たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

にわかがワールドカップベスト4について語る

 ここ最近、いつにもましてブログのネタがないなあ……なんて思いながら、サッカーを見ていて気づいた。

 ブログのネタは目の前にあるじゃないか。そう、ワールドカップについて書けばいいのだ。テレビまたはiPadの中で繰り広げられる、世界最高峰の選手たちが繰り広げる熱い試合。これについて語れることはたくさんある。

 なぜ自分はワールドカップについて書くことを思いつくことすらしなかったのか?

 それはにわかだからだ。普段は代表戦すら見ないくせに、ワールドカップの時だけ熱狂する人種。それが私。

 そんなんだから戦術論など語れやしない。個々の選手について語れることもほとんどない。各チームのバックグランドも下馬評もほとんど知らない。そんな自分がワールドカップを語るなんておこがましい。おそらくそんな気持ちが無意識を支配していたのだ。

 だがしかし、にわかは語ってはいけないなんてことはないはずだ。むしろにわかでも熱狂できることこそ、サッカーの、ワールドカップの強さなのだ。(これはオリンピックにも同じことが言える。)

 いやそれどころか、むしろにわかだからこそ、非サッカーファンと視点を共有できるのではないか。

 

 というわけで、ワールドカップ準決勝のにわかなりの激アツポイントについて語っていきたいと思う。

理想のワールドカップとは

 個別の話をする前に、私にとって理想のワールドカップとはどのようなものかを述べていきたい。

サッカーは多様性のスポーツだ

 前提として、サッカーの魅力はなにかといえば、これは圧倒的に多様性だ。

 まず、ワールドカップには世界中から様々な国が参加する。ヨーロッパだけでなく、南北アメリカ、アフリカ、アジア、オセアニア、どの大陸からも参加しており、どの国もわりと対等に戦っている。

 さらに、個人も多様だ。特に、身長にさほどの偏りが見られない。オランダ代表の平均身長は181cm程度のようだが*1、2001年生まれの19歳男性オランダ人の平均身長は182.9cmらしい*2。一般人の方が平均身長が高い? 本当か? 信じがたいが、とりあえず身長が高ければ高いほど有利というわけではなさそうだ。身長だけでなく、得意なスキルも人によって異なる。極端な例で言えば、前田大然のように走ることが得意な選手もいる一方、メッシのようにあまり走らない選手もいる。

 加えて言えば、戦い方も多様だ。スペイン代表のように巧みなパス回しで試合を支配しようとする戦術もある一方で、今大会の日本代表のようにボールを支配されながらもカウンターで得点する戦い方もある。あるいは、高い身長を生かしてセットプレーに強みを持つチームもある。

 これはサッカーファンからすれば当たり前のことかもしれないが、サッカー以外のファンからすれば異常だと言ってもいい。

 たとえば、卓球の世界選手権では、男子団体戦において2001年以来中国が優勝し続けている*3。優勝国以外を眺めても、ほとんどドイツ、日本、韓国で表彰台が占められている。女子に至っては、1975年から中国が優勝を逃したのは2回しかない。個人戦を見ても、表彰台の大半は中国が占めているのだ。

 さらに卓球のラケットはペンホルダーやシェークハンドなどがあり、ラバーには裏ソフトラバー、表ソフトラバー、粒高ラバー、アンチスピンラバー、戦術にはドライブ主戦型、カットマンなどがある。一見、多様な戦い方が許されているように見えるが、現実には世界のトップはほとんどがシェークハンドラケットに両面裏ソフトラバーを貼ったドライブ主戦型だ。(これは私が卓球を熱心に見ていた10年くらい前の話だから、今では状況が変わっているかもしれないが。)多様性とはほど遠い。

