たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

2桁勝利&2桁本塁打に意味なんてないという話

 先日、こんな記事を見ました。

full-count.jp

 大谷翔平が今シーズン最後の登板機会を諦めて、「1918年ベーブ・ルース以来103年ぶりとなる同一シーズン2桁勝利&2桁本塁打」を達成することがなくなったという内容です。

 このタイトルはおかしいと私は思います。まるで大谷翔平が大偉業を成し遂げられなかったかのような文章です。

 現在の大谷翔平選手の記録をおさらいしてみましょう。

 これが大偉業ではないと?

 45本以上のホームランを放った投手の勝ち星は今まで最大で何勝だったのか?

 9勝以上した投手が今まで記録した最大の本塁打数は何本だったのか?

 検索してもすぐには出てきませんが、後者についてはおそらくベーブ・ルースの29本です。前者もベーブ・ルースであれば2本です。

 それを考えると大谷翔平の成績は偉業以外のなにものでもありません

(※野球を知らない人のために……45本のホームランというのは、2010~2019年の間に生まれたMLBホームラン王20人のうち12人の記録を上回るくらいの記録です。9勝という数字は、今シーズンのMLBでは55位タイの数字のようですが、今シーズンの横浜DeNAベイスターズではまだ誰も達成できていないくらいには大きい数字です。)

「いやいや。あのさぁ~、僕が言いたいのは『1918年ベーブ・ルース以来103年ぶりとなる同一シーズン2桁勝利&2桁本塁打』を達成できなかったねって、こ・と。わかりる?」と反論があるかもしれません。

 しかし、その記録にいったいなんの意味があるのか?

 「1918年ベーブ・ルース以来103年ぶりとなる同一シーズン2桁勝利&2桁本塁打」の記録の詳細は、13勝11本塁打です。

 9勝45本塁打と13勝11本塁打では比較にならないというのなら、10勝45本と13勝11本塁打でも比較になりません。

 2桁勝利&2桁本塁打に何か意味があると考えている人は物事をざっくりと考えすぎです。

 

 要するに、何が言いたいのかと言うと、人間の思考はかくも尺度によって規定されているということです。

 人類が10進法を採用していなければ、大谷翔平が登板を諦めたことがこのようにため息交じりに語られることはなかったでしょう。

 もし人類が2進法によって思考していれば、「大谷翔平、史上初の4桁勝利&6桁本塁打!!」と大ニュースになっていたに違いありません。逆に人類が12進法によって思考していれば、2桁勝利&2桁本塁打はもっと早くから諦められていたでしょう。

 私は悔しいですよ。10進法のせいで大谷翔平がこんなに侮られてしまうことが。

 

 毎年、クリスマスやバレンタインになると憂鬱な思いをする人類がいると思いますが、それも尺度の罠です。

 記念日なんてもんはこの世に存在しないのです。時間に区切りなんてものは存在しません。暦なんてものは人類が勝手に作った恣意的な道具にすぎません。思い込み、妄想の類です。

 2020/12/24と2021/12/24の間には「365日の時間差がある」という以外になんの関係もないのです。「どっちもクリスマス・イヴだね♡」と思うのはメルヘンな発想です。

 そんなもののために憂鬱になるのは馬鹿げていると思いませんか?

 だから、次のクリスマスを一人で過ごす方はこう思うようにしてください。

 「昨日も今日も同じ一日だ」と。

 

「そんなこと言ったらさー、そもそも1シーズンの成績を比較することも恣意的だし、野球選手としての実績だけを切り取ることも恣意的だよね!?」

という声があがるかもしれません。

 それはそのとおり。でも、大谷翔平選手が何本ホームランを打ったかで楽しんだ方がいいじゃないですか。

 尺度は道具です。自分の利益になるために使うのであれば、それは正しい使い方だと言えるでしょう。でも、尺度が道具であることを忘れて、尺度にこっちの気分を合わせるのは間違っています。

 大谷翔平選手にも落ち込まないで!と声をかけてあげたいですね。まあ落ち込んでないと思いますが。