たぬきのためふんば

ためになるか分からないことを書き綴っています。

その一言は10年の月日をかるくとびこえた--『青い花』のススメ

失敗したら傷ついたり傷つけたり……

成功したらしたで気軽にできてたことができなくなってしまったり……

あの人が楽しそうに誰かと話しているだけで嫉妬してしまったり……

恋ってものがこんなに苦しいものだとは。

 

 『青い花』。好きな漫画といえば、まず思い浮かぶのがこの漫画です。

 王子様のいない恋愛漫画が好きな人や、素朴な味わいの漫画を読みたい人、片思いばかりしてきた人におすすめします。

 

 話の舞台は、鎌倉にある二つの女子校。内気ながら恋多き少女・万城目ふみを中心に、様々な登場人物がそれぞれに少しだけ歪な恋愛模様を展開します。そんな高校生活を通して、恋愛などしたこともなかった奥平あきらは、人を好きになることとはどういうことかを知るのでした。

 まあ、そんな感じのお話です。

 

 描写はわりと淡々としていて、ドラマチックな展開はありません。でも、それがいいんです。自分のことでもないのに、まるで美しい思い出を振り返っているよう。日常の中の、特別な瞬間。それを切り取った私小説のような空気感があります。『花物語』の吉屋信子が漫画を書いたらこんな感じだろうというような。絵も線が少なくて素朴。しかし美しい。

 淡々としてはいますが、人間関係は複雑です。

 ふみが最初に付き合う、高校一のモテ女・杉本恭子(すぎもとやすこ)。これが本当に好きな人は、あきらの所属する演劇部の男性顧問。彼は杉本の姉の恋人です。

 あきらの友人でクールビューティーな井汲京子(いくみきょうこ)は、杉本のことが好きで好きでたまらなくて、それゆえに杉本に嫌われます。そんな京子ですが、彼女には許嫁がいるのでした。

 といった感じで、一癖あったりなかったりする登場人物たちが物語にドラマ性を添えてくれるわけです。きっと彼女たちの誰かに共感できる瞬間があなたにもあるのではないでしょうか。

 

 私は、物語のクライマックス、あきらが「わたしその人の話聞きたくないかも」って言うシーンが凄く好きなんですよね。最初に読み終わったときもジーンと感動が深く心に沈み込んでいったものです。きっと、『青い花』が私にとって特別な漫画になった瞬間はその時なのでしょうね。

 今回、これを書くために改めて一気読みしたのですが、やはりそのシーンでポロッと涙が。そして、そうかこの漫画は恋の醜さと美しさってのを描いているんだなと再発見しましたね。醜い恋があるのでもなく、美しい恋があるのでもなく、醜いから美しい、それが恋なんだと。すべてのエピソードは、それを根っこにした花なんだと。そして、たしかに恋ってそういうもんだよなと思うわけです。ガッキーがホッシーになって、素直におめでとうなんて言えるのはガッキーに恋していない人だけなのです。

 

 作者は志村貴子。彼女の作風の特徴は、以下の点にあると思います。

  • 描写が淡々としている
  • 登場人物が赤裸々である
  • 登場人物が性的になんらかの形で倒錯している

 『青い花』以外で、私が好きなのは『放浪息子』『どうにかなる日々』『敷居の住人』『娘の家出』あたりですかね。どれも「なんかわかんないけどなんかいいっ!」って感じの漫画です。

 

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今週のお題「一気読みした漫画」