 卓球を引き合いに出したのは私が(比較的)詳しいのが卓球だからであって、他のスポーツも多かれ少なかれ似たようなものだろう。

 というわけで、少なくとも私にとっては、サッカーの最大の魅力は多様性なのだ。

強豪国

 とはいえ、そんなサッカーにも強豪国は存在する。

 代表がブラジルだ。優勝回数は最多の5回。ペレやジーコロナウドロナウジーニョなどの名選手を多数輩出し、毎大会、優勝候補に挙げられる。

 次がドイツだ。優勝回数はブラジルに次ぐ4回だが、上位に入る率でいえばブラジル以上と言っても過言ではないかもしれない。1954年~2014年の16大会で、ベスト4に入らなかったのはたったの4回だ(ブラジルは7回)。直近2大会で連続してグループリーグ敗退したのは極めて異例な事態といえる。

 優勝回数でドイツに並ぶのがイタリア。ちょっと意外な感じがするのは(私だけ?)、早期敗退もわりと多いからだろう。2006年に優勝したものの、2010年、2014年はGL敗退、2018年、2022年に至っては出場すらできていない。

 次に優勝回数が多いのは2回のアルゼンチン。最後に優勝したのはマラドーナ時代の1986年だが、それ以来2002年を除けば常に決勝トーナメントまで進出している安定して強い強豪国だ。

 アルゼンチンと並ぶのがフランスだが、その時期に注目してみると面白い。フランスは1998年以降の6大会で2回の優勝、準優勝も1回。出場したら二分の一の確率で決勝まで進出する、紛れもない強豪だ。しかし、1998年より前の成績に注目すると印象はガラリと変わる。1954年~1994年の11大会で予選敗退が5回、GL敗退が3回。あまりパッとしない。実はフランスのサッカーが強くなったのはここ最近の話なのだ。リーグ・アンリーガ・エスパニョーラプレミアリーグブンデスリーガセリエAに比べると地味なのはそのためか?

 その他に優勝回数は少ないものの「なんか強そう」感がすごいのがスペインとイングランドだ。スペインはバルセロナレアル・マドリードで有名なリーガ・エスパニョーラの国だし、わりと最近に優勝しているから、強豪といっても差し支えないかもしれない。イングランドも有名なプレミアリーグの国ではあるが、1966年に優勝して以降は2大会でベスト4に進出した程度で、はっきりいって大して強くない(今回はくじ運が悪かったかもだが)。まあ、ほぼ毎回グループリーグを突破しているからやっぱり強豪ではあるが。

地味に強いやつが派手に強いやつを倒すから面白いんじゃないの

 なんで長々とみんな知っているサッカー強豪国の紹介をしたかといえば、やはりスポーツは応援するチームがないと面白くないからだ。

 応援する理由で一番わかりやすいのは「自分の属するコミュニティのチームだから」だが、残念ながら日本代表はすでに敗退してしまった。

 では、ここからどのように応援すべきチームを見つけるべきか? 勝ち馬に乗りたい人間は強豪国を応援すればいいだろうが、それの何が面白いだろうか。まあまず勝つだろうと思われるチームを応援して、「順当に勝ったぜ。嬉しいぜ。」う~ん、なんて波乱のない人生。それの何が楽しいのか?

 まず、ディストピアを想像しよう。最悪の世界とは、サッカーがその魅力を失った世界だ。サッカーの魅力とは何か? 上で述べたとおり、多様性だ。多様性が失われたワールドカップとは、毎回ブラジルが優勝し、毎回ドイツが準優勝する世界だ。あるいは、つえー奴を一番揃えたチームが毎回勝つワールドカップだ。「うちにはバルサの選手が5人いるんだ。君のチームは? え? 0人?笑 じゃあうちの勝ちということで笑」これが一番つまらない世界だ。

 では、その逆はどうか? 実力と結果の間に全く相関性のないワールドカップ。これもまた最悪だ。「はぁ……はぁ……金と時間と労力をかけて代表をめちゃくちゃ強化したぞ……! ……ん? なんだって? 次のワールドカップはじゃんけんで勝敗を決めるだって!? そんなのサッカーの大会じゃないじゃないか! これまでの投資が水の泡だ!!」

 というわけで、ワールドカップが一番面白くなるのはその中間だ。勝利に値するだけの力を持っている弱者が勝つワールドカップ。良い感じに言い換えると、地味に強い奴が派手に強い奴に勝つワールドカップ。これが私にとって理想のワールドカップだ。

