだが、やっぱりポジション名が全然分からなくて辛い。)
たぶん、ボールは人より速いからパスサッカーしようぜ派と攻守の切り替えの時に隙が生まれる派がいるとかなんかそんな感じの話だったような気がする。
あと、「労働者」とか「王」とか仰々しい比喩表現が多用されるのがちょっとくどくて疲れる。
ただ、素人が漫然とサッカーの試合を見ていると、ついついボールを持っているプレーヤーに注目して試合を見てしまいがちなのだが、そうではなく全体を俯瞰して見る見方があるのだということを学べたのはよかった。
六人の嘘つきな大学生 ◯
感想は以下の記事で書いた。昨日『LIAR GAME』を読んでいて思ったのだが、この本、リストラゲームを参考にしている? それともよくあるルールなのかな。
weatheredwithyou.hatenablog.com
同志少女よ、敵を撃て&黒牢城 ◯
感想は以下で書いた。
weatheredwithyou.hatenablog.com
そうだ神様に訊こう! △
京都に行って、ビジネスの観点から神社仏閣について書いている本を読みたいな~と思って買ったのだが、全然そんな本じゃなかった。ビジネスマンが好きそうな話を京都の神社仏閣をお題にして書いてみましたって感じの本。ほぼ流し読みしたので読んだと言えるのか微妙。
この本を読んだあたりから、本を読んで楽しいと感じることが少なくなったように感じる。停滞期の始まりである。
科学者たちが語る食欲 ◯
感想は下の記事で書いた。
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火星の人 ◎
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の著者のデビュー作(?)。映画『オデッセイ』の原作でもある。
スタイルは『プロジェクト・ヘイル・メアリー』と同じで、主人公のひとり語りで進行する。火星版ロビンソン・クルーソー(『ロビンソン・クルーソー』を読んだことないけど!)。無人星に取り残される絶望感は無人島に取り残されるどころじゃない。はずなのだが、主人公は精神的に超絶タフなのでジメジメとしてなくて気持ちよく読める。
基本的に火星での生活を描写しているだけなのだが、これが面白い。なぜなのだろうか? いや実は小説においては「起伏のあるストーリー」なんかよりも「ただ描写する」ということが非常に大事なのでは?と最近、思い始めている(と書くと『火星の人』に「起伏のあるストーリー」がないかのようだが、別にそういうわけではない)。問題は何を描写するのか?ということだ。この小説は夜空に浮かぶ赤く光る点、そこにズームインしていくと何があるのかをただ描写している。そんなことをしようと思う小説家は稀だった。だから面白い。のではないか。ということを考えていくと、小説家の卵がすべきことはうんうん唸りながら酒に溺れることではなく、ただ何かを描写してみることなのではないか。美大受験生がひたすらデッサンを描くように。
火星儀が欲しいな~と思って検索してみたら、基本的に数万円するらしい。高い。