たぬきのためふんば

ここにはめたたぬきが糞をしにきます。

8問目 固定資産圧縮損

Q備品10,000,000円の取得に当たり、国庫補助金5,000,000円を受け取り、会計処理を行っていた。この補助金を返還しないことが確定した。直接控除方式により圧縮記帳の処理を行った。

 

 

 まあー、取っ掛かりもつかめない問題です。直接控除方式とあるから

(借方)??? 5,000,000 (貸方)備品 5,000,000

となることはなんとなく予想ができますが、???には何が入るのでしょうか?

補助金をもらった時の仕訳

 まず、補助金をもらった時の仕訳は以下の通り。

(借方)現金 5,000,000 (貸方)国庫補助金受贈益 5,000,000

 勘定科目はどのような形で受け取ったか、どのような名目で受け取ったかによって変わってきますが、おおむねこうなります。

 ポイントは、補助金をもらったらそれは利益になるということです。税金がかかります。コロナの関係で様々な給付金や補助金が発生していますが、そのうちのいくつかは課税されるというのを小耳に挟んだことがあります。

 しかし、補助金を500万円受け取ったことで、仮に150万円の法人税負担が発生するとします。この補助金を10年使う備品の購入にあてた場合、まだ備品を購入したメリットを享受していないにも関わらず、150万円の税負担が発生することになります。

 まあ本当なら自分で全額負担しなければいけなかったわけで、別に損しているわけではありませんが、なにか釈然としないものがあります。減価償却や長期前払費用のように、費用と利益の享受のタイミングを合致させようとするのがこれまでなんとなく学んできた会計マインドです。だったら、利益にも同じようなしくみがあればいいのに!

 そういう理由かどうかは分かりませんが、圧縮記帳という手法が用意されています。

圧縮記帳

 圧縮記帳は、補助金で購入した固定資産のうち補助金相当額を損失とすることで、税負担を先延ばしにすることができる制度です。

仕訳の方法

 補助金を受け取ってから圧縮記帳するまでの仕訳は以下の通り。最後が圧縮記帳です。

(借方)現金   5,000,000 (貸方)国庫補助金受贈益 5,000,000

(借方)備品 10,000,000 (貸方)現金 10,000,000

(借方)固定資産圧縮損 5,000,000 (貸方)備品 5,000,000

 こうすることで、国庫補助金受贈益と固定資産圧縮損が相殺されてプラマイ0になります。つまり、法人税補助金に関してはかかりません。

支払う法人税の額は変わらない

 法人税は支払わずに済みましたが、備品の価額が下がったので、減価償却費も減ります。

 たとえば、本来であれば、10年の間、毎年100万円の経費を申告できたところが、50万円しか申告できなくなるとします。前者であれば、法人税を30万円下げる効果あったとして、後者では15万円しか法人税を下げることができません。

 少し分かりづらいかもしれないので、もう少し具体的な状況を設定してみましょう。もし仮に法人の収入が200万円で、法人税が利益の30%だとすると、法人税の額は以下の通り。

  • 経費がない場合:200万 × 30% = 60万円
  • 経費が100万円の場合:(200万 - 100万) × 30% = 30万円
  • 経費が50万円の場合:(200万 - 50万) × 30% = 45万円

 損失を計上すると、損失×税率の分だけ減税効果があることが分かると思います。

 さて、そうすると圧縮記帳によって、差額の15万円が法人税に上乗せされてしまいます。これが10年続くと……150万円の法人税を支払うことになります。

 圧縮記帳を行わなかった場合の法人税も150万円、圧縮記帳を行った場合の法人税も150万円。

 よって、圧縮記帳をしようがしまいが、最終的にトータルで支払う法人税の額は同じです。払うタイミングが異なるだけです。

まとめ

 というわけで、圧縮記帳とは、補助金等による法人税負担を先延ばしにする手法だということが分かりました。

 そして、「費用も利益もそこから受け取った便益と同じタイミングで計上する」という簿記の世界のルールが改めて見えてきたような気がします。

 なお、この圧縮記帳は掘り下げるともっと複雑なようです。問題に直接控除方式とあることからも察せられるように、積立金方式という別の方式もあるみたいです。

 が、今回は簿記2級の範囲だけ、ということでここまでにします。

7問目 純資産の部

Q.繰越利益剰余金100万円を次の通り処分する。資本金1000万円、資本準備金100万円、利益準備金100万円

 配当金:1,000円/株(発行済株式は1,000)