2022ワールドカップ準決勝の注目ポイント

 ここからいよいよ個別の試合の注目ポイントを語っていく。

アルゼンチンVSクロアチア

 地味に強い奴の筆頭がクロアチアだ。クロアチアがブラジルを倒した後、ツイッターを眺めていたら、こんな感じのツイートが散見された。

「ブラジルが負けるなんて誰も予想していなかった!」

「ブラジルが負けてショック!」

「実は日本て強かったのでは?」

 それ以前、日本がクロアチアに負け、スペインがモロッコに負けた(正確にいえばPK負けは引き分けだが)ときにはこんな感じのツイートをよく見た。

「PKの練習しろよ」

「死の組とか言われてたけど、実はドイツもスペインも弱かっただけでは」

 これらの発言に通ずるのは、クロアチアを侮りすぎだということだ。

 クロアチアは前回の準優勝国だ。2018年のロシア大会で3回の延長戦を勝ち抜き、うち2回はPK戦を勝っている。フィジカル、メンタル共に極めてタフなチームなのだ。チームの中心にはバロンドールに輝いたこともあり今もレアル・マドリードで活躍しているモドリッチが。

 ここだけ切り取って見れば、クロアチアは地味に強いチームでは全然ない。ど派手に強い。……はずなのだが、ブラジルブランドは強固だ。毎回のように優勝候補に挙げられながらベスト8前後で敗退することが多いのに、みんながブラジルは強いと信じている。

 「いや、前回って4年前だからね? スポーツの世界で4年前って言ったら大昔ですよ? それに今回のメンバーと出来を見ればブラジルが優勝候補なのは間違いなかった!!」という意見は分かる。分かるのだが、それにしてもクロアチアを侮りすぎなのだ。今大会を見ても、クロアチアは一回も負けていない。ブラジルはカメルーンに負けている。ターンオーバーだろうがなんだろうが、ブラジルが絶対的強者でないのは明らかだった。それでもみんなブラジルが優勝候補だと思い、クロアチアはそうでないと思っていた。誠に不思議なことである。

 というわけで、クロアチアは燦然と輝くブラジルブランドのおかげで地味に強い奴になった。これは応援しがいがある! 自分だけがその可愛さに気付いている女の子って感じだ!

 とはいえである。ブラジルがただネームバリューがすごいだけのチームだと面白くない。派手に強いチームにはちゃんと強くあって欲しい(だから私はGLでは強豪国を応援している)。この点、ブラジルは最高のパフォーマンスを見せてくれる。特に今回はすごかった。0-0のまま迎えた延長線前半の終盤、ネイマールが見せたゴールは本当に素晴らしかった。クロアチアを応援していた誰もが絶望したに違いない。みんながブラジルを強いと思うのも当然だ。だからこそ倒したときの喜びは大きい。クロアチアが同点ゴールを決めた時、PKの一発目を止めた時、PKで二者連続で中央をぶち抜いたときは、はっきり言って私は日本代表がドイツ・スペイン相手に逆転勝利を決めたとき以上に興奮した。私にとってブラジルは最高のヒールです。

 長々とクロアチアVSブラジル戦の話を書いてしまったが、ここから分かるように私の激推しはクロアチアだ。

 対するアルゼンチンは、やはりメッシが注目の的だろう。もはや説明不要の生ける伝説だが、ワールドカップでは活躍してるのかしてないのか微妙なところだ。過去4回のワールドカップでメッシは6得点を記録しているが、うち4点は2014年に準優勝した時のものだ。今大会は2014年に並ぶ4得点を記録している。おそらくはメッシにとって最後のワールドカップとなる今大会。そこでアルゼンチンがついに優勝を果たす!というのもなかなかストーリーとしては魅力的だ。クロアチア推しではあるものの、正直アルゼンチンが勝っても面白い気はしている。でもやっぱり世間はメッシを応援するだろうから、私はモドリッチを応援したい。