 利益準備金会社法が定める金額

 別途積立金:100,000円

 

 こんな問題がしばしば出題されます。純資産の部は出題頻度は少ないですが、たぶん覚えることはそんなにないので勉強します。

  •  基本の純資産三つ
  • 利益準備金
    • 冒頭の問題の解答
  • 任意積立金
  • その他資本剰余金
  • まとめ

 

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6問目 リースの仕訳

「このリース取引はファイナンス・リース取引であり、利子抜き法で会計処理する」

という問題がしばしば出題されます。

を調べます。

リース

 リース取引に関する会計基準によると、リースとは貸し手が借り手に物を貸して、借手が使用料を支払う取引をいうとのことです。会社なんかではコピー機をリースしてたりがよくあると思います。

リースの種類

 リースには二つの種類があります。

 ファイナンス・リースは契約を途中で解除できないもの、オペレーティング・リースはファイナンス・リース以外のリースのことを言うようです。

ファイナンス・リースの仕訳

 さて、リース取引に関する会計基準には、

借手は、リース取引開始日に、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上する。

 とあります。

 ですからファイナンス・リースの仕訳はこうなります。

(借方)リース資産 買った場合の価格 (貸方)リース債務 買った場合の価格

オペレーティング・リースの仕訳

オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

 とあるので、オペレーティング・リースの仕訳は以下の通り。

(借方)支払いリース料 払う金額 (貸方)現金 払う金額

(「現金」の部分は状況に応じて変わります。)

利子抜き法

 利子抜き法とは、ファイナンス・リースにおいて、リース資産・リース債務に利子の分を含めずに計上する方法を言うようです。つまり、上のやり方は利子抜き法です。利子抜き法の場合、リース代を支払う段階で、リース債務を減らすのにプラスして支払利息という勘定科目でリース債務と支払額の差額分を仕訳します。

 利子込み法とは、利子分を込みで(つまりリース料の総額で)リース資産・リース債務を計上する方法のようです。こちらの方が簡単ですね。正式なやり方は利子抜き法だけども、場合によっては利子込み法もあり、ということっぽいです。

まとめ

 ファイナンス・リースの場合、リースした資産について、資産と負債にそれぞれ計上する。原則として利子抜き法であるが、簡便な方法として利子込み法がある、ということのようですね。

 考え方として重要なのは、ファイナンス・リースはただ物を借りるというだけの取引ではないということです。「銀行にお金を借りて、物を買う。そして銀行に利子を付けてお金を返す」という取引の代替として、「リース会社に物を借りる。利子をつけて代金を払う」という取引をするのだと理解することが大切な気がします。つまり、本質は、借金もファイナンス・リースも同じだということですね。

 もし、銀行にお金を借りた場合、たとえば、こんな仕訳になるのでしょう。

(借方)当座預金 100万円 (貸方)借入金  100万円

(借方)備品   100万円 (貸方)当座預金 100万円

(借方)借入金    10万円 (貸方)当座預金   10万円

(借方)支払利息  1万円 (貸方)当座預金  1万円

(借方)減価償却   10万円 (貸方)備品     10万円

 …

 リースの仕訳はおおむねこれを

備品→リース資産

借入金→リース債務

に置き換えているだけのように見えます。

 簿記一級になるともう少し複雑になるようですが、二級の範囲ではこんなところでよいのでしょうか。

 