 ちなみに、アルゼンチンVSオランダ戦はイエローカードが乱れ飛ぶ荒れた試合になったが、アルゼンチンとオランダの試合は荒れがちな印象がある。記憶は定かでないのだが、実際アルゼンチンはワールドカップで最も多くのイエローカードをゲットしている国のようだし、これまでの1試合あたり最多記録にはオランダが絡んでいるらしい。今回の試合は、審判が誰であっても荒れた試合になる運命にあったのでは……と思うのは私だけだろうか。

フランスVSモロッコ

 みんなクロアチアを侮りすぎな準々決勝だったが、同じことがモロッコにも言える。

 グループFの一位だったのがモロッコだ。同じ組に前回2位のクロアチアと前回3位のベルギーがいたのにである。

 モロッコは堅守の国だ。ポルトガル戦までに私が見たのはクロアチアVSモロッコの試合だけだったが、印象に残ったのはやはり守備だった。90分間、集中力が絶えることなく、隙がない。これまでの結果を見ても、失点は1しかない。驚異的だ。

 にもかかわらず、やはり世間はモロッコを侮るのである。理由は「モロッコってなんか名前がコロッケみたいでダサい」くらいしかないだろう。それとも「クリスティアーノ・ロナウドとメッシが決勝で激突したらおもしろ!」「スイスに6-1で勝ってんだからポルトガルは強い!」とかそんな感じだろうか。しかし、デジャブだが、ポルトガルは韓国に負けているのである。一方、モロッコは今大会負けなしである。これでポルトガルの勝利を確信できるなんて信じられないよ。お前ら本当にサッカー見てるのか?(とにわかが言っている。)

 下馬評はともかく、攻撃力の高いポルトガルがモロッコを打ち崩せるのかが注目だった準々決勝は、モロッコの固い守備に乱れが生じる時間帯も見られたものの、結局得点には至らず。モロッコはキーパーが伸ばした手の上から叩き込む凄まじいヘディングシュートでもぎ取った一点を守り抜いた。

 激アツだね。ワールドカップは準々決勝が一番面白い。そんな気がする。

 というわけで、アフリカ勢初のベスト4進出を果たしたモロッコ。それでも世間はきっとモロッコに冷たいに違いない。モロッコがアフリカだから? モロッコにサッカーが強いイメージがないから? バイアスって怖い。差別の根幹を見た気がする。

 じゃあ例によって私がモロッコ推しかというと、これは微妙なところだ。私はフランスも好きなのだ。前回大会のエムバペのプレーに魅せられたし、上に書いたようにフランスは新興国だ。ここでフランスが優勝すれば、連覇は60年ぶりの快挙だし、ブラジルでもドイツでもなくフランスこそが真の最強という新時代が幕を開けることになる。これはすごいワクワクする。

 というわけで、どちらが勝っても面白いと思っている。やはり注目ポイントはフランスならモロッコの壁を打ち崩せるのか?ということだろう。ポルトガル戦、結果的には0点に抑えたものの、モロッコにも危うい場面はあった。フランスならば得点できる可能性は十分にある。一方で、フランスは今大会チュニジアに敗北を喫しているし、モロッコが勝つ可能性もまた十二分にあるのではないか。う~ん、実に面白い。

結論:今回のワールドカップはどこが勝っても面白い!

 というわけで、今回のワールドカップはどこが勝っても激アツである。

 神の子メッシが母国を36年ぶりの優勝に導けばドラマティックだし、クロアチアが前回の雪辱を果たすのも熱すぎる。フランスが連覇するのも壮観だろうし、モロッコが優勝したら……それはなんかヤバすぎる(良い意味で)。私のワールドカップを楽しむ姿勢に死角はない。

 ただひとつだけ恐るべき展開があるとすれば、クロアチアVSモロッコの決勝になって0-0のままPK戦で決着が着くことだ。それは流石の私も激萎えだ。いやでも、そこでもクロアチアが圧倒的なPKの強さを見せつけたら、それはそれで面白いか?

 ともかく、決勝が90分で終わりさえすれば最高のワールドカップになるだろう。