5問目 小切手

「小切手を振り出して~」

 頻出ワードです。小切手はどんな勘定科目になるのか?は絶対に覚えねばなりません。

小切手を振り出したら当座預金

 結論から言えば、小切手を振り出したら当座預金から払ったことになります。

 小切手はそれを銀行に持っていけば払ってくれるやつです。この点、手形と同じです。なので支払手形にしたくなる誘惑があるのですが、そうはならない。

 なぜかというと、手形でお金を貰えるようになるのは先のことだけど、小切手は今すぐに換金できるから。らしい。

 それは分かった。でもなぜ当座預金

 という疑問が湧くと思いますが、小切手は当座預金から支払いをするものだからのようです。

 逆に小切手を受け取ったときは、現金として扱うようです。

プロゴルファー猿

 私が小切手を初めて知ったのは小学生の頃です。親が持っていた『プロゴルファー猿』を読んでいた時、小切手というアイテムに出会ったのでした。

 『プロゴルファー猿』とは藤子不二雄A先生による傑作ゴルフマンガです。主人公は猿によく似た少年で、通称猿。山育ちで、木の根から掘り出したドライバー一本で強敵たちと渡り合います。

 猿は貧しい家の少年なのですが、ライバルに剣崎健という青年がいまして、彼がお金持ちのお坊ちゃんなのです。勝負に負けた健がウン万円の小切手を渡し、小切手というものを初めて目にした猿が驚くというシーンがあります(だいぶ昔の記憶なので定かではありませんが)。

 ということは、健は当座預金の口座を持っていたということですね。

 一方で、猿が受け取る時のことを考えると、猿は当座預金の口座など持っていそうにありません。それどころか猿は銀行の口座さえ持っているかも怪しいところがあります。つまり、猿が小切手でお金を受け取るなら現金一択ということになります。

 ですから、「小切手といえば『プロゴルファー猿』!」と考えれば、小切手の仕訳も覚えやすいかもしれません。

四問目 社債の取得の仕訳について

社債(額面総額○円、期間:○年、利率:○%、利払日:○月末日)を○日に額面@¥○につき¥○で取得した。代金は端数利息とともに~」

という問題。

 すでに大問1を12回分解いているのですが、この問題は頻出です。ぜひ押さえておきたいポイントです。

社債取得の仕訳は?

 この問題を解く際に、まず社債取得に関する仕訳をせねばなりません(利息を除いた部分)。

社債の勘定科目は?

 まず、社債の勘定科目はなんなのでしょうか?

 そもそも、社債は有価証券です。有価証券とは、ざっくりいえば株と社債の総称と言って良いでしょう。

 有価証券は以下の4つに分類されるようです。

  • 満期保有目的債券
  • 売買目的有価証券
  • 子会社株式及び関連会社株式
  • その他有価証券

 社債は目的に応じて上の二つのいずれかになると考えてよさそうです。

 簿記の問題だと勘定科目は列挙されているので覚える必要はありませんが、満期保有目的だと「債券」で売買目的だと「有価証券」なのが分かりづらいところです。「社債だから債券?有価証券ではないんだっけ?」と不安になります。

 でも、そもそもこの分類が有価証券全体の分類であることを理解しておけばそういった不安はなくなるかもしれません。

 「満期保有目的債券」なのは、「満期保有目的株券」というものが存在しないことを考えれば理解できます。

 株は株式会社の所有権であり、利益から配当を貰う権利であるわけです。その株式会社が存在する限り、株は持ち続けることができる。だから、株券には満期という概念がない。

 でも債券は、株式会社にお金を貸したその利子を受け取る権利を表しているものです。お金を貸すということは、貸した額に応じて利子をもらうということです。それには「いつまでに」という期間が想定されるので、満期保有目的がありうるのです。

社債の帳簿価額は?

 社債を購入した時に資産として計上する額は、いくらで購入したかによって決まります

 社債には額面総額というものが存在します。満期保有すると返ってくるお金のことであり、利率の基準になるお金でもあります。

 まあ、他のものもいくらで売れるかではなくいくらで手に入れたかで計算しているわけだから、そんなに違和感はないのではないかと思います。

利息の計算は?

 問題はこれで終わりではありません。だいたいにおいて、債券自体の額に加えて、取得時点までの利息を払わなければならなかったりします。

 計算自体は簡単です。設問次第になるかもしれませんが、例えば3月末に前回の利払日を迎えていて、4月1日に購入するなら、額面総額×利率×1日/365日で算出できます。

利息の勘定科目

 ここが悩みどころです。選択肢には支払利息と有価証券利息があります。どちらを選べばよいのでしょうか?

 結論から言うと、この場合は有価証券利息。

 支払利息は借金をした場合の利息の支払いに用いるようです。

 しかし、ここは分かりづらいところです。

 とりあえず、社債が有価証券であることさえ理解していれば、社債の利息に支払利息を用いてしまったら有価証券利息はいつ使うの?と考えれば有価証券利息を選べそうです。

 さらに踏み込んで考えると、有価証券の利息を支払うべき主体は、社債の発行体になる気がします。となると、第三者であるただ社債を買っただけの人が支払っているものは、厳密に言えば利息相当額であって利息そのものではない気がします。

 さらに社債を購入したその先のことも考えてみます。たとえば額面100万円で利率1%利払は年一回だとしたら、利払日が来ると1万円の利息を受け取ることになります。この債券を購入する時に0.3万円の端数利息を支払っていたとします。そうすると、正味の利息は0.7万円と考えるべきな気がします。

 ところが、もし端数利息の支払いを支払利息として処理した場合、支払利息0.3万円の受取利息1万円となりそう。この場合、科目が違うので相殺ができません。これはなんだか変な気がします。

 つまり、社債を購入する時に支払った利息相当額の勘定科目は何になるのか?という考え方ではなく、保有社債の利息を受け取る時の勘定科目は何になるのか?という考え方をするべきなのではないかと。

結論

 まあごちゃごちゃ書きましたが、結局のところ、社債は有価証券だ!と確信を持って言えるようになれば全て解決する気はします。

 これを書くにあたって、一部参考にしたのが企業会計基準。そもそも簿記のルールって誰が定めているの?という疑問の答えがこれと企業会計原則のようです。今回参考にしたのは金融商品に関する会計基準。有価証券の分類のところで参考にしました。

三問目 間接法

「大型トラックの減価償却を生産高比例法にて行う。記帳は間接法によること。ーー」

 減価償却の問題なので、今期の減価償却分を求めればいけそうです。

 が、そう簡単にいかないのが、「間接法」という部分。間接法とは???

直接法

 私が最初に書いたのは以下のような仕訳です(減価償却費は60万円でした)。

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)車両 600,000円

 60万円減価償却をして(費用)、それに相当する分が資産(今回は車両)から引かれるのだから、こうだろうと思ったわけです。

 しかし、このやり方は直接法というそうです。

間接法

 問題には「記帳は間接法による」と書いているので、この書き方では不正解のようです。

 間接法は、資産から減価償却分をマイナスするのではなく、貸方に減価償却累計額をプラスしていくという記法のようです。

 残存価額は資産額から減価償却累計額を引くことで初めて求めることができるから間接法というのでしょう。

 なので、今回の問題の答えは

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)減価償却累計額 600,000円

 だったのでした。

実例

 実例を見てみます。

 まず、鉄道関係を見てみます。JR東海の令和2年3月31日決算の有価証券報告書から。

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直接法

 資産の純額しか書いていないので、これは直接法と言えそうです。JR東日本京浜急行電鉄ANA電通なども見てみましたが、同じような書き方になっていました。

 もちろん、これはあくまで公開する貸借対照表においてどう見せているかの問題であって、内部的にこれらの会社が直接法を用いているとは限らないと思います。

 

 次に、三菱地所の令和3年3月31日決算期の第三四半期報告書を見てみます。

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間接法

 ここには減価償却累計額が記載してあります。これは間違いなく間接法です!

 注意点は、貸借対照表上では借方(左側)に書いてあるという点ですね。減価償却累計額はあくまでも資産からマイナスするものなので、仕訳の段階では貸方(右側)に書かなければなりません。(とはいっても、減価償却累計額は負債なわけではなく、あくまでマイナスの資産ということのようです。)

 ちなみに、三井不動産も間接法により記載していました。

結論

  • 減価償却した分を資産から直接差し引くのが直接法。
  • マイナス分を減価償却累計額という別の項目に書くのが間接法。

 それはよいとして、なぜ三菱地所三井不動産の二社は間接法なのでしょうか? 直接法と間接法の違いは取得原価が分かるかどうかです。不動産会社は不動産という資産を運用していることを考えると、取得原価に対して何%の利回りで運用できているかが大事。だから間接法で記載する……ということでしょうか?

 三菱地所の賃貸事業による収益は約3880億円らしいので、これに4/3をかけた結果を5兆759億円(=2兆8400億+2兆2359億)で割ると、だいたい年利10%の利回りで不動産を運用している……ということになるのでしょうか? もしそうだとすれば建設仮勘定から未来の利益もある程度割り出すことができる??

 ググってみましたが確証は得られませんでした。ですが、色々と仮設を立てて考えてみるのも面白いかもしれません。

二問目 長期前払費用とは

「今後3年分の広告費を払って資産に計上した」

 二問目はこんな問題でした。

 払った広告費が資産???

 「ちょっと何言ってるかわかんない」状態です。

 解答を見ると、長期前払費用という資産になるようです。

 前払費用が資産??????

 納得できないので、色々と考え方を考えてみました。

※一年以上先の分を前払いしたら長期前払費用、そうでない場合、前払費用となるそうです。

契約を解除すればお金が戻ってくる余地がある

 まず、前払費用はお金だけ払ってまだサービスが提供されていない状態です。

 ということは、契約を解除してしまえば、基本的には、このお金は戻ってくるはずです。

 これを「お金を得る権利」と考えれば、たしかに資産と言えそうです。

 でも、そんな例外的なことに着目して資産とするのは何か違和感があります。

サービスを受ける権利

 あるいは、お金ではなくサービス自体にフォーカスしてもいいかもしれません。

 これからサービスを受ける権利はやはり資産と言えそうです。

 でも、サービスを受ける権利なんていう曖昧なものを資産として計上するのは何か違和感があるような気が……。

固定資産と同じ

 たとえば建物を建てた時や車を購入した時、その費用は支払った時にまるっと計上されるわけではありません。何年かに分けて少しずつ経費に計上していきます。減価償却です。

 新しく鉄道会社を立ち上げた時、初期に莫大な費用がかかります。もし、減価償却という仕組みがなかったとすると、最初の数年は莫大な赤字になり、それ以降は莫大な黒字になることが予想されます。これでは経営状態を正しく把握することが難しくなります。たとえば、「最初の一年目は鉄道を敷くのに100億円費やしたので90億円の赤字。それ以降は毎年10億円の黒字」という会社があったとして、最初の赤字とそれ以降の黒字をどう評価すればよいでしょうか? 直近の5年だけ見れば、毎年10億円稼ぐ素晴らしい会社だ!と思ってしまいますが、最初に敷いた鉄道が10年しか使えない代物だとしたら、本当はこの会社は利益を生み出せない会社だということになります。これは誤った投資判断の温床になりそうです。

 このようなことが起こるのは売上と費用が別々の会計期間に計上されてしまうからですね。そこで、10年使えるものは10年かけて少しずつ費用に計上しよう、という知恵が減価償却です。

 さて、長期前払費用も同じようなものだと言えるのではないでしょうか。車や建物との違いは、得られるものが形あるものなのか否かという点だけです。10年もつ鉄道を敷くのに100億円払うか、10年間の広告を打つのに100億円払うか、だけの違いです。

 じゃあ長期前払費用も固定資産として考えちゃえばいーじゃん!というのは納得がいきます。実際、長期前払費用は「投資その他の資産」という固定資産として扱われるようです。

結論

 というわけで、長期前払費用は建物などの実体のある固定資産と同じだと考えると分かりやすい。と私は思いました。

 もしかすると、会社が使うお金は全て利益を生み出すための投資というのが簿記の考え方なのかもしれません。そして、それを費用として計上するのはいつが適切なのか?に基づいて、費用か流動資産か固定資産に振り分けているだけなのかも